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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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歩み出す悪魔と悪ガキの決意


『では、また最下層でお会いしましょう』



そう言ってサトリはミツメの足を掴んで引きずりながら外に出ようとした。


ちょっと待って! 悪魔を束ねろとか強くなれとか訳分からん事言っておいて放置は酷いって!

ていうか俺喋れないのにどうやって悪魔たちを束ねろと!?



『教育的指導で従えばよろしいのです』



教育的指導って体罰のことだよね? どんだけ暴力大好きなんだこの執事は!?



『冗談はさておき、確かに意思疎通ができないままでは他の悪魔との交流にも差し支えますね。では、念話をお教えいたしましょう』



……そんな便利なものがあるなら早くいってほしい。

それとも、習得するのが難しいとか?



『いいえ、コツさえ掴めばすぐに使えるようになります。貴方はすでに相手からの念話を受けることはできておりますし』



念話を受け取ったことなんてあったっけ?

思い返してみると、不思議に思っていたことがあった。ミツメに話しかけられた時、言葉と意味が分かれて聞こえていた。まるで言葉に込められた意味を直接理解するような感覚。あれが念話なのかな?



『その通りです。ミツメは言葉に魔力を込めて貴方に話しかけました。悪魔の中にも言葉を話せないものは多いので、悪魔同士の会話は念話ですることが常識ですね。念話であればわざわざ声に出さなくても話すことが可能です』



魔力を込めて念じれば相手に伝わるのか。それなら、声を出さないでいいから口がなくても問題ないね。



『人間同士の場合は自分と相手の魔力の波長を合わせなければ念話が成立しませんので難易度は高いのですが、悪魔の魔力は波長が似ているので、悪魔同士の念話は容易にできます。試しに、ミツメに念話で話しかけてみてください』



そう言われてミツメを見ると、すごく嫌そうな顔でこっちを見ていた。不満を口にしないのは、サトリの暴力に怯えているからだろうか。

俺は第一下層で魔法陣に触れたときを思い出し、頭の中で言葉をつぶやき、魔力を体から軽く押し出す。



『おーい、みっちゃん!』

『……誰がみっちゃんだ、この野郎!?』



良し、念話成功!

まだ魔力の出し方はよくわかっていないけど、これなら簡単だから問題なさそうだね。


そしてみっちゃん、もといミツメは、また叫んだせいで壁に叩き付けられていた。

……今のは俺のせいだね。ごめん、みっちゃん!





念話が成功したのを確認して、サトリとミツメはすぐに行ってしまった。もっと教えてほしいことはあったんだけど、行っちゃったものはしょうがない。

最下層でまた話す機会はあるみたいだし、その時にまとめて聞こう。



さてと、ここでじっとしていても始まらないし、俺も最下層目指して進むとしますか。

悪魔の王になんてなりたくないけど、御子の役目を果たせず処分されるっていうのは避けなければならない。現時点では明らかにサトリのほうが格上だから勝てないだろうし。

自分の身を守る為にも強くなっておかないとね。


俺のこの悪魔の体、実際には闇を纏っているって言ってた。そして、俺が闇に命令して体を形成していると。

腕を見ると黒い靄が覆っているように見える。……これが闇ってことなのかな? まず、闇が物体として存在しているのが理解しきれないんだけど。


物は試しと、黒い靄に向かって、俺は皮膚をイメージして形成するよう命じてみた。


皮膚みたいに体に張り付いて、靄が出ないようにして、……お?


