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神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
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神の雷5

「ぐおっ!? こりゃあ身震い一発で全部もってかれるぞ? なんつー化け物だよありゃあ!」


「ぐだぐだ言わずに集中なさい! とは言え……確かにこれは……? 歌が……聞こえる……? なるほど……そういう事ね!」



……



「兄者、この歌は……」


「ああ、水の国の奴等じゃな、あの巨大な根を通じて流れてきやがる……恐らくユグドラシルの仕業じゃろう、丁度いい、この歌は結界を強くする、そんじゃあ景気よく新型の試運転といくかぁ!」



……



「この歌ハ……そうか……目覚めたカ! 力が漲ル……!」


「フレデリック! 行って! いつの間に来たのか知れないけど力強い味方が来てたものね……さぁて! おかーさんが頑張ってるのに娘が頑張らないでどうすんの! 気合入れるわよぉ!」



……



「皆の力が集まって来る! これなら……!」


 期待に満ちた表情で複合結界を見上げるノルン、水の槍が、岩の杭が、光の剣が、輝く防壁が巨人の体を拘束し、自由を奪ってゆく。

 誰もが成功を確信したその時、巨人が水を撥ねる野生動物の如くに体を震わせ、体を拘束するそれらが呆気なく砕け散る。


「そんな……!! 時間は!? あと……10秒……! もう少しなのに……!」


 よろめき、膝をつきそうになるノルン、が、結界の破片を振りまきながら再び歩き出そうと足を踏み出した巨人が、大きくバランスを崩しその場に膝をつく。


「すぐニ再生するのだロウが……絶えず燃やし続けれバ動けまイ!」


 立ち上がろうと再度踏み出した足を燃やされ、膝をついた巨人がそのまま倒れ込む、すぐさま再生し新しい足が構築されるが、フレデリックの放つ炎が立ち上がる事を許さない。

 皆が固唾を飲み見守る視線の先で、突如天が割れ、目が眩まんばかりの光の束が降り注ぐ……天から大地へと突き立てられた巨大な四振りの光の剣が巨人を囲み、自由を奪いその場に封じてゆく……。


「よかった! 何とか間に合っ……えっ……!?」


 安堵の溜息をついたノルンの目に映る目を疑うような光景、神々の叡知の結晶たる最終兵器である封緘結界、神界の技術の粋を集め作られた、武神さえも易々と拘束する脱出不可能なはずのその結界が、巨人が振った右手の一振りで軽々と掻き消されたのだ。

 失った足を再生しつつ、尚も這って移動をしようと巨人は暴れ続ける。と、にわかに空が曇り始め、先程までとうって変わり不穏な空気が辺りに立ち込める……そして、先程まで巨人が居た封緘結界の名残のあるその場所に、大地と空を繋ぐ……いや、貫くような巨大な雷撃が撃ち落とされる。


「……!! あと……あと2秒早ければ……ユーマ……ティリス……!?」


 地上に堕とされた神のいかずち、それを見て奥歯を噛み締めたレイアが違和感に気付く、雷撃が……消えない? このような長時間に渡り発動し続ける代物ではないはず……ならば……なぜ……?


「ぐっ……ううぅ……せ、折角……皆が作ってくれたチャンス……! わた……っ私が! ここで!」


 天から降り、大地を穿たんとする雷撃が、ノルンの持つ女神の杖に吸い込まれるように吸収されていく……バチバチと空気を弾く音が響き、その髪が、柔肌が焦げるのも意に介さずノルンが震える手を、膝を叱咤し、掲げた杖を巨人に向かい思い切り振り下ろす。


「清浄なる光……闇を払う刃……し……神罰必滅……神の名に……おいて邪悪を……祓わん……! 『神威カムイ』!!」


 瞬間、視界が、世界が光に包まれる、音を置き去りにした閃光と衝撃波が突き抜けた後に、全身から煙を上げ、焼かれ崩れかけた巨人がその場に立ち尽くしていた。


「いよっし! ようやく動きが止まった! 今がチャンスだ!」


「うあぁぁ……しっ死ぬかと思ったぁ……ふっ……フリードさん! 私のおへそちゃんとありますよね!?」


 辺りに充満する黒煙を貫き、飛竜を駆るフリードとラスティが現れる、一直線に巨人の額に向かい突進してゆく飛竜に向かい、死に体に思えた巨人の瞳が紅い光を放つ。


「っちいっ! まぁだ息があんなぁ! ラスティ! 結界だ!」


 巨大な咆哮と共に凄まじい炎が巨人の口から放たれる、ラスティが創り出した結界が炎を受け止めるが、炎の嵐が結界ごと全てを呑み込んでゆく。


「フリードさん! さっ……流石にこれは無謀ですって! 結界が……!!」


 何重にも重ねられた結界が薄氷を割るように一枚、また一枚と割り剥がされてゆく、目の前に迫る炎にぎゅっと目を閉じたラスティがおそるおそる目を開く、と、目の前では飛竜が二人を庇い身を盾にし炎を突き抜けようとしていた……。


「お前……! ああ、そうかい相棒、ありがとよ! 先に行って待ってろ! 俺もすぐに行ってやる!!」


 飛竜が最後の力を振り絞り尻尾を振るい巨人に向かい二人を投げ飛ばす。


「ラァスティ!! 足場ぁ!」


 投げ飛ばされた勢いのままに足場の結界を蹴ったフリードが渾身の力を込めた拳を振り上げる。


「いい加減に起きろ! こぉの馬鹿弟子がああぁぁ!!」


 空気を引き裂く音を立て放たれた拳がユーマの額にめり込み鈍い音を立て、そのままユーマを巨人の内部へと叩き込む。

 それと同時に巨人の胴に巨大な魔方陣が浮かび上がり、天を焦がす程の火柱が噴き上がった。


「ちょっ!? フリードさん!? 今の何やったんですか!? ってか中にめり込ませてどーすんですか! 折角あと少しで引っ張り出せそうだったのに!」


「ありゃちげーよ! 誰か他の奴がやったんだろ! それに額に居たユーマはありゃ魂が抜けた抜け殻だ、中に叩き込んで目を覚まさせねぇと意味がねぇんだよ! まあ、あとはユーマが自分でなんとかすんだろ」


「あ……フリードさん『ユーマ』って……」


「あん? 何だよ?」


 ラスティがくすくす笑いながらフリードを見上げる。


「いつもガキだのなんだの呼んでたのに……認めてあげたんですねぇ♪」


「ちっ……うっせーよ、あ~、もう終わりかぁ……あいつこれ以上寝坊しやがったらあの世で説教だなぁ……? ……何笑ってんだよ?」


「ふふっ……いや、なんですかねぇ、最後の最後で願いが叶ったのが嬉しいんです」


「? なんだそりゃ? まぁ、あとは他の奴等に任せるか……」

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