表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
3/141

調査する悪魔

まずは、足元の魔法陣から調べるか。

といっても、内容に関しては調べようがない。文字も文様もわからないからね。

わからないことはもう放置して、少しでも情報を得る為に魔法陣に触れてみる。


やっぱり何の反応もないか。どうやって動いてんだろう?

こういうのって、やっぱり魔力とかがないとダメなのかな? 今の俺の体、魔力の塊みたいなもんじゃないの?


魔法陣を指でなぞってみる。まるで溶かしたように滑らかに刻まれている。

さすが魔法陣。何にもわからん。



次に、上を見上げた。

見れば見るほど、この天井は俺の体と構造が似ているんじゃないかと思えてくる。

黒と白で色は違うけど、靄を押し固めてできているような見た目は同じだ。


天井を触ってみようと真っ黒な手を伸ばしたが、触れることはできなかった。

遠近感がつかめていない為、どれだけ高いのかがわからない。



ジャンプしたら届くかな?



ふとそう思って、ジャンプしようとしたが、まだ体をうまく動かせることができず、ほとんど跳ぶことができなかった。

感覚は少しずつ回復しているが、まだ歩くのにも違和感がある。



やっぱり、何をするにしても、まずはこの体のことを調べないとダメか……


変わり果てた自分の体を直視したくなくて後回しにしていたが、避けては通れない。

諦めて手を見つめる。


真っ黒な手は大きく、鋭い爪が生えている。

試しに壁に爪を立てて横にすっと動かしたら、壁に切り込みが入った。



……こわっ!

この体、どう考えても危ないよな。爪は鋭いし、床に簡単にひびが入るくらい力あるし……

せめて爪はどうにかならないかな? これじゃあ下手に体触れないよ。


そう思いながら爪をいじっていると、押し固められた靄が霧散したように爪が消えた。



……

散々驚いてきたせいで、少しのことでは驚かなくなってきた。

そもそも、靄を押し固めてできた体だと思っていたから、体の一部が霧散しても今更気にしない。気にしたら負けだ。

だが爪を消すことができたなら、体も自分の意のままに操ることができるんじゃないか?



再び真っ黒な手を見つめる。人間の手よりも大分大きい為、もう少し小さくしたい。

小さくなれと念じながら、靄が霧散して手が小さくなるところをイメージする。

すると、イメージした通りにサイズが変わった。


どうやら、体は自分の意のままに操ることができるらしい。

足のサイズと爪も同じように調整したところ、先ほどまでよりも歩きやすくなった。


小さくなった手で、今度は耳を触ってみる。

先が尖っているのはわかっていたが、よく調べてみると思っていたよりも大きいことが分かった。

というか、耳じゃなかった。


指で耳をつまんで横に引っ張ってみると、広がった。

どうやら蝙蝠のような翼が頭の横についていたらしい。


耳がないとか、なんで頭の横に翼? とかの疑問は飲み込む。悪魔の体だ、考えるだけ無駄。気にしたら負けだ。



翼を動かせないかと意識を向けてみるが、動かすことはできない。

唯の飾りならいらないと判断し、翼を耳に作り替えた。悪魔の耳ってことで、尖がり耳にしておく。

耳を作ったから音を聞けるんじゃないかと思い、耳を澄ませてみると、音が聞こえるようになった。

ただ、聞こえてくるのはボーーーっという音だけ。ずっと耳元で聞こえてくるのが不快だったため、音が聞こえないように戻した。


今の顔には鼻も口もなかった。まぁ、今は必要なさそうだからそのままにしておく。

そして、目。触ろうと瞼を閉じて、瞼の上から触れてみる。

まさかの一つ目だった。顔の真ん中に大きな目がついている。視界が広い感じはしてたけど、まったく気づかなかった。



……



静かに目を2つに作り直した。



最後に、頭の上に生えている角。触った感じ、他の部位と違う触感がする。消そうとしても、消すことはできない。

どうなっているのか見てみたいが、ここには鏡がない。

確認できる方法はないかと考えた結果、手に目を生やしてみた。手の平にすっと線が入って開き、赤い瞳が出てきた。


……これが悪魔の目か、赤黒くて血みたいだな。


手の平を自分に向ける。作り立てのせいか最初は視界がぼやけていたが、次第にクリアになっていく。

自分の姿を見て、ゆっくりと3つの目を閉じた。


真っ黒な体に2つの赤い目、そして頭には白い角が2本。

まさに悪魔、もう人間として生きるのは無理だろう。


はぁっとため息をついて、壁にもたれかかる。

やはり、自分の体の変貌を直視するのはかなり辛い。


これから先の人生、不安しかない。まぁ、死んだ時点で人生は終わってるんだけど。

……悪魔になってまで生きる意味なんて、あるのか?



死ぬ前のことは覚えていないし、悪魔じゃあ幸せな未来は想像できない。このまま消えてしまってもいいんじゃないか。



そう思うと同時に、体に固まった靄が解けていくような感覚がした。どうやら、消えるのも思い通りらしい。

このまま消えようと目を閉じたが、心残りがあった。



俺はなぜ死んだんだ?



思い出せないからと諦めていたが、もし思い出せるなら、思い出したい。

事故死なのか病死なのか、はたまた他殺か。


悪魔に転生したってことは、それだけ悪い行いをしていたのかもしれない。それなら、殺されても仕方ない、か。


そういえば、なんで記憶ないのに漫画やアニメの知識は残ってるんだ?

自分のことは全く記憶にないのに。


……自分に関することだけ忘れている? てことは、一時的に記憶喪失になっているとかか?

それだと、思い出せる可能性が、ある?



俺は目を開けた。体から漏れていた靄は逆再生するように体に吸収される。


生きる目的が一つできた。

思い出せるかはわからない。このまま一生記憶が戻らないってこともあるだろう。

けど、少しでも思い出す可能性があるのなら、俺はその可能性に縋りたい。


それに、せっかくファンタジーな世界に来たんだ。悪魔の体でも、少しくらい満喫したっていいだろう。


俺は立ち上がり、心の中で呟いた。



死んだ原因と、生きている意味を、探しに行くか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