命じてみると、腕から漏れていた靄が収まり、黒色の皮膚が出来上がった。反対の腕にも同じように命令し、皮膚を形成する。

触った感触は柔らかい人間の皮膚のようだ。


……皮膚を作るのは成功したけど、悪魔たちとの戦闘を考えると防御力が弱すぎるよね。


防御力を上げるだけなら体を硬化すればいいのだが、あれは体がかなり重くなってしまうし、なにより隙が大きすぎる。

動きに支障がなく、かつ防御力を上げるためにどうすればいいか。考えてたどり着いたのが、皮膚のみを硬化させるというものだ。


楔帷子をイメージし、体の皮膚を変化させた。見た目はほとんど変わっていないけど、少し重いと感じる。動きに支障はない程度だね。

ミツメと同じように腕から刃を出して試し切りしてみた。反対の腕に刃を当てて引いても傷はつかない。腕を振りかぶって切ってみたが皮膚は切れなかった。……衝撃で腕が折れたが。


とりあえず、これならミツメのように斬撃を飛ばしてくる悪魔と戦っても、弱い攻撃ならなんとか防げそうかな。


防御に関しては、頭を守ることができれば問題ない。元々、首を落とされても手足が折れても治る体だし。

ただ、ミツメと戦った時は首を落とされて言葉通り手足が出せない状況になっちゃったから、斬撃には注意しておかないとね。



俺はスライムを壁から剥がして頭に乗せ、唯一の出口へと足を進めた。






====






最下層へと進む道をサトリと一緒に進んでいた。未だにサトリに引きずられたままだが。

散々放せと言っても放さねぇし、騒ぐと壁に叩き付けられる。くそ、さすがは原種だな、力の差がありすぎる。俺は抵抗を止めて、代わりに質問を投げかけた。



『……何故、あいつが王なんだ? アンタ等、原種の誰かじゃなく』


『ムフフ、彼が御子だからですよ。御子には、エデル様から託された役目と力があります。確かに現状はまだ中級程度の力しかありませんが、すぐにその力を覚醒させることでしょう。少なくとも、運が良ければ上級悪魔の貴方にも勝てるのですから、期待できそうですね』



サトリに異様な笑顔を向けられ、俺は先ほどの戦いを思い出して苦虫を噛み潰した。


暇つぶしにと赴いた場所で、異常な存在に出会った。体から靄が漏れる悪魔など見たことがない。だから、最初は魔獣だと思っていたんだが、違った。

話せないだけで、こちらの言葉は聞こえているし、俺と普通に戦えていた。

魔獣は本能のままにしか行動できない。だから俺はあいつを悪魔だと認識を改めた。


それでも倒すことに変わりはなかったが。せっかく面白い奴に出会ったんだ。倒してから、俺の舎弟にしようと考えていた。


だが、倒せなかった。


首を落としても、どれだけ斬撃を浴びせても、あの悪魔は死ななかった。

いくら油断していて、急所である頭を狙わないように気を付けて、魔力を使わなかったからといって、負けるとは微塵も思っていなかった。


格下の悪魔に負けて失神したことに、腸が煮えくり返る思いがした。



だが、それと同時に、高揚感が心を満たした。他の悪魔どもとの戦いでは味わえなかったものだった。



あの悪魔は、まだ強くなるらしい。そして、悪魔の王になろうとしている。俺よりも、格上の存在に。

それなら、次は本気を出して戦えるだろう。次こそは、俺が倒して舎弟にしてやる。王を舎弟にするなんて、想像しただけで興奮してくるぜ。


……だが、その前にあいつ死なねぇかな? そもそも、あいつちゃんと強くなれんのか?



『……あいつが、力を覚醒しなかったら、どうすんだ?』



思っていた疑問を口にすると、サトリは笑みを深め、ギラリとした目をこちらに向けて言い放った。



『決まっているではないですか。役目も、力も、殺して奪う。ただ、それだけですよ』



その圧力に、俺は身震いがした。サトリの力量は俺を遥かに超えるのはわかっていたが、これほどとはな。これじゃあ、戦っても瞬殺されるのが落ちだ。


……あいつと戦うまでに、俺も力をつけとかねぇとな。



誰よりも強くなって、誰にも文句は言わせねぇ! あいつは俺が舎弟にする!


待ってろよ、靄野郎!!




退屈な時を生きた悪ガキは遊び相手が欲しいのです。


王になるのが先か、舎弟になるのが先か。

……処分されるのが先にならないよう強くならねば。

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