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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第2章 畜生の道
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甚振る悪魔


目の前に伏すビーウェは茫然とした表情で俺を見上げていた。

俺は見下ろしながらも、いつでも動けるように態勢を整える。


両足が無くなっただけで無力化できているとは思えないからね。


さっきは運よく意表を突けて攻撃を当てることができたけど、気配が読めずに噛まれてしまったのはかなり危険だった。

ビーウェが使った毒が麻痺毒ではなく魔毒であれば。一時的に行動不能に陥っていただろうからね。


黒衣の能力で毒を無効化できるからと、毒の対処を疎かにしていたことが原因か。

もうミスはしない。殺すまでは気を抜かないようにしないとね。



まずは、完全に動きを封じる。

ビーウェの魂と同調する。今、ビーウェが抱く感情は戸惑いと焦り。それによって嗜虐心が引っ込んでいた。

恐怖も多少は感じているようだけど、命の危機を感じている訳ではなさそうだね。まだ余裕がありそうだ。


なら、行動不能にする次いでに、恐怖を駆り立ててやろう。

魂に干渉して恐怖心を煽りながら攻撃を放った。



「"断斬"」



ビーウェの頭を傷つけないように注意しつつ、手を広げて腕を振い、五本の斬撃を放った。

ビーウェは俺の動きを見て即座に後方に移動した。両足が無くても尻尾による移動が可能らしい。

尻尾に注目していないと急に体が移動したように見えるね。最初に黒槍を避けた時も尻尾を使っていたみたいだね。


それでも斬撃を避け切れずに片腕が肩の付け根から切り落とされた。

ビーウェは衝撃によって後方に飛ばされ、再び地面に伏した。


追撃するために歩み寄る。

まだ無力化には至っていない。手足を三本切り落としたが、それでもまだ足りない。


切断面からは血が噴き出していたが、それも数秒のことで直ぐに血が止まっていた。

魔法ではなく、元から治癒力が高いのだろう。蜥蜴だから欠損しても再生するのかも知れない。


それだったら、もう少し痛めつけても大丈夫そうだね。



「"毒沼"!」



ビーウェは再び毒沼を発生させて身を隠そうとする。まぁ、無理だけどね。



「っ! 何で!? "毒沼"! "毒沼"!!」



魂に干渉したタイミングで既に門は閉ざしてある。もう、魔法は使わせない。


俺の接近に気づいて再び尻尾を使って移動する。器用にも尻尾のみで地面を弾いて逃げていく。その先には、少年がいた。

ビーウェは少年の前で止まってうつ伏せに倒れながら、面を上げて少年を睨みつけていた。



「ウェルフェンス君! 何で攻撃しないの!? 助けてよぉ!」



少年は膝をついたままだったが、ビーウェの言葉を聞いて立ち上がろうとしていた。

フェリュスだけでなく、ビーウェにも命令権があるのかな?


