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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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百足を受け入れられない悪魔

どうしよう、ムカデの話についていけない……


ムカデはディピードの体を褒め称え、彷彿とした笑みで俺に説明してくる。でも、全く共感できない。


『百足の外殻は個性的で皆美しいが、ディピードの外殻は別格じゃ。漆黒に輝く外殻は宝石に勝るとも劣らない。いや、宝石と比べることは失礼じゃな。宝石なぞ、ただの飾りにしかならぬ。じゃが、この外殻は如何なる攻撃も通さず、傷つかず、美しい姿を保ち続けておる。何人も汚すことのできない、生きる宝石よ。この神秘的な美しさ、御子となるお主なら勿論感じておるじゃろう? さらに、ディピードの足を見よ。まるで一本一本が宝刀の如き輝きを放っておる。この足で切り裂かれるのならば、死にゆくゴミどもも本望じゃろうて。そしてディピードの瞳はまるで真珠のように美しく、……』



ババアの話が止まらない。悪魔に生まれ変わろうと、気持ち悪いものは気持ち悪い。百足に気持ち悪いという感情以外湧かないんだけど……。

このままババアの話を長々と聞くつもりはない、というか聞いているのが辛い。俺は話を進める為に質問を挟んだ。



『ムカデ、ディピードの良さは十分理解したから、俺を追ってきた理由を教えてくれない?』


ムカデは話を止められて不満そうにこっちを睨んだが、一つため息を吐いて口を開いた。


『……全く、この程度でディピードの良さが理解できるはず無かろうが。しかし、そんな質問をしてくるとは。まさか、サトリ様から何も聞いておらんのか?』


……まさかムカデが様付けするとはね。まぁミツメよりも格上だし、やっぱり悪魔の中でも上位なんだね。


『悪魔の王になれ、とは言われたけど、それ以上は何も聞いていない』

『……ふむ、では宴については伏せておいた方が良さそうだのう』


ムカデが独り言のように呟いていたがはっきりと聞こえた。宴って、悪魔の王になる就任式程度に思っていたんだけど、認識が違うみたいだね。……少し、鎌をかけてみるか。


『ああ、宴についてはサトリから聞いている。あまり詳しくは覚えていないけど。宴の準備の為に先に最下層に向かうって言っていたけど、ムカデも準備に関わっているの?』

『なんじゃ、やはり説明を受けておるではないか。重要なことも覚えてられぬとは、どれほど小さい脳味噌か。これでは先が思いやられるのう』


ムカデは大きく首を振ってため息を吐いた。……そろそろ、一発殴っていいかな。このババアは、なんで一々人を逆撫でするようなことを言うんだか。でも、話を聞きだすなら無知のまま聞いた方が教えてくれそうか。俺は我慢して質問を重ねた。


『……あまり重要だと思っていなかったから聞き漏らしていてね。……宴までに準備をすると言っていたんだけど、どれくらい待った方がいいの?』

『人の話も聞けぬとは、その耳は飾りか? サトリ様が準備に時間を要するとすれば、魔法陣の起動しかあるまいな。それならば、三日ほどはかかるだろうのう』


……悪魔に日数の感覚がある方に驚くね。ここの一日が何時間か分からないけど、まだ猶予はあるのかな?


『それで、俺も宴の準備が必要なの?』

『当たり前じゃろう。だからこそ、儂が赴いたのじゃから』


宴の準備とムカデの来訪は関係している? 今持っている情報では、判断のしようがない。俺は思った疑問をそのままぶつけた。


『……サトリが詳しく教えてくれなかったんだけど、何を準備すればいいの?』

『……お主、何も知らぬのか?』


はい、そうです。という心の声は出さずに、どうやってムカデから情報を聞き出すか考える。

口悪いけど話をするのは嫌いじゃないみたいだし、突けば勝手に話してくれるかな?


