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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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マコトと悪魔

少しの間マコトとの言い争いをしていたが、互いに不毛であることを悟って口を閉ざした。

マコトは一つため息を吐くと、その場に座り込んだ。



『話、進めていいっすか?』



話が逸れたのはお前の愚痴のせいだろうと思ったが、念話は飛ばさない。それこそ不毛なやり取りだし。

俺も座りこんでマコトを見据えた。それを見て了承と捉えたのか、マコトは説明を始めた。


マコトがサトリから任された仕事は、最下層までの案内役だけでなく、説明役も任されているらしい。当初の予定では、マコトが俺を迎えに行き、最下層に着くまでにサトリが歓待の準備をする段取りだったそうだ。

だが、俺が先に行動を起こしていて、すでに第一下層にはいなかった。急いで後を追っていったら第六下層まで一気に落ちていくのを見て、急いでサトリに連絡を入れたらしい。



『連絡しなくても、マコトも穴から落ちて追ってこれば早かったんじゃない?』

『御子さん、自分に死ねって言うんすか?』

『……マコトは飛べないの?』

『魔法を使えば飛べるっすけど、そもそも高いところ怖いんで無理っす』



……ん? なんだ? 今、ピリッとした感覚があった。微小な刺激だったけど、念話を受け取ったときにそう感じた。今まで念話を受けたときには感じなかったんだけどな。不思議に思いつつも、俺は会話を続けた。



『高所恐怖症の悪魔がいるなんて吃驚だね』

『自分としては、御子さんみたいに高所から嬉々として飛び降りる悪魔がいることに吃驚っす』



不思議だ、普通に話しているつもりでもすぐに脱線してしまう。脱線しかけた話の軌道を修正しよう。

俺はマコトの隣に横たわっているムカデを一瞥してから、念話を飛ばした。



『とりあえず先に、そこのババアを殺しちゃ駄目な理由を教えてくれる?』

『殺しの忌避感が一切ないっすね。実に悪魔の御子らしいっす』

『それは、もう、いい』

『……分かったっすから、殺意はしまってください』



……少し殺気が漏れていたらしい。俺は一息吐いて殺気を消した。



『目の前にムカデの婆さんがいると御子さんも気が立っちゃうんすね。じゃあ、一旦消しときます』



そういうと、ムカデの姿が一瞬で消えた。驚いて周りを見回してみるが、ムカデの姿は見当たらない。



『……どこにやった?』

『目の前から消したっす。安心してほしいっす。逃がしたわけじゃないっすから』



マコトの魔法だとは思うが、何をしたのかがわからない。どうやったら目の前の悪魔を一瞬で隠せるんだ?

警戒だけはしておこうと、俺は針を出す準備だけしておく。



『じゃあ説明の続きっすね。そもそも御子さん、戴冠式についての説明ってサトリさんから聞いているっすか?』

『戴冠式? 何それ?』

『新しい悪魔の王を、他の悪魔たちにお披露目する式のことっす』

『……それが初耳だね』



サトリからは歓待の準備をするとしか聞いてなかったけど、それが戴冠式なんてわかるわけないでしょう。

マコトもため息を吐いて、『何も伝えずに放置とか、さすがサトリさんっすね』とかぼやいているし。



『いいっすか? 御子さんはこれから最下層で戴冠式を行い、正式な王として即位するわけっす。ただし、戴冠式を行うには5体の悪魔から推薦を受けることが条件になっているっす。それが満たせない場合、戴冠式で力を証明し、その場にいる悪魔の過半数から賛同を受けなければならないんすよ』

『……条件きつくない?』



悪魔から推薦を受けるなんて、一人もできる気がしない。基本的に人を下に見ている連中が、俺を王として担ぐなんてできないでしょ。それなら、力を証明する方がまだ可能性高いかな。



『厳しいっすけど、条件を達成するしかないんすよ。もし御子さんが条件を達成できなかった場合は、アトネフォシナーで一番強い悪魔との一騎打ちっすよ?』

『……一番強いのって、サトリ?』

『サトリさんも強いっすけど、サトリさんよりも強いお方がいるっす』



……サトリですら勝てそうにないのに、それ以上なんてどうしようもないんだけど。

それを聞くと、確かに条件を満たすことに全力を投じた方がまだ死亡リスク低いだろうね。



『ちなみに、悪魔から推薦を受ける方法なんてあるの?』

『あるっすよ。戦って勝てばいいんす』



……単純明快だね。

あぁ、だからムカデを殺しちゃ駄目なのか。確かに、この話を聞いた後ならば、ムカデを殺すのは戴冠式の後って考えるよね。



『じゃあ、これから最下層に向かうまでに残り4体の悪魔と戦って推薦を受ければいいのか。……いや、残り3体か? ミツメ倒したし』

『いや、ミツメ君との戦闘はカウントされないっす。あの戦闘は予定外だったんで』

『……ん? どういうこと?』

『御子さんと戦う5体の悪魔はすでに決まっていて、ここ第六下層で待機しているっす。他の悪魔は戴冠式に向けて最下層に向かっているんすけど、御子さんが穴から落ちてくるもんだから連絡がミツメ君に届いていなかったんすね』

『……別にカウントしてくれたっていいでしょ? もの凄い大変だったんだよ!?』

『残念っすけど、最初に決めた5体以外はカウントされない決まりっす』



体ズタズタにされても足掻いて何とかミツメを倒したのに、カウントされないのか。……でも、どのみちミツメは推薦なんてしないか。気を取り戻してすぐに攻撃再開したくらいだし。



『はぁ、じゃあ後4体倒さないといけないのか。 ……そいつらって、ムカデと同じくらいの強さ?』

『ははは、御子さん何言っているんすか? ムカデの婆さんは中位悪魔で、残りは全員上位悪魔っすよ? ムカデの婆さんとはレベルが段違いっす』

『どんだけ難易度高いんだよ!? 俺のレベリング期間ちゃんと設けてよ!?』

『そのレベリング期間をぶち抜いたのは御子さんっす』



第六下層からは悪魔たちとの戦闘になることは最初から決まっていたから、それまでに俺に戦闘経験を積ませる予定だったらしい。



『だから散々言ってるじゃないっすか。なんで穴から落ちちゃったのかって』



憐みの目で見てくるマコトに返す言葉もなく、俺は頭を抱えた。



『そんな状況だなんて、わかるわけないでしょ! そういう大事なことは先に言ってよぉ!!』



強く思ったせいか、念話がやたら遠くまで響き渡った。



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