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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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スクイの思いと悪魔の決意

『呪縛からの開放、それが俺が与える救済だ』

『……それは、生前の時の話か?』

『いいや。人間でも悪魔でも、それは変わらない』



それを聞いて余計に分からなくなった。

生前の時だけで言えば、奴隷を殺したことによって呪縛から解放したかったのだと分かる。

だが、悪魔になってからは奴隷紋で悪魔を束縛している。それも、魂ごと。


人間の時と悪魔の時で、スクイの行動は真逆になっている。

それなのに、心情は変わらない。それが理解できない。


その疑問を察したのか、スクイが俺に問いかけた。



『人間は殺し、悪魔は奴隷に落とす。同じ方法では救えないからな。それは何故か、分かるか?』



それを聞いても、答えは出なかった。

奴隷紋という呪縛から解放させるために人間の奴隷は殺した。

でも、悪魔は殺さずに奴隷にするのは何でだ? 悪魔は殺しても蘇る。でも、それは永遠ではなく、最終的に魂は消滅するらしい。

手間ではあるけど、魂が消滅するまで殺し続ければ、人間と同じ方法でスクイの救済は成り立つはずだ。


解答である自身はないが、一番あり得そうなことを口にした。



『悪魔は何度も殺さないといけないから?』

『まぁ、確かに手間ではあるな。だが、殺し続けるだけで救えるなら、実践している』



そう呟いたスクイの目は、やはり揺らいでいるように見える。



『御子よ、お前は自分の体を闇で構成しているのだろう? ならば、闇とは何か、理解しているか?』



スクイの問いは、以前から疑問に思っていたことだ。

自分の体が闇で構成されているのに、その闇が一体何なのか、分かっていない。

いや、薄っすらとは分かり始めている。今までのことを考えれば、それが明確になっていく。


サトリに俺の体は闇で構成されていると言われた。それは、俺が闇に体を作るよう命令したからだと言っていた。

その後の戦闘で、何度か闇の意思を感じとった。念話のように会話をするわけではないが、向こうから意思が伝わってくる感覚はあった。それのおかげで知らない魔法を使うことができたわけだし。


闇には意思がある。それは、闇はただの物質ではないということ。

つまり……



『闇は、生きている……?』

『……知らずに闇を使っていたのか? 愚鈍だな』



だから、なんでアイツは一々人を逆撫でることを言うんだ?

挑発が目的か? だとしたら完全に引っかかっているけども。



『まぁいい。教えてやろう。闇とは、魂の残滓だ』

『魂……』



魂と聞いて思い浮かべたのは、第一下層での光景。

魔法陣から人間が出現した後、人間は死んで人玉となった。あの時見た人玉が、人間の魂なのだろう。

それが集まったものが、闇。


そこでふと、白色の人玉を思い出した。あれは、地獄に留まることなく天井へと抜けていった。魂のすべてが闇になるわけではないのか?



『すべての魂が、闇になるのか?』

『いいや。闇になるのは輪廻の輪から外れた魂と、転生の為に魂から剥がれ落ちた不純物だ』



輪廻転生、ね。まぁ、悪魔がいるくらいだし、本当にあるんだろうね。



『死んだ魂は輪廻の輪に引き寄せられ、魂に張り付いた穢れを浄化したのちに転生を果たす。浄化で剥がれた穢れは、輪廻の外へと放出される。輪廻の輪は清らかな魂が転生できるよう、穢れを輪から押し出すのだ。そのため、穢れの多い魂は輪廻の輪に戻ることすら叶わず、そのまま闇と化す』



スクイの説明を聞いた感じ、闇とは生物の悪感情を具現化したものなのか。

だけど、今の話には少し違和感を感じた。



『今の話だと、輪廻の輪? ってのがないと、魂はすべて闇になるのか?』

『あぁ、それくらいは察せるか。そうだ、輪廻の輪がなければ、魂はそのまま闇になる。善人も悪人も、関係なくな』



輪廻転生がなければ、魂は流転せずに闇への一方通行か。

そうなると、転生できても悪魔としてだけだから、世界は悪魔で溢れ返りそうだね。



『闇と化した魂は、霧散して粒子となる。これは悪魔の粒子と呼ばれるものだ。それ自体に自我はないが、精神生命体の側面を持つようになる。それゆえ、同じ精神生命体の悪魔には触れることができるのだ。そして、悪魔の粒子は強い意思を持つ粒子に引かれる性質がある。より強い意思に粒子が集まり、やがてソーラムとなる。これが、悪魔が誕生する仕組みだ』