『サトリが何か話していたような気はするけど、他のことに気が向いてて聞いてなかった。このままだとサトリに言われたことを無視することになるけど、まあいいか』

『良い訳がなかろう! この虚けが! 宴に呼ばれたものは戦う準備をするものじゃろうが!』

『戦い?』


悪魔の王になる為には、悪魔を倒して成り上がれってことかな?

もう少し情報を漏らしてくれないかと期待したが、そうはいかないみたいだ。ムカデが敵意を向けて俺を睨んだ。


『……もう問答はよい。お主は使命を蔑ろにし、王となるための試練も放棄しているようじゃな。試練を受けさせる価値もない者を宴の場には行かせられぬ。詳しく聞きたくば、儂を倒してみよ』



ムカデはそういうと、飛び上がってディピードの頭に飛び乗り、ディピードと一体化して咆哮を上げた。

結局こうなるのか。……でも、こっちもストレスが溜まっていたところだから丁度いい。


使命も試練も今はどうでもいい。

とりあえず、ババアをボコす!



俺は手から針を射出した。ムカデの顔目がけて飛んでいき、顔に命中する。やったと思ったのは一瞬のことで、貫通したと思った針はへし折れて宙を舞った。


『キヒヒヒ、ディピードの外殻が無理でも、儂の顔ならば貫けると思うたか? 儂の憑依がそのような欠陥を生むわけ無かろう。憑依すれば、そのものの特性を獲得する。今の儂は、ディピードと同じ硬度を誇るのじゃ!』


……勝手に説明してくれるのは良いんだけど、彷彿とした笑みを浮かべるのをやめてほしい。ババアの笑みなんて需要ないって。



そんなどうでもいいことを考えていると、ディピードが上体を浮かし、こちらに叩き付けようとしているのが見えた。

ただでさえ超重量なのに、鋭い足がこちらに向かって振りかざされている。このままいけば、切り刻まれた挙句に押しつぶされてしまう。


……悪魔の体を切り刻まれるのは許容できても、百足の抱擁は無理!!


俺は全力で横に飛び、ディピードの間合いから飛んだ。その直後に衝撃が体を襲う。掠ってもいないのに風圧だけで壁に吹っ飛ばされた。

魔鉱石の壁にぶち当たり、衝撃が前後から襲い掛かる。硬すぎる魔鉱石にクッション性は皆無で、ぶつけた衝撃がそのまま返ってきた。


衝撃に動揺している俺を見ながら、ディピードはまた上体を持ち上げた。そして、ムカデが冷酷な笑みを浮かべてこちらを見下す。


『儂程度に勝てぬのならば、ここで死んだほうが幸せだろう。潔く死ね、御子とは名ばかりの、ゴミ屑よ』



壁にぶつけられた衝撃で起き上がれず、座り込んでムカデを見上げていたが、ムカデが放った言葉で俺の中に明確な殺意が芽生えた。

恐怖が払い除けられ、憎悪が身を包む。


状況は理解しきれていないし、バカでかい百足に恐怖を抱いているのは確かだ。

でも、それ以上に、自分の存在を否定された挙句に消されるのは許容できない。


俺を消そうとしているなら、向こうも消される覚悟はあるよね? 試練がどうとか、そんなことはどうでもいい。

今は、ただ、目の前の敵を殺すことしか考えられない。

どうやって攻撃するか、恐怖を与えるか、甚振るか、止めを刺すか。考えただけで、興奮が止まらない。



『……面白い。見てみたいな』


妄想を膨らましすぎて零れてしまった呟きに、ムカデは意味を理解できず動きを止めた。

俺は笑みを深めてムカデを見つめ、心に抱いた感情を言葉にした。



『ゴミ屑に殺される、ババアの最後を』




百足との戦闘に入るはずが、次回に持ち越しとは。

これもすべて、百足愛の強すぎるムカデが悪いのです。


次回こそ、百足とのバトルです。

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