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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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悪魔の感情が導く先は

肥大した腕を、マコに向けて振り下ろした。

マコは素早く横に移動して直撃を免れたが、地面を叩いたときの衝撃で横に吹き飛んで壁にぶつかった。



『ちょっ!? 御子ちゃんどんだけ闇を取り込んだのよ!?』



マコの叫び声を無視して、俺は再び腕を振り上げた。



『"氷壁"』



振り下ろした腕が氷の壁に衝突した。壁には大きな罅が入ったが、砕くことはできなかった。


俺は何度も腕を振り下ろす。

罅がどんどん大きくなり、氷が砕けていく。



『"炎弾"!』



砕けた氷壁の隙間から炎の玉が勢いよく飛んできた。先ほどの体の大きさであれば全身を覆うほどの大玉だと感じていたが、今ではドッジボールくらいの大きさだ。

俺は炎弾を殴りつけた。衝突の瞬間、拳が爆散した。衝撃が肩まで伝わる。

だが、痛みを感じないことをいいことに、拳のない腕を氷壁に向けて振り下ろした。



『ちょっと、もう自我なくなっているんじゃない?』

『なら~、もう殺しちゃってもいい~?』



2体の会話が聞こえてきた。殺すという言葉に体が反応し、さらに膨れ上がった。内から膨れ上がる闇により体が膨張し、外から取り入れる闇により体を修復する。


ひざ下くらいの大きさになった2体の悪魔に向けて、俺は上から思い切り殴りつけた。



バガン!!



ようやく氷壁を打ち砕いた。



『まだ殺しちゃダメなの? 全く、マコトちゃんは甘いわねぇ』

『じゃあ~、とりあえず暴走した御子ちゃんにお仕置きしましょ~』



2体の悪魔は会話を続けていたが、氷壁を砕かれたのを見て意識をこちらに向けた。

チコの手がこちらに向けられた。



『じゃあ~、本気出すわよ~? "氷衝角"!』



チコの手前に魔法陣が展開された。その直径は今の俺と同じくらいある。その魔法陣の中央から、極太の氷柱が発射された。



グシャン!!



先の尖った氷柱が俺の腹部を貫いた。衝撃で俺は後ろに倒れこんだ。

氷柱は俺の腹部を貫通した状態で止まり、俺の腹部と地面を凍らせて俺を拘束した。



『がぁああああぁあ!』

『叫んでも無駄よ~、その氷柱は敵を貫き、相手を凍死させるのよ~』

『があ!!』



ガキン!



俺は腹に刺さった氷柱をぶん殴った。だが、罅が入るどころか、殴った拳が氷柱にくっついたまま離れなくなった。

少し考えれば、闇の体を生かして氷から逃れることもできただろうが、今の俺にはそんなこと考えている余裕がなかった。



悪魔の声を聴く度、攻撃を受ける度に、体の内から声が響く。

その声の感情は雑多で、恐怖や殺意以外にも、羨望や嫉妬、憤怒、尊敬、希望、絶望が入り乱れていた。

そう、なぜかこんな状況でも、悪感情以外の感情が溢れていた。


恐怖や絶望は分かる。明らかに格上な相手から攻撃を受け、殺すとまで言われているのだから。

殺意や憤怒も分かる。相手に理不尽な殺意を向けられたんだ。こちらが同様の思いを抱くのは当たり前だ。

羨望や嫉妬、何これ? あの悪魔に対して? その強さに惹かれているのか?

尊敬と希望? いや、無いよ? 尊敬って何? あの変態に尊敬する要素なんてないでしょ。希望? 絶望に染まっているんだけど?


雑多な感情に侵されて今はただ暴れることしかできない。だが、相手があの2体では、今の行動は愚策どころか、子供の癇癪にしか見えないだろう。



『じゃあ、次は私の番ね。"炎牢"』



マコが魔法名を告げた瞬間、俺の足元から炎が噴き出した。そのまま俺を包みこみ、俺の周りを炎が包みこむ。

氷柱は少し溶け始めていたが、炎のせいでより動きにくくなった。俺は腕を振るい、針を射出した。炎の壁は易々と貫けるが、壁はすぐに塞がり、俺の体を燃やす。

燃えた箇所からまた声が聞こえる。 ……燃えた箇所、から?


俺はそのまま、声に意識を向けた。

声は、確かに炎で燃えていた腕から聞こえた。その腕は闇でできている。なら、この声は闇の声?

闇から声が聞こえるとはどういうことか?


闇は俺の指示を聞き答えてくれる。それはつまり、闇には意思があるということか?

それとも、俺の意識が混濁していて幻聴が聞こえているだけか?



分からない。俺の意思は、本当に俺のものなのだろうか。

振り返れば、おかしいと思うことは何度もあった。ミツメを見て保護欲を抱いたり、スライムを抱いてデレデレしたり、ムカデに対して殺意を滾らせたり。俺は、そんな人間だったのだろうか。


自分が分からない。自分の感情も意思も分からない。



今、俺の中にある感情は、俺のものではないのかもしれない。雑多な感情だが、それでも全く無秩序ではない。

その感情はあの2体に向かっている。感情が善と悪で別方向だけど。


なら、他の感情は一旦無視だ。全部をあの2体に向けてやる。



『誰だか知らないけど、お前らの感情をあいつらにぶつけてやる! だから、俺と一緒に戦え!』



ボゥン!



体を構成していた闇が弾けた。その勢いで炎牢も吹きとんだ。

それと同時に、俺の体は一気に元のサイズに戻る。



『ちょっと!? なんで逃げられたの!?』



マコが驚いている。その声で内なる感情が喜んでいる。これは、尊敬していた奴の感情かな?

憤怒の感情を抱いていた奴も、少し柔らかくなったな。一矢報いてほくそ笑んでいる感じか。


何だろう、不安で、怖くて、絶望を抱いていたのが嘘のようだ。

一人ぼっちだと思っていたからだろうか。誰だかわからない不安よりも、誰かが一緒という安心感の方が強くなった。



『さぁ、お前ら、やるぞ』


外に放出された闇が渦巻き、俺の周りに取り巻く。



『俺らの本気、あいつらに見せてやれ!!』



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