『……闇が何かっていうのは分かった。それで? 何で悪魔に奴隷紋を刻む結論になったんだ?』

『悪魔にとって、呪縛とは何だ?』



質問に質問を重ねるなよ、という突っ込みは心の奥に押し込み、少し考えて口にした。



『闇か?』

『そうだ。魂は闇になった時点で輪廻の輪から外れる。悪魔に転生できようが、更なる絶望に打ちひしがれ、やがて意思の強い悪魔も消滅し、残滓となる。それでも、地獄にいる限り、闇は消えない。永遠に、救われない。そんな絶望から逃れる方法として、俺の魔法で自我も感情も消し去っているのだ』

『……つまり、奴隷にするためではなく、魂を保護するために魔法を使っているのか?』



それを聞いて、周りの悪魔を見渡す。感情のない目。それが、スクイの言っていることが真実であると物語っている。



『それだけではない。俺は魂に干渉する魔法に適性がある。それをさらに向上されることで、輪廻転生に干渉し、悪魔の魂も輪廻の輪に帰すことを目的としている。闇を私利私欲のために使っている時点で悪魔の王など認める気はないが、もし俺の考えに同調し、闇を使うことをやめるのであれば、王として認めてやってもいい』



すごい上から目線で告げられた。俺が王になろうがどうでもいいって感じだね。

というか体が闇でできてるから、使うことを止めたら俺は何もできないんだけど。


まぁ、そこら辺の不満はどうでもいい。


とりあえず、スクイの話を聞いて決めたことがある。

和解なんてできるわけがない。マコやチコと同意見になるのはもの凄く嫌だが、スクイの考えには真っ向から対立する。



『お前は、生前もそうだけど、自分が正しいと信じて疑わない。それがどれだけ偏っているとしても。だからこそ、悪魔になっちまったんだろうね』



俺の言葉を聞いて、スクイの眉がぴくっと動く。



『奴隷で残り短い命でも、悪魔になってしまっても、生きたいと思う奴はいる。お前はそれを分かっていて行動しているから、余計性質が悪い。お前の言う救いは、他の奴にとっては救いでも何でもない。ただの搾取だ』

『……口を閉じろ』

『お前の自己満足で勝手に他の奴の人生を決めるな。どんなに辛かろうと、生きるか死ぬかはソイツが決めることだ。お前が決めていいことじゃない』

『黙れと言っている』

『お前は、自分が救われたいだけだ。自分の信じる善行をして、輪廻の輪に戻りたいだけだ。惨めだな? 奴隷を解放したのに、悪魔に落とされて』

『黙れ!!』



スクイが俺を睨みつけて臨戦態勢をとる。他の奴隷共も魔力を練っているのがわかる。


時間稼ぎは終わりだ。あんまり考えている余裕はなかったけど、話をしているうちに試してみたいことができた。

それで駄目なら、俺の悪魔生はここで幕引きってことだね。


自然と笑っていた。一応中身は人間なんだけど、思考が大分悪魔寄りになっている気がする。

でも、笑ってしまうのは仕方がないことだろう。だって、アイツが救おうとしている奴は、悪魔なんだから。

俺は今までに出会ったキャラの濃過ぎる悪魔達を思い出し、さらに笑みを浮かべた。



『スクイ、一つ忠告しといてやる。お前が救おうとしている悪魔達はな、生き返らせるほど上等なモンじゃない。悪魔になってもなお、願望駄々洩れな異常者しかいないんだからな』





御子:『スクイ、一つ忠告しといてやる。お前が救おうとしている悪魔達はな、生き返らせるほど上等なモンじゃない。悪魔になってもなお、願望駄々洩れな異常者しかいないんだからな』

マコト:『あれ? 今、思い切りブーメランな発言が聞こえたっす!』

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