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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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仄かに光る悪魔

針を何十回も射出したのに、マコトには一回も当たらない。

移動先を予測してみたが、それすら読まれているのか、一度も予測通りの動きをしなかった。


……やっぱり今のままじゃマコトには勝てないみたいだね。

しょうがない、気が済むどころか余計にストレスが溜まってしまったが、攻撃は諦めて話を聞こう。

俺は腕を下ろして話を聞く体勢をとった。



『いつまでも黙っていないで、話を続けてよ』

『話を中断したの誰のせいだと思っているんすか!?』

『私だ』

『……自覚があるだけまだ救いようがあるっすね』



マコトが溜息を吐きつつ、話を再開した。



『どこまで話しましたっけ。あぁ。魔力の使い方の説明っすね。とりあえず御子さんには基礎を身に付けてもらうっす。ちなみに、念話以外で魔力を使ったことってあるんすか?』

『魔鉱石を照明替わりにしたり、ミツメの攻撃を真似て魔法を出したりする時に使ったよ』

『……は? 魔鉱石を照明替わりにってどういうことっすか? それに、ミツメ君の攻撃っていうのは?』

『照明替わりっていうのは、こういうこと』



俺はそう言って足元から魔鉱石に魔力を流し込んだ。

魔力から生み出した光が足元から広がり、洞窟全体を照らした。

その光景を見て、マコトは呆然とした表情で俺を見つめた。



『ん? どうした?』

『あぁ、いえ、御子さんの規格外っぶりに驚いたんすよ』



マコトが言うには、魔鉱石は魔力を反発する性質があり、反発力は魔鉱石の大きさに比例する。階層全体に広がる魔鉱石の壁に魔力を流すのは、上位悪魔でもできる者はほとんどいないそうだ。



『魔力を流すのが壁の一部だとしても、かなりの魔力が必要になるんすけどね。というか、なんでわざわざ魔力を魔鉱石に流すんすか?』

『ここが暗いから』

『……ええと、悪魔は目に魔力を込めれば暗視できるんすけど、御子さんはできないんすか?』

『え? マジ?』



暗視なんてできるの? 俺は目に魔力を込めてみた。

すると、確かに視界がクリアになった。洞窟を光らせたばかりで手前は暗視がなくても見えていたが、光の届いていない洞窟の奥も鮮明に見える。



『おぉ、マジだ。洞窟の奥もはっきり見える。悪魔の体、マジで便利だね』

『魔力量も異常っすけど、順応性も異常っすね。今まで使ったことないのに、すぐに魔力を使って暗視できるようになるなんて。本当、魔力も体も規格外っす。闇の御子として申し分ないっすね。後は魔力操作を向上させて戦闘力を上げて、思考回路のバグを取り除けば、他の悪魔からも認められる王になれるはずっす』

『……思考回路のバグって?』

『異常な行動と情緒不安定のことっす。穴好き思春期で老婆虐待趣味、そしてスライム依存症。出会ってすぐに御子さんの異常性は感じ取ったっす。悪魔の枠組みでも飛びぬけての変態っすね』



またマコトが煽ってくるけど、話が進まないし、スルーしよう。

俺は手から鋭い爪を生やして両腕を上に持ち上げる。そして魔力を爪に溜め、そのまま腕を振り下ろした。



『"断斬"!』

『ぬわぉ!』



巨大な白い斬撃がマコトに向かって飛んでいく。やっぱり直撃はしなかったけど、風圧でマコトが横に吹きとんだ。

おぉ、今までで一番有効な攻撃だったね。針や斬撃のような点・線の攻撃は当たらないけど、風圧のような面の攻撃なら避けきれないみたいだ。

面での攻撃か……、マコトとの再戦までに考えておこう。



『あ、これがミツメの使ってた魔法ね』

『いや、魔法出す前に言ってくださいっす! っていうか何でこっちに飛ばすんすか!?』

『魔法を出すなら敵に向けるに決まっているでしょうが』

『停戦中の相手に向けるもんじゃないっすよね!?』



全く、マコトのせいで話が進まない。せっかくこっちが話を聞く姿勢をとっているのに。

マコトはまだ何か言いたそうな顔をしていたが、諦めたのかまた溜息を吐いていた。



『はぁ、茶番はもういいっす。それと、御子さんの場合、魔力の使い方が悪いんじゃなく、使い方そのものを知らないだけっすね。それなら、使い方を教えるんで実践してみてほしいっす』



