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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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トラウマだらけの悪魔


マコトが向かった先を急いで追いかけたが、姿はどこにもなかった。


暗闇のせいで道の先がはっきりと見えないが、少し曲がっているように見える。

マコトの能力が瞬間移動で合っているなら、さすがに追いつけないかな。どんだけ全力で逃げてんの?

まぁ、気持ちはすごく分かる。マコトに追いつくのは置いておいて、まずは変態どもを振り切ろう。


俺は翼を広げて低空飛行を始めた。



バシュン!



空を弾く音が翼を動かす度に発生する。魔力を翼に巡らせることで飛行速度も増し、魔力量に比例して加速していく。

戦闘中に無意識に使っていたからか、それほど意識せずに魔力を動かせるようになっているね。

走るよりも明らかに早いけど、まだマコが魔法使った時の速度には及ばないかな。


相変わらず代り映えのしない景色が続いているから分かりにくいが、道は徐々に細くなっている。

横道が一つも見当たらなかったから迷いようがないけど、どれだけ遠くまで続いているんだろうか。


そういえば、戦闘では使っていなかったけど、チコも速度上昇の魔法を使えるのかな?

猛スピードで迫ってくる2体の変態を想像してしまい、怖気が走った。想像でこれだよ? 実際にその状況を見たら失神しそうだ。


後ろから迫ってくるであろう変態に怯えながら道を進んでいくと、目の前に壁が現れた。長かった洞窟もここまでかと思ったが、違和感を感じ、手前で急ブレーキをかける。


目に魔力を集中させて、より鮮明に壁を視認する。すると、黒い壁が蠢いていた。



『うをぉお!?』



トラウマが刺激されて思わず叫んでしまった。これは、第2下層に落下した時に出会った化け物と同じものだ。アメーバ状の魔獣であるソーラムの集合体で、名称はソウラグランだったか。……できれば2度と会いたくなかった。

ソウラグランが道を塞いでいる。変態と戦っていた場所より道幅は狭くなっているけど、まだ20メートル以上はある。奥行は分からないけど、第2下層のソウラグランは体育館を埋め尽くすほどのサイズだったから、さすがにあれよりも大きくはない、と信じたい。


