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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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悪ガキと悪魔


『おら、いくぞ!』



悪ガキが歪んだ笑みを浮かべたまま腕を振り上げる。それと同時に、俺は悪ガキに向けて両手から針を射出した。

針は狙い通り両肩に向かって伸びていったが、手ごたえのないまま壁にぶつかった。


悪ガキは一瞬で移動して針から逃れていた。その速度は目で追うのがやっとだ。

針に意識を向けることなく、悪ガキはこちらに向かって腕を振り下ろした。


急いで針を切り離してその場から離脱したが、先ほどまでよりも斬撃の速度が速く、避けきれずに右の足首が切断された。



くそったれ!



俺は右足を振り上げて悪ガキに切断面を向け、そこから針を乱発した。広範囲に向けて針を射出したが、動きが速すぎてかすりもしない。

悪ガキは涼しい顔でこちらを見据え、さらに腕を振るった。片足を上げた不安定な状態では避けきれない。

俺は針を切り離すと同時に地面に向けて針を射出し、上空へ逃げて斬撃を回避した。勢いそのままに上空へ打ち上がり、翼を生やしてさらに上へと逃げた。



動きが速すぎる! まずは、あいつの動きを封じないと……



切断された足を復元し、俺は悪ガキを俯瞰した。特に動く様子はなく、こちらを見上げてニヤニヤしている。……あの顔面殴りてぇ!


だが、丁度いい。悪ガキが動かないうちに対策を考えないと。


動きを封じるといっても、速すぎて当たらない。針で籠のように捕らえるにしても、あの刃がある限り捉えきるのは無理だ。

斬撃を避けつつ動きを封じるには、俺には速度が足りない。


俺はまだ、この悪魔の体を使いこなせていないと思う。もしかしたら、もっと早く動けるかもしれない。もっと強力な攻撃を繰り出せるかもしれない。

現状で無理なら、試行錯誤して打開策を作り出すしかない。


現状把握だけで計画は全く準備できていないが、もう時間がないようだ。悪ガキが十本の指に刃を生やしている。



『もうそろそろいいか?』



下から、声とともに斬撃が飛んできた。振るわれた腕からは十本の斬撃が生じ、俺の逃げ場を封じていた。

咄嗟に翼で体を覆い、翼を硬質化させた。体が両断されるのは回避できたが、翼が切り飛ばされた為、地面に叩きつけられた。



『ほら、転がってないで攻撃して来いよ。わざわざ待ってやったんだから』



……待ててない! まだ計画考えている途中でしょうが!

俺の思いは伝わらず、悪ガキはニヤニヤしたままだった。


とりあえず、思いついたまま攻撃をやってみるしかない!


今までは針を体から切り離さずに伸縮させていたが、これでは避けられた際に隙が大きい。だから今回は針を撃ち出してみる。

両手から撃ち出した針は悪ガキに向けて飛んで行ったが、それも軽く避けられる。これでは、足らない。


俺は全身から針を打ち出した。これで避けきるのは無理だ!


そう思っていたが、この状況でも悪ガキのニヤニヤが止まっていない。素早い動きで腕を振り上げ、十本の刃を揃えてそのまま振り下ろした。十本の斬撃が合わさった巨大な斬撃が針を吹き飛ばしてこちらに向かってくる。



まずい!



俺は咄嗟に横に飛んで攻撃範囲から逃れようとしたが、回避が遅れたせいでドゴンっという大きな音とともに両足が消滅した。



……攻撃が、届かない……



直線的な攻撃では傷一つ作ることはできない。

他の方法として、化け物のように体を液化するのも考えたが、捕らえる前に急所を突かれて終わりだろうね。


何かないかと周りを見渡してみても、あるのは切り落とされた俺の体だけ。


逃げ道は上か悪ガキの後ろ。だが、悪ガキと相対している時点でどちらも難しいだろう。

さっきの攻撃で隣の部屋に開通したりしないかと淡い期待をしていたが、開通どころか傷一つついていない。どんだけ固いんだこの鉱石?



……いや、これは使える!



