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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第2章 畜生の道
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悪魔の二面

浮ついた気分のまま歩いていると、あっという間に目的地に到着した。


初めてフェリュスと出会った祭壇の前に8人の神官が並んでいる。

神官達の表情からは恐怖が見て取れる。フェリュスは神官に対しても容赦が無かったから、また誰かが処罰されると思ったのかも知れないね。


神官達は流れるような所作でフェリュスの前に跪き、言葉を待つ。

だが、いくら待っても声は掛からない。俺が命令しないと動かないからね。


緊張した雰囲気が張り詰めるも、フェリュスは虚ろな表情のまま固まっている。

神官達も粗相をしないよう顔を伏せたまま固まっているが、困惑と恐怖が漏れている。



「フェリュス、神官達に心刻烙印を掛けて」



静寂の中で小さな言葉が響き渡る。


神官達は反射的に面を上げた。驚愕に見開いた目で俺を見据え、次にフェリュスに視線を送る。

だが、フェリュスは俺を咎めるどころか、無言のまま動き出す。

そして、手前に跪いていた者の腕を取り、そのまま祭壇の元へと向かっていく。



「フェ、フェリュス卿! 何をするのですか!?」



腕を取られた神官は声を荒げ、必死に抵抗する。だが、フェリュスは一切答えない。

神官は尻餅をついて手を解こうとするも、身体強化をしたフェリュスの力に成す術もなく、祭壇の上まで連れて行かれた。



「汝、我の命に従いて、その一生を捧ぐことを誓え」

「ひっ! お止め下さい!」

「汝、我の命に従いて、その一生を捧ぐことを誓え」

「フェリュス卿!」

「汝、我の命に従いて、その一生を捧ぐことを誓え」

「っ!? だ、誰か、止めてくれ! フェリュス卿がご乱心だ!」



無機質な言葉を延々と繰り替えすフェリュスに恐れを抱き、助けを求めるも応じてくれる者はいない。

他の神官達も同様に困惑していて、助けに動く余裕がないからね。


神官の様子に反応することもなくフェリュスは言葉を繰り返すのみ、神官も混乱したままで、契約は進まない。


心刻烙印は契約魔法だから、相手の同意が得られないと成立しない。

まぁ、普通はそうだよね。奴隷に成れと言われて、直ぐに分かりましたと答える方がどうかしている。



言わせる為には、二択を迫ればいい。


奴隷か、死か。


そうすれば、神官達は奴隷を選ぶだろう。

もし、死んでも奴隷になりたくないという者がいれば、それでも構わない。

そいつを見せしめに殺し、他の者の心を折ればいいのだから。



俺は祭壇に近づき、神官に声を掛けた。



「奴隷になるか、ここで死ぬか。どっちがいい?」

「ふっ、ふざけるな! 奴隷の分際で話しかけてくるな!」



相当混乱しているようで、俺には視線も向けず、フェリュスに対して声を掛け続けている。

少し冷静になれば気づくはずなんだけどね。この場で誰が一番偉いのかなんて。



祭壇に上り、神官を見下ろす。

そして、その肩に手を置き、握り潰した。



「がぇ!? がああああ!?」

「五月蠅い」



叫ぶ神官の腹部を蹴り上げ、祭壇の外へと吹き飛ばした。

地面を跳ねながら吐瀉物を撒き散らして転がっていく神官を一瞥し、他の神官達に目を向ける。


ここにいる神官達は未だに状況を飲み込めていないようだね。

まぁ、フェリュスの記憶からも見て取れたけど、ここに来るような神官達は無能揃いだから仕方がないか。


フェリュスが蹲っている神官の元へ歩み寄り、足を掴んで再び祭壇の元へ引き摺っていく。



「どうなってんだよ、これ!?」

「やばい、逃げるぞ!」



茫然としていた神官達の思考が漸く動き出し、3人の神官が逃走という選択肢を選んだ。

フェリュスに捕まえさせようかと考えたところで、クリュスと目が合った。


丁度良いから、クリュスの力を確認しておこうかな。



「クリュス、逃げた奴を捕まえて」

「生かしとくんか?」

「うん。生きていればいいよ。後で治すから」

「了解」