どの道、少年は満足に動ける状態ではないし、魔力も最低限に絞っているから、助けてもらうことはできない。



そもそも、少年に助けを求めていることに殺意が湧く。

少年の瞳にも、強烈な殺意が宿っている。行動の一切を縛られていようと、心は死んでいないからね。



ふと、復讐の手助けとして、少年の魔法を使ってビーウェに苦痛を与えようかと考えた。


砂塵の竜巻で体表を削る。口から砂塵を取り込ませる。

石で出来た槍で串刺しにする。体に砂塵を堆積させて圧し潰す。


砂塵は応用の利く魔法だから、ゆっくりと恐怖を刷り込むこともできるだろうね。



……いや、やっぱり止めておこう。

少年の魔法を使おうと、それは俺が少年を操って攻撃させているに過ぎない。

それだと、フェリュス達とやっていることは変わらないからね。


それに、少年の記憶は一部しか見ていないけど、戦闘に慣れていないのは確かだった。

人間どころか、魔獣すら倒したことがあるのかも怪しい。


隷属されてからどれだけ経っているのか分からないから、もう手遅れかも知れない。

それでも、なるべく少年に殺しはやってほしくない。



少年には悪いけど、フェリュスとビーウェは俺が殺す。

だから、少年の殺意は、俺が引き継ごう。



「"断斬"」



横に振り払った斬撃で、ビーウェの尻尾を切り飛ばした。

後は片腕が残るのみ。



「"毒沼"! "毒霧"! 何で出ないのぉ!! ウェルフェンス! 私を守れ!!」



痛みはあまり感じていないようだね。でも、後がないことが分かっているのか、今までの飄々とした雰囲気は無くなっている。


ビーウェの中で恐怖が増していく。

魂に干渉し、恐怖心を更に増大させる。



体は動かない。魔法は使えない。助けは来ない。

一方的な蹂躙が行われ、死が目前に迫っている。

恐怖で思考が埋まり、体が痙攣する。



ビーウェの感情は既に恐怖で埋め尽くされている。

でも、まだ、まだ殺さない。もっと恐怖を与えないとね。



ゆっくりと歩を進め、ビーウェの残っていた腕を掴む。



「ひっ、"魔毒"! "壊毒"! "狂化"!! あ、あああ!! ウェルフェンス! 早く私を守れ! 守れないなら、お前が身代わりになって死ね! 死ね! 死ね!!」

「五月蠅い」



ボキッ



ビーウェの青白い腕を握り潰す。細い腕の割には堅かったね。

俺は身体強化をして両腕に力を込めて青白い腕を掴んだ。そして、雑巾を絞るようにゆっくりと捩じっていく。



ペキッ ブチッ

グチュ グチュ



体表の鱗が割れて皮膚が破れる。肉が捩じれて血が滲み出る。

血は直ぐに固まるも、次々と肉が千切れて血が青白い肌に流れていく。



「ひ、ひぃ! 止め、止めて! 止めてよぉ!!」



痛みはあまり感じていないようだけど、自身の腕がゆっくりと捩じれていく恐怖は存分に味わっているみたいだね。

どれだけ大声を出そうとも、腕を破壊されている不快な音は聞こえているだろうし。



そこでふと、ビーウェに向けていた視線を少年に移した。

少年の魂とも同調しているから感情を読むことができるが、今は殺意の中に戸惑いと嫌悪、同情の念が生まれていた。


……あぁ、うん。簡単に言うと、俺の行為を見て引いているってことね。

少し配慮が足りなかったかな。少年は元々荒事の経験が無いから、殺意を抱いていようとも相手に情けを感じてしまうのだろう。


甘いなとは感じる。敵に情けを感じて躊躇するなんて、この世界の住人とは思えない。

でも、その優しい心はずっと保っていてほしいと思う。もう、俺には無いものだからね。



さてと、少年の感情を知った後で、少年の眼前でビーウェを甚振るのは気が引けるね。

この場で最も殺意を抱いている少年が情けを感じているなら、もう甚振る必要もないか。


ビーウェは恐怖心に塗りつぶされ、まともな思考もできない状態になっている。

最後に死の恐怖を与えれば、心が折れて再び復活するようなこともないだろうね。

まぁ、現世で悪魔や魔獣が復活できるのかも知らないんだけど。



捩じって千切れかけの腕を持ってビーウェの体を振り飛ばす。その勢いによって腕は完全に千切れ、手足と尻尾を失ったビーウェは受け身を取ることもできずに壁に衝突した。



「ぅ、うぁ……」



ビーウェは呻き声を上げながら、恐怖に顔を強張らせながら俺を見つめている。


これ以上恐怖を煽る必要はない。最後に死の恐怖を味わわせて終了だね。

少年の情に免じて、一撃で楽にしてやろう。



「"黒槍"」



切っ先をビーウェの頭に向ける。

殺意を感じ取ったのか、ビーウェは恐怖と諦念を抱き、攻撃が来るのを待ち構えた。


勢いよく放った黒槍は、黒い線となって一瞬でビーウェの元へ飛来する。

最初は避けられたけど、手足も尻尾もない今、避けることは不可能のはずだった。


だが、黒槍はビーウェの頭を爆散させること無く、ビーウェの眼前で弾けて霧散した。



その正体が透明な障壁であることは直ぐに分かった。一度、見たことがあるからね。



「貴様……」



ビーウェの近くの通路から、怒気を孕んだフェリュスが現れた。




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