俺は足を修復して立ち上がり、体から靄を噴出した。今までよりも濃密な靄を体を纏わせ、さらに圧縮させて硬度を上げる。

体を黒い鉱石のように硬くできれば、悪ガキの攻撃は効かなくなるはずだ。


『へぇ、体を硬くしてんのか? そこの魔鉱石と同じ硬度なら、耐えきれるかもしれねぇなぁ』


そう言いつつもニヤニヤは止まらない。

この黒い鉱石、魔鉱石っていうらしいが、これと同じ硬度なんて無理って言いたいんだろうね。



『魔鉱石と同じ硬度か、俺が確認してやるよ!』



そう言って飛ばしてきた斬撃を、俺は腕をクロスして防いだ。切断は免れたが、腕に切り傷が深く刻まれている。



まだだ、まだ足りない。もっと、もっと硬く!!



圧縮すればするほど体の線が細くなる。俺はどんどん靄を噴出して不足分を補った。体の硬度と重量がどんどんと増していく。


さらに飛んできた斬撃をもう一度腕で受け止めた。今度は腕に傷を負うことなく防ぎ切った。



『へぇ、結構硬いな。じゃあ、これならどうだ?』



悪ガキが両腕を上げた。先ほどと同じ巨大な斬撃が来る!

普通の斬撃なら受け止められたが、先ほどの巨大な斬撃は受けきれるかわからない。逃げたいけど、体が重すぎて歩けん!

諦めて覚悟を決め、受けの構えをとる。


悪ガキが腕を振り下ろし、また巨大な斬撃が迫ってきた。

クロスした腕にぶつかり、一瞬の抵抗の後、両腕が砕けて体が裂けた。腕を犠牲にしたおかげで軌道が逸れて頭は無事だったが、俺は下半身を失ってその場に崩れ落ちた。


『魔鉱石には程遠いが、なかなかの硬度だったなぁ。斬りごたえがあってスカっとしたぜ』


ストレス発散ができたのか、すっきりとした顔でこちらに向かってくる悪ガキにイラつく。

だが、これでいい。もう少し、もう少しだ。



『思いのほか楽しめたな。その礼だ、一撃で止めを刺してやるよぉ』


悪ガキは指の刃を戻し、腕から巨大な刃を生成した。大人ですら持ち上げられないほど大きな刃を軽々と持ち上げた。

振りかぶる為に勢いをつけて、一歩踏み込む。



これで、ようやく射程圏内!



悪ガキの横から針が射出した。予想外の攻撃で避けきれず、悪ガキの足と腕を針が穿つ。



『っな!?』



悪ガキは驚きつつ横を見て目を見開いた。そこには最初に切り捨てられた俺の体がある。




悪魔の体は万能で切り離されても接触すれば元に戻る。だが、本体から切り離された状態では動かせない。だから接触することが必要だった。

そのため、俺は体の一部を液状化し、地面を這って切り捨てられた体に触れた。魔鉱石が黒いおかげでバレずに済んで本当に良かった。




俺は体を元に戻し、硬化を解いて悪ガキに歩み寄る。


『くっそがぁあ!!』


悪ガキは叫ぶばかりで、突き刺さった針が四肢の動きを封じている為逃げられない。



さぁ、ようやく待ちに待った教育的指導の時間だ!

準備はいいね? 準備できてなかろうが関係ないけど。


俺は腕を巨大化し、さらに硬質化させて振りかぶった。腕を支える為に全力を込める。


『おい止めろ! くそがぁ!!』



俺は心の中で強く叫ぶ。



歯ぁ食いしばれ! 悪ガキがぁ!!



巨大な腕が、悪ガキの顔面を捉えた。



グシャ!!



悪ガキは顔面を潰されて気を失った。




……ふぅ、すっきりした!!




学校での体罰はもちろん、2020年4月からは家庭での躾としての体罰も法律で禁止されました。

限度を知らない親がいるから、こんな法律が必要になるのでしょうか。


……今回は地獄という無法地帯なのでセーフ。

悪魔に人間の法律なんて適用されませんけども。


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