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神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
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神の雷4

「フリードさぁん!」


「おう、お前何で上から落ちてきてんだ?」


 落下しながら死を覚悟し身を固くしたラスティの体を逞しい腕がしっかりと受け止める、聞き慣れているはずの懐かしい声にぎゅっと閉じていた目をおそるおそる開いたラスティが、思わず素っ頓狂な叫びを上げた。


「ふぇ? はひえぇぇえぇ!? ふっ……フリード隊長!? えっ!? 何で? あっ……私……死!?」


「ちょっ……暴れんな! 危ねぇだろうが! 落とすぞこのやろう!」


 目の前の情報に混乱し手足をバタつかせるラスティ、なんとか落ち着かせようと抑え込むフリードだが勢いは収まらず、相棒の飛竜がバランスを崩し墜ちそうになる。


「てめぇが俺を呼んだんだろうが! 死にてえのか死にたくねえのかどっちだ馬鹿野郎!」


「うわあああぁん! こんな都合良い展開なんてあるはずないもん! だって……だってフリードさんはあぁ! ……はっ!? まさか偽者!? 卑怯です! こんな幻覚見せて私を惑わそうとして!」


 一向に静まる気配のないラスティに業を煮やし、フリードがラスティの四肢をを拘束し耳元でボソボソと何かを囁く、一瞬動きの止まったラスティが顔をみるみる間に真っ赤に染め、両手で顔を隠してその身を縮める。


「よーやく大人しくなったか! 全く……手間かけさせやがって……」


「ほんとに……? ほんとのほんとにフリードさんですか? 偽者じゃないんですか?」


 ラスティが尚も赤いままの顔を隠したまま指の隙間からフリードを睨む。


「なんだ? まだ信用しねぇってーならあれとかこれとかまだまだネタはあるぞ?」


「あ~っ! 分かりましたよ信用します! ってか何で死んだはずのフリードさんが……って……あれ……?」


 魔力が枯渇した状態で暴れたのが悪かったのだろう、ラスティの視界が白くぼやけ、意識が闇の向こうに掻き消えそうになる……。


「っとぉ、そういやババアが面倒くせぇ体質になってるっつってたっけか……魔石なんざ今は……チッ……仕方ねぇな……」


 フリードがナイフを使い自身の胸を切り裂くと、その傷の中にラスティの手をねじ込む、暫くして意識を取り戻したラスティがフリードの胸を貫く自身の腕を確認し、状況を理解できずに再度暴れ出した。


「ちょっ!? フリードさんなんで上半身裸……ってぇ? 傷っ! 胸っ!? えっ? 何が? ふぇえ!?」


「だから落ち着け! 魔石が割れちまうだろうが! 全く……てめーはいちいち落ち着きがねぇな!」


「はぇ? あ、魔石……? って……えぇ……?」


 ようやく現状が理解できたのか、ラスティがフリードの体内に突っ込まれた自身の腕とフリードの顔を見比べ溜息をつく。


「この通り、今の俺は魔石で動いてる生体人形つくりもんだ……割るんじゃねぇぞ? 割った時点で即終わりだかんな?」


「一体どういう事かは分かりませんけど、生きてまた会えたならいいです……魔力の補充もありがとうございます、けど……これ抜いたら多分私死んじゃいますよね?」


「っつーか俺の魔石も消耗してっからどっちにしろお互い長くはもたねーな……まあ、互いに拾った命だ、最期くらい有用につかわなきゃなんねーだろ?」


「はぁ……フリードさんらしいですねぇ……ですけど最期の最期でこういうシチュエーション、ロマンチックな言葉の一つも出ないもんですか? 少しは気を利かせるものじゃありません?」


「なんだよ? ってーと何か? 恋愛小説にでもありそうな歯が浮くような台詞でも言えってか? 柄じゃね~よ……うおっとぉ!?」


 飛び回る飛竜に気付いたのか? 巨人の腕が横薙ぎに伸び来たりフリードの頭スレスレを通り過ぎる、ほっと一息つくのも束の間、下から上からと連続した攻撃がフリード達目掛けて繰り出され、飛竜が右へ左へと右往左往飛び回る。


「チッ……完全に狙われてんな……どうにか頭まで行きてーんだが……」


「ユーマ様の所ですか? 流石にこの状態じゃ……動きさえ止まってくれれば……? 何? これ? 背筋がゾクゾクって……? 下で……何かが……?」



……



「巨人が立ち止まった……今がチャンスね、さ~て……グレッグ、いくわよ?」


「全く……人使いが荒いねぇ……ほんと……んじゃ体が回復したら再戦、忘れんなよっ!」



……



「私の結界とフレデリックの炎……これでどれだけ足止め出来るかは分からないけど……やるしか無いわね」


「出来るだケやってみよう、っ! ……なんだ……あれハ……? ユグドラシルの……根……!?」



……



「ガハハ! 儂の結果装置を見ろ! 聖地の魔力で動く実質永久装置じゃ!」


「甘いのぉ兄者、儂のは更に加速装置ブースターを備え付けた上位互換……むぅ……なんじゃあ? これは……歌?」



……



「妾に出来るのはお膳立てまでじゃ、さて、水の国の魔王よ、病み上がりじゃが大丈夫かの?」


「えぇ、フレデリック様の力になれるのであれば喜んでこの身を捧げましょう、我ら水の民、非力なれど精霊の扱いには長けております、我らの歌が必ずや皆様の力となるでしょう」



……



「えっと……スティーブ、この根に向かって結界を放てばあの巨人に届くって事でいいんだよね?」


「左様でございます、さあ、刻限まであと少し、正念場ですぞ!」


「皆の者! いいか? 遥か北の大地に立つあの巨人、今止められなければ帝国の! いや、世界の未来は無いと思え! 帝国の誇りにかけ皆全力を尽くせ! いくぞぉ!!」



……



「キリアが指定した時間まであと1分……! ……? なに……? これは……巨大な魔力のうねりが……!」


 空気を震わす巨人の物とは違う巨