まずは魔力を体に循環させるところから始めた。


マコトの話によると、どうやら俺は魔力の循環ができていないそうだ。

魔力は血液と同じように体を巡っている。それは血のない悪魔も同じだが、俺の場合は体が闇でできているため、魔力が全身に巡っていない。



『御子さんは元々の身体能力が、……って御子さんの場合は身体能力というよりも闇の力っすね。ともかく、戦闘力が高いっすから現状でも中位悪魔程度の強さはあるんすけど、まだ上位悪魔には遠く及ばないっす。でも、御子さんのバカみたいな魔力量を身体強化に使えば、上位悪魔を超える強さになるはずっす』



……この体、やっぱりチートだったんだね、現状で中位悪魔と同じ戦闘力って。

しかも魔力量はサトリ以上。扱えるようになれば上位悪魔に勝てるほどの力を発揮できるらしい。


……あれ、そうなると今までの苦労って、いったい何だったんだろう? ……うん。そこはあまり深く考えないようにしよう。



『魔力を目に集中させれば暗視できるように、他の箇所にも魔力を使えば身体能力を向上させることができるっす。御子さんは闇を使って同じようなことをしていたんで、それに魔力を混ぜて使うだけでいいんす』



なるほど、それなら意外と簡単にできそうだね。

俺は血液が巡るイメージで魔力を流してみた。闇の中を魔力が流れていき、体を巡っているのがわかる。


俺は目を閉じ、魔力と闇に意識を集中させた。

俺の中で魔力のイメージは白色だ。魔鉱石を光らせた時の色も魔法で放つ斬撃の色も白色だからね。闇はもちろん黒。

白と黒の絵具を混ぜて灰色になるところを想像して、魔力と闇を丁寧に混ぜ合わせる。

すると、混ぜるほどに体に力が漲ってくるのが分かった。まるで闇を取り込んで強化した時のよう、いや、それ以上に力が高まっているのがわかる。



『……これほどとは』



マコトから感嘆の声が聞こえ、ゆっくりと目を開けた。

自分の体を見ると、色は黒のままだが、薄っすらと光っていた。



『おぉ……』

『素晴らしいっすね。基礎を教える前の準備段階でここまで強化されるとは予想外っす。これは教えがいがあるっすね』



マコトがニコニコしてこっちを見ている。

果実の収穫を待ち遠しく思っているのかね。どっちにしろ、男に見つめられて喜ぶ趣味はない。



『じゃあ次は、あ……』



マコトは言葉を切って、そのまま姿を消した。何かを見て急いで逃げたようにも見えるけど、一体何だったんだろう?

俺はマコトが見ていた方向に視線を向けた。


洞窟の奥は暗闇に包まれているが、今の俺にははっきりと見える。

奥から2体の悪魔がこちらに向かって歩いてきていた。



2体の悪魔は、とても奇抜な恰好をしていた。スーツやマントを着込んだ悪魔もいるくらいだから、悪魔らしくない恰好をしている悪魔は結構いるんだろう。それにしても、目の前の2体は度を越えていると思う。


髪の毛の色は赤と青で違うのだが、服装は同じレオタードだった。

その時点でもおかしい。地獄でレオタード着てる悪魔って何?


いや、レオタードは許そう。きれいなお姉さん系悪魔なら着ててもいい。むしろ着ていてほしい。



でも、あれは無理。許容できん。

だって、2体とも筋骨隆々の男だもの。

それが体をくねらせながら俺に向かってくる。完全に2体の目が俺を捕らえているんだけど。



俺はマコトの言っていたことを思い出した。

個性的で近づきたくない悪魔って、あの2体のことね。


あぁ、同感だ。悪魔の変態が、これほど強烈だとは。……見たくなかった。



俺は2体の悪魔を背に、全力で走りだした。




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