その瞬間、クリュスが消え、逃げ出した神官達は大腿部から鮮血を噴き出していた。

身体強化のみの高速移動。その速度は、多分俺よりも上だね。


悲鳴を上げる神官達の先にクリュスの姿を見つけた。

帰りはゆっくりとした歩調で、倒れていた神官達を捕まえては放り投げていく。


血濡れになった神官が目の前に転がされるのを見て、他の神官達も逃げるのを諦めた。

神官達も簡単な魔法なら使えるし、魔道具も持っているはず。それでも、圧倒的な力の前で抵抗が無意味だと悟ったようだね。



祭壇の上では戻ってきたフェリュスがまた同じ言葉を繰り返している。

朦朧とした神官はそれでも頑張って抗い続けている。その努力は報われないんだけどね。



「フェリュス、拷問して。やり方は、魔道具作りと同じで」

「なっ! ちょ、フェリュス卿? ご冗談ですよね!? わ、悪ふざけが過ぎます!」



声をいくら荒げても、答える者はこの場にいない。

フェリュスは淡々と行動し、横たわる神官に手を向けた。


折れた肩と腕を持ち、思い切り引き千切る。



「あぁぁあああああ!!」



肉を裂く音と断末魔が響き渡る。

神官はその痛みに耐えきれず失神するも、フェリュスは止まることなく作業を続ける。


次は反対の腕を掴み、同じように引き裂く。

続けて足の付け根から引き裂いて四肢をもいでいく。

痛みによって気絶と覚醒を繰り返しながら、終わらない悪夢は続いていく。


皮を剥ぎ、肉を削ぎ、骨を抜いていく。ここには道具が無いため、全て手作業だね。

内臓は引きずり出され、致死量の血が祭壇を赤く染める。


いつの間にか神官は死んでいたが、それでもフェリュスの動きは止まらない。

首が外され、骨を粉砕して中身を取り出す。


最後に脳を捨てて、残ったのが2つの目玉だった。



魂魄保護を掛けていない為、魔道具の材料として使うこともできないただの肉片。

それを目の当たりにして、神官達は絶望を抱いた。


神に仕える者は人を殺してはいけない。

その教えを、司祭であるフェリュスが破いたのだから。



今から私たちは、無価値に無情に殺される。



異常な光景が恐怖心を掻き立て、絶望は思考を完全に凍結させる。

鼓動が高まり心臓がパンクしそうになっているのに、体はまるで氷のように冷たい。


表情からは生気が失われ、心は完全に砕け散った。

変わり果てた神官を一瞥し、俺はフェリュスに命令した。



「じゃあ、次」



惨劇を目の当たりにした神官達は、もう誰一人拒むことなく奴隷となった。








「なぁ、兄ちゃん。どっちが素の兄ちゃんなん?」

「ん?」



神官達に奴隷紋を刻んでいる光景を見学していると、横からクリュスの声が上がった。

けど、質問の意味が分からずに疑問を示してクリュスに視線を向けた。

クリュスは柔らかい表情に反し、鋭い視線で言葉を重ねる。



「優しい面と怖い面があるやん? どっちが素なんやろうかって」

「……」



問いの意味を理解して、答えを出すことができなかった。


人間の記憶も性格も持ち合わせているけど、悪魔になる過程で外部からの影響を強く受けている。

だから、素の自分とは何か、分からない。


ヨミやミツメ、クリュスのような子供を可愛いと思うのは人間の時から変わってない。

でも、それは動物と同じ程度で、視界に入れば可愛いと思うけど、必要以上に近づこうとはしないし、それ以上の関心を抱くこともない。

だから、どちらかと言えば無関心に近いんだろうね。


けど、今では子供を見ると庇護欲が出てくる。

ミツメの時なんて、明らかに危ないと分かりながらも手を差し伸べたくらいだ。その結果、首チョンパされたけども。


まぁ、元々がどうだったかを考えるなんて無意味か。

今の俺がどうなのか。混ざり合って変質していようと、それも含めて俺なんだから。



「どっちも素だね」

「怖い面も?」

「うん」



むしろ人間の時の性格は怖い寄りだけど、そこまで言う必要もないよね。



「そっかぁ、やっぱあんま近づいたらあかんな」

「ウソウソ、優しい面100%だから。安心して」



クリュスの胡乱な目を直視できず、俺は視線を祭壇に戻した。





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