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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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フウガと悪魔

黒い糸の中を突っ切ってフウガの元へと向かう。

糸に意識を向けると、左右に分かれて通り道を作ることができた。一本一本を操ることはできないけど、ある程度の塊としてなら難なく動かすことができるみたいだね。


目くらましをしつつ相手を拘束し、俺の邪魔はしない。この魔法の本来の使い方ではないけど、かなり役立ってくれている。

それでも、上位悪魔を拘束するのは無理がある。スクイ以外は操られているから意表を突くこともできないし、数秒間動きを阻害できればいい方だ。


フウガが前方で、後方にはスクイと魔獣が2体。

魔獣はゴリラも犀も魔法を分解する能力がある。だからフウガは躊躇いなく攻撃を仕掛けてくるだろう。攻撃が来る前に、俺は急いで魔法名を唱えた。



『"黒鎧顕現"!』



魔法名を唱えると同時に、闇を体の内部へと吸収していく。その際に、闇に干渉して吸収の速度を加速させる。



――王に相応しいのはこの儂だ! 貴様らを殺して、それを証明してやるわ!!――



また視界にモノクロの画像が映し出された。そこに映るのは、マントを羽織り、白い髭を蓄えた悪魔だった。

身に着けているマントは所々破れていて、体も傷だらけになっている。片腕がなく、足も折れてあらぬ方向を向いている。

それでも強い殺意を持って目の前の悪魔を睨みつける。


目の前にいる2体の悪魔。1体はこちらを見て冷酷な笑みを浮かべるスーツ姿の男、サトリだった。顔も髪も白くて黒いスーツ着てるからモノクロでも関係ないね。

これがいつの記憶か分からないけど、今と全く変わらない姿で映っている。まぁ、悪魔って年取らなそうだし、見た目が変わることはないのかもしれないけど。


その奥にもう1体の悪魔がいるが、足元しか見えない。

話の内容的に、あれが悪魔の王なのだろうか?


画像だけでも、白髭の悪魔と目の前の2体とは力の差が歴然であることは明らかだ。

それでも、諦めずに魔法を唱え、体に闇を吸収していた。体が黒く染まっても、闇を取り込むのを止めない。


まだ勝てん、まだだ。目の前の化け物どもを倒すには足りん! 周りの闇全てを喰らえ!



『ぐぅ!?』



俺は堪らず呻き声を上げてしまった。

白髭の悪魔に同調していたら闇が勢いよく体に入ってきた。すでに鎧は出来上がっているのに、それでもまだ闇を吸い続け、その密度を上げていく。

闇が深まると共に、雑多な感情が俺の中に入ってくる。

意識を保つことに注力しすぎて、俺はその場で膝をついてしまった。



『"鎌鼬"』



フウガの声が遠くから聞こえた。糸が斬撃で切り裂かれているのが感覚で分かった。俺に向かって真っすぐ飛んできているのは分かっているのに、避けることができない。

俺は衝撃に備え、重たい腕を眼前に翳した。



キンッ



斬撃が腕に当たる。それを音で理解した。だが、傷は全くない。

高質化した腕は、フウガの斬撃すら防ぐほど強化されているみたいだ。


俺は薄れそうになる意識を保ちつつも、体から力を抜いた。

その瞬間、体の主導権が闇に奪われた。



バンッ!



両足で思い切り踏み込み、俺の体がフウガに向かって一直線に飛んでいく。

歩くことができなかったのが嘘みたいに、軽やかに宙を飛ぶ。


黒い糸の塊を突っ切って外に出る。そこにはフウガが腕を上げた状態でこちらを見据えていた。



『"断斬"』



見覚えのある動作と思ったら、やっぱり断斬だった。あの魔法、誰でも使えるもんなのか?

ミツメは十本の爪を重ね合わせた状態から魔法を放っていたけど、フウガはただ手を合わせた状態で振り下ろした。


ミツメの動作を真似て俺も断斬を出すときは爪を出していたけど、必要なかったみたいだ。

それにしても、フウガの出した魔法は、やはり洗練された技巧を感じる。

ミツメのように攻撃的な粗々しさはなく、鎌鼬と同様に鋭い斬撃が空間を切り裂いていく。

今の鎧があっても、直撃すれば真っ二つになるだろうと思ってしまう。


斬撃の速度が速く、一瞬で眼前まで迫っていた。

俺が驚いて身構えようと思った直後、横向きに体が吹き飛ばされた。

いや、正確には、俺の体が空中で横向きに飛んだんだ。


足から魔力を出し、それを足場にして横跳びしたのだと、後になって理解した。

"空歩"という魔法を、闇が発動させたようだ。



ようやく、鎧の能力が分かった。

これは防御力を上げるための魔法ではない。自分の体に闇を纏い、闇の力を借り受ける魔法だ。


元々闇で体を構成している俺でも、闇を取り込みすぎると意思の乱流で意識を保つのがやっとだ。

いくら悪魔であろうとも、意識を手放さずにはいられないだろう。

驚異的な力を宿す代わりに、自我を失う。それは狂戦士化に近いのかもしれない。


白髭の悪魔の末路が気になりつつも、体の動きに意識を戻して敵を見据える。

俺の動きを見てもフウガは眉一つ動かさない。ただ命令通りに動いている人形だ。


また腕を上げ、フウガは攻撃の体勢をとる。だが、その前に俺は魔法を発動させた。



『"黒牢"!』



――ハハハ! ねぇ。苦しい? 怖い? ねぇ、今、どんな気持ちぃ? ねぇ、ねぇってば! キャハハハハハ!!――



再び画像が映し出されると、目の前には黒牢があり、その中に女性が捉えられていた。女性は苦しみ悶える様子で地面に這い蹲っている。

女性が苦しんでいる姿を、口が裂けそうなほどニヤけている女性が甲高い笑い声を上げながら見つめていた。


牢の隣には男性が寝ころんでいた。その胸に深く突き刺さるナイフが、男性の死を物語っている。


声だけでかなり不快な気分だ。甲高い笑い声に殺意を芽生えさせつつも、なんとか堪えて同調を続け、魔法を完成させた。


フウガの周りを闇が瞬く間に覆い、牢を形成した。

牢は真っ黒に染まり、その中にいるものを闇で染め上げる。

この魔法、相手を捕らえて闇を強制的に取り込ませ、雑多な意思を流し込むことで精神を狂わせるという、なんともエグい魔法だった。


……これ、悪魔にも聞くのかな? 闇を流し込んで強化されたりしないよね?


不安がよぎるが、フウガが魔法を放とうとする気配を感じない。どうやら悪魔にも効いているみたいだね。

問題はいつまでフウガを閉じ込められるかだ。


厄介なフウガを抑えて残り5体。なるべく早く、全員を捕縛してスクイを倒す!



俺は意気込んで後ろを向いた。俺が出した大量の糸は、フウガの攻撃で半分以上刈り取られており、糸を挟んだ奥にいるスクイが見えた。スクイの周りにはいくつもの光が灯っている。



『……な!?』



それが魔法陣であることに気付いた時、俺は驚愕の声を漏らした。壁や床、天井にまで魔法陣が描かれており、ここから見える範囲だけでも軽く十は超えている。

そして次の瞬間、聞きたくない魔法名が聞こえてきた。



『"多重召喚"!!』



魔法陣から、悪魔と魔獣の大群が現れた。



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