もしかしなくても、これと戦わないと先に進めない? ……よし、引き戻して別の道を探そう。

現実から目を逸らして後ろを振り向くと、もう一つのトラウマが迫ってきていた。


洞窟の先に赤と青の点が見える。見たくはないが、俺は目を凝らして確認する。

……マコがチコをお姫様抱っこした状態で、猛スピードで走っていた。



『ちょっと~、置いていくなんて酷いじゃない~』

『ああん、走るなら言ってよ! 私たちは御子ちゃんの隣を走りたいんだからん』



どうしよう、前も後ろも進めない。それどころか、後ろからトラウマがどんどん迫ってきている。

……久しぶりに実感したよ。ここが地獄だって。


精神的ダメージが回復する前に、2体の変態に追いつかれた。



『全く、御子ちゃんもマコトちゃんも先に行っちゃうんだから。どうせ一緒に最下層に行かないといけないんだから、一緒に進みましょうよ』

『男なら~、ちゃんとエスコートしてよ~』



どうしよう、多少慣れはしたけど、変態を直視したくはない。かといって、後ろはよりトラウマの強い化け物の壁。俺は何も見ないよう俯くことにした。



『あら~、ちゃんと頭を下げて謝れる男って~、いいわね~』

『ああん、さすが御子ちゃん。誠意のある男、好きよ?』

『ぐふ!?』



何で顔を見ていないのにマコがウインクしたのが分かったのだろう。そしてそれでダメージを受けるのは何故だろう。

……駄目だ、このままではどのみち変態2体に精神を殺される。諦めて、現実を見よう。


俺は振り返り、ソウラグランを見上げた。確かに戦いたくはないが、前回の戦闘で倒し方は分かっている。

ソーラムの弱点は目玉であり、ソーラムの集合体であるソウラグランの弱点も目玉だ。目玉が複数あるから面倒だけど、倒すのはそう難しくない。

しかも、第2階層では囲われていたからパニックを起こしてしまったが、目の前に佇んでいるだけなら、それほど怖くもない。

攻撃を仕掛けようかと考えた時、マコの呟きが聞こえてきた。



『……これは、どうやらアイツのお出ましね』

『え?』



思わず聞き返してしまったが、マコが説明してくれた。



『そういえば、御子ちゃんはどうやって悪魔が復活するか知ってる?』

『……闇が密集して復活するとかじゃないの?』

『いいえ。そもそも、闇で体を構成するなんて御子ちゃんしかできないわよ』

『じゃあ、どうやって復活するの?』

『悪魔の復活は誕生と同じよ。肉体が滅んで魂の状態になれば、ソーラムとなって生き返る。失った肉体を取り戻すために周りのソーラムを吸収し、ソウラグランとなるのよ。誕生と違うのは、核が融合するときね。確固たる意志を持つ魂がない場合、複数の核が融合し合い、一つの人格が形成されるの。それがうまくいけば悪魔となり、失敗すれば魔獣と化す。でも、復活の場合はすでに悪魔の魂が混じっているから、その魂に他の核が吸収されるのよ。まるで魂の綻びを補うようにね』

『……つまり、目の前のソウラグランが、スクイ?』

『ええ、間違いないわね』

『でも~、アイツまだ復活していなかったのね~。戦いはどうなるのかしら~?』



チコの言う通り、これは一体どうしたらいいんだろう? 悪魔の王として認めてもらわなきゃいけないから、ソウラグランを倒しても意味はないだろう。なら、復活するまで待つしかないのかな? どれくらいかかるか分からないし、それまで変態2体の相手をするとか嫌なんだけど。



『さすがに、戴冠式に間に合わないなら候補に入れないでしょうし、もう目覚めていてもいいはずよ? それに、もう核はすべて吸収し終わっているみたいね』



マコの言う通り、ソウラグランの体に核らしきものは一つも見当たらない。だからこそ壁だと間違えたわけだけどね。

3体ともソウラグランを見上げていると、念話が空間に響いた。



『そこにいるのはマコとチコか』

『やっぱり目覚めていたみたいね、クソ野郎』

『あなたには~、名前呼ばれたくないわ~』



響いた念話にマコとチコがいち早く反応する。その声には怒気どころか殺気すら感じる。出会って早々に殺気を向けられるって、スクイは何をやらかしたんだ?



『ならば、もう1体が王候補の御子か。魔力量は多いようだが、果たして王に相応しいかどうか』

『それは戦って確認すればいいでしょ。とっとと戦いを始めなさいよ』

『悪いが、少し待っていろ。今食事中だ』



え、悪魔って食事するの? 俺、悪魔に転生してから一度も食事していないし、お腹も空かないから必要ないと思っていたんだけど。

そんなことを考えていたのは俺だけで、マコとチコはすでに攻撃態勢に入っていた。



『口答えしてんじゃないわよ。とっとと始めなさい!』



そう叫ぶと、マコの炎弾とチコの氷弾がソウラグランの壁を貫いた。 ……マコト、早くしないと変態がスクイを殺しちゃうよ?



『やれやれ、食事は静かに取るものだ。終わるまで見られぬようわざわざ幕を作ったというのに、力尽くで破るとは。やはり悪魔は下賤だな』



ソウラグランの壁は予想よりも薄く、10センチ程度しかなかった。スクイの言う通り、壁ではなく幕として用意していたのだろう。

幕に使っていたソウラグランの一部は役目を終えたためか、地面へと落ちていき、道の奥へと進んでいく。その先には悪魔が1体佇んでいた。着ているのは、作務衣かな? 黒色でゆったりとした服装だね。髪は黒色の長髪だが、パサパサしていて艶はない。無精髭も生えていて、昔テレビで見た陶芸の職人みたいだ。


スクイの足元に殺到したソウラグランの一部はそのままスクイに吸収されて消えた。残っているのはスクイと、その足元に転がる5体の悪魔。

5体とも見た目は子供だね。まぁ精神年齢は子供の範疇超えているんだろうけど。



『御子よ、悪いが少し待ってくれるか? 食事の途中なんだ』

『……食事って、その悪魔を食べるのか?』



俺は拳を握りしめていた。子供が関わっていると、感情がブレ易い。頭の中では見た目が子供なだけで他の悪魔と変わらないって分かっているんだけどね。これも、闇の影響なのか?



『ああ、そうだ。用意していたソーラムでは物足りなかったのでな。だから、こいつらを吸収する』



そう言いながらスクイは子供に手を伸ばした。



バシュ!



スクイの手を狙って針を射出した。スクイは手を引いて針を躱し、こちらを睨みつけてきた。だが、負けじとこちらも睨み返す。

たとえ悪魔だろうと、中身がおっさんだったとしても、子供が殺されるのを黙って見ていることはできない。それは、俺の中の闇が許してくれない。



『悠長に食事なんてしてんじゃねぇ、とっとと戦いを始めるぞ!』




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