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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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執事と悪魔


あー、すっきりした。いい仕事したね。

教育的指導が入って、この悪ガキも少しは真っ当になってくれると嬉しい。


……うん、無理でしょうね。



さて、どうしようか。

思いっきり殴っちゃったから、いつ目を覚ますか分からないね。


目、覚めるよね……? 死んでないよね?


ストレス発散できた今、殺意は収まった。だから保護欲が残っている状態の為、できるなら助けたいと思っている。

まぁ、生きていたのならの話だけど。




それにしてもこの悪ガキ、強すぎ。

上階の悪魔たちが束になっても勝てないだろうね。


それに自我もちゃんとある。話しかけてきたし、この壁の石が魔鉱石とも言っていた。

知性が備わっているなら、ちょっと脅し、もといお願いすれば、ここの情報を教えてもらえるだろうか。目を覚ましたら質問してみよう。


……起きた瞬間に攻撃される未来しか見えないし、拘束はしておかないとね。




悪ガキの手足を貫いていた針を一度抜いて地面に寝かせ、体からロープを出して悪ガキをグルグルに縛った。縛った後でロープを硬化させておく。これで、暴れてもすぐには逃げれないだろう。


とりあえず、悪ガキが目を覚ますまでここで待つかな。





……あれ、何か、忘れている気がする。



……あ! スライム!



戦闘に入ってからすっかり忘れていた。ていうかスライムの存在感薄っ!


周りを見て探したが、スライムが見当たらない。スライムの残骸っぽいものもないし、死んでないよね?

下にいないことを確認してから上を見上げた。すると、先ほどと同じく白い壁のところにスライムがいた。


……どうやって上ったの?



俺は翼を広げて再び飛び上がり、スライムのところに向かった。

スライムは今も上っている途中のようで、よく見ると体から黒い糸が上に伸びていた。どうやら体から糸を出して、上の壁にくっつけて綱上りしていたみたいだね。……器用なスライムだ。


俺はスライムを掬い上げた。プルプルと揺れていて可愛い。

やはりスライムのプルプルボディは癒しだね。悪ガキが目覚めるまで、スライムで穢れた心を浄化しよう。俺はスライムを抱えて再び穴底に降り立った。




『ムフフ』



地面に足を着けた瞬間、不気味な笑い声が響いた。


俺は声の聞こえた方向とは逆に飛び、スライムを後ろに投げた。そして爪を生やして体を硬化させ、臨戦態勢をとる。

声を聴いた瞬間、まるで心臓を握られたような衝撃と言い知れぬ恐怖を感じた。声からでも、悪ガキよりも格上だとわかる。


そこには、スーツ姿の男が立っていた。


スラっとした体躯にスーツがとても似合っているが、地獄には似つかわしくない。

髪も肌も真っ白で、目の色は瞳が白色、白目が黒色となっている。スーツが真っ黒で他に差し色はない。完全なモノトーン悪魔だね。


その男は笑みを浮かべ、悪ガキを見下ろしていた。そして俺に目線を移して口を開いた。



『まさかミツメが倒されるとは。現時点でそれほどの力を有しているとは、予想外です』



丁寧な口調で俺に語り掛けている。どうやらあの悪ガキの名前はミツメというらしい。


ミツメをぶん殴って拘束しているけど、男に敵意はないようだ。

最初に笑い声を聞いたときは恐怖を感じたが、今はそれも全く感じない。


できるなら、男と敵対しない方向でいきたいけど、まだ警戒心は解けない。



運よく勝てたからよかったものの、ミツメは俺よりも強い。

そのミツメよりさらに格上と思われるこの男には、一瞬の油断が命取りだろう。油断しなくても一瞬で負けるかもしれないし。


ただ、男は気になることを口にしている。まるで、俺の成長を見ていたかのような発言。

折角向こうから話しかけてきているんだから、いろいろと情報を得ないと。



問題は、俺が話せるかどうかなんだよね。

口は作ってあるけど、声帯も肺もない。まずはそれらを作るところから始めなければ。



『あぁ、声を出す必要はありません』



えっ、心読まれた!?


驚いて男を凝視すると、男は笑みを浮かべたまま答えた。



『えぇ、私は心を読むことができるので。そのままで構いませんよ』



……おぉ、すごいな。悪魔って心読めるんだ。

心を読まれるのは不快だが、今の声が出せない状況ではとても助かる。


……便利そうだし、俺も練習すれば読めるようになるかな?



『残念ながら、悪魔の中で心を読める者は滅多におりません』



そっか、残念。というより普通に会話が成立していることに驚く。


会話ができるのなら、いろいろ教えてもらいたい。

少しの会話ですでに聞きたいことが沢山できたが、とりあえず彼らについて聞くのが先かな。



あなたの名前は?



『申し遅れました。私、サトリと申します。以後、お見知りおきを』



サトリは丁重に頭を下げて挨拶してくれた。こんな紳士的な悪魔もいるんだね。佇まいはまるで執事みたいだ。



サトリさんか、こちらこそよろしく。俺は名前覚えていないから名乗れないけど。



『悪魔に転生した時に、人間だった頃の記憶が消えてしまったのでしょう。覚えていないのも無理はありません』



……そっか。じゃあ、もう生前の記憶は思い出せないのか。でも、その割には知識は残っているんだけど。



『貴方の場合は特別ですから』



え? 特別?



『普通の悪魔は、魂が変異して悪魔と化します。悪魔に生まれ変わった、というとわかりやすいでしょうか』



最初の階で魂が悪魔に変わった瞬間を見たが、あれは魂が変異して悪魔に生まれ変わったのか。まぁ、これは予想通りだね。

俺はそれとは違うのだろうか?



『貴方は魂を残したまま地獄に転生してきました。魂を変異させることなく、闇を纏って悪魔に化けているのです』


……どういうこと? 悪魔に化けている? え、俺って悪魔じゃないの?



『その通りでございます』



訳が分からない状態で首を傾げていると、男は笑みを浮かべて衝撃的な真実を告げた。






『貴方は悪魔ではありません。人間です』



スライムの存在感が薄い。そして気づいたら逃げようとしますが、悪魔はそれを許しません。


ようやく、次回から説明回となる予定です。


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