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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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殲滅する悪魔

無理無理無理無理無理!!


醜悪な化け物が夥しい数の目で俺を見つめる。

流動的な体が床一面に広がり、壁にまで及んでいる。そしてどこを見ても目、目、目!


部屋の中央に隆起した巨魁があり、そこに目が密集しているが、床や壁にも多くの目がある。

どれだけ目を逸らしても目が合う。この状態で冷静さを保てるかい? 俺は無理!



俺は逃げる為に天井に向けて手を伸ばし、上階に繋がる穴に手をかけた。

しかし、同時に上に伸びた仮足が腕に絡まってきた。ブニブニした感触が気持ち悪い!

感触に耐え切れず、俺は思わず手を戻してしまった。悪魔の体に不快感を与えるって相当危険だと思う。



はっとして上を見上げると、化け物の体が天井にまで到達し、穴を塞いでいた。



……あ、逃げ場がない!?



床、壁、そして天井を化け物の体が覆っている為、どこに向かうにしても肉壁を突き破らないといけなくなった。しかも、天井以外は道があるのか分からない。向かった先が行き止まりの場合、化け物の肉に埋もれる地獄が待っている。


現状把握して虚ろな目をしていると、足元に違和感を感じる。恐る恐る下を見ると、膝まで化け物の体に埋まっていた。少しずつ俺の体を取り込もうとしているようだ。

足を抜こうとしても、抵抗が強くて引き抜けない。俺は足を蹴り上げて化け物の体から脱出を試みる。足は上がったが、化け物の体は粘性が強いのか、千切れずに足にへばりついたままになっている。


足に気を取られていると、肩に仮足が引っ付いてくる。急いで払ったが、払っても払っても、肩に引っ付く。

仮足がどこから生えているのかを確認すると、天井から垂れていた。



……距離が、近くなっている?



天井に張り付いている化け物の体がこちらに迫ってきた。

周りを見渡すと、天井だけでなく、壁との距離も近くなっていた。どうやら、化け物は逃げ場を封じた後でゆっくりと俺を取り込む算段のようだ。

化け物の体が全面から迫ってくる。すべての目が俺を捉えている。まるで、獲物を見つめる捕食者のように。



まずい!!



悪魔を殺すと体に取り込んでしまうため、なるべく殺すのはやめようと考えていたが、そんなことを言っている場合ではない。

爪を鋭くして床のある目玉を引き裂こうとしたが、化け物の体に食い込んだ瞬間に抵抗が強くなり、目玉まで届かない。


片腕と両足が化け物の体に埋まった状況に動揺し、藻掻くだけで対抗策が出てこない。

化け物の体から抜け出せないまま、ついに化け物に体を覆われ、化け物の中に完全に取り込まれた。


呼吸を必要としないため、息苦しさはない。だが、粘度が高く、身動きが取れない。

不快感が全身を襲う。周りが見えず、俺は錯乱状態に陥っていた。


次第に体が重くなり、体が全く動かせなくなる。そして、押し固めた靄が解けるように、体が少しずつ溶け始めたのが感覚でわかる。

痛みは感じないが、虚脱感が襲う。このままいけば、俺という存在はなくなると、本能が警鐘を鳴らしている。


恐怖で回りが見えていなかったが、現状を理解すると同時に、恐怖とは別の感情が一気に膨れ上がった。



それは、殺意。



こいつらは悪魔だ。人間の時に罪を犯した、死んで当然の奴らだ。

そいつらに、何故俺が襲われなきゃならない? 何故、食われそうになっている?

……ふざけるな!



全身に殺意を巡らせ、俺は無理やり体を動かした。手に目玉が当たったのが分かり、それを握りつぶした。

感触も、頭痛も、今は気にならない。ただひたすらに、目の前の化け物を殺す為に動き続ける。


だが、手を振っても手に目玉が当たらない。化け物も攻撃されるのを恐れて、目玉を奥に引っ込めたのかもしれない。


俺は手を横に向けてかざした。そして、手の平から針が出るイメージで思いっきり力を込めた。

想像以上の勢いで射出された針は、勢いを落とすことなく壁まで突き進んだ。少し頭痛がしたことから、いくつかの目玉を潰せたようだ。


この状況では、この攻撃が一番有効そうだ。

そう思い、俺はしゃがみ込んで背中に意識を向け、そしてハリネズミのように多数の針を天井に向けて放った。

背面で何が起きているかは見えないが、強烈な頭痛がしたことから、多くの目玉を屠れたはずだ。


背中の針を戻すと同時に、体を包んでいた化け物の体も消滅した。

まだ化け物は健在だが、俺の周りだけぽっかりと穴が開いている。どうやら、目玉を潰せば、その周辺の体も消滅するらしい。


俺は両手を素早く動かして目玉に照準を合わせ、次々と針で目玉を打ち抜いていく。

足元にいる目玉は踏みつぶした。気持ち悪いと感じるのは変わらないが、それで戸惑うことはもうしない。

目に留まった目玉を次々と潰し、そして、残るは部屋の中央にある巨魁だけとなった。


巨魁に近づいていくと、異変を感じた。

最初に見たときは目玉が沢山あったはずだが、今は一つもない。

体が透けていて、中に紺色の玉があることに気づく。それは目玉ではなく、サイズも小さい。さっきまで潰していた目玉は赤子の頭くらいのサイズなのに対し、目の前にあるのはピンポン玉くらいのサイズだ。


少し様子を見ていると、巨魁が見る見るうちに小さくなり、手の平サイズとなった。

他の悪魔と違い、粘度の高い液体でできた体をぷるるんと揺らす。



…スライム、だと…!?



丸いフォルムに揺れる体。それはまさしくスライムだ。


こんな地獄にスライムがいるわけない、さっきの怪物の一部だ、そんなことわかっている。

体をぷるるんと揺らし、少しずつこちらに近づいてくる。また体に取り付く気か。


……だが、もう攻撃することができない。


だって、見た目可愛いもの!

表情はないけど、ぷるるんと揺らす体からは小動物を連想させる。そして多分、俺を見て微笑みかけている!


地獄にきてずっと欲していた癒し! もう我慢できない!



俺はスライムをそっと掬い上げて抱きしめた。




見た目は普通のスライムですが、今の主人公にとっては小動物と同じ可愛さ。

癒しアイテムゲットで冷静になるかと思いきや、暴走する未来しか見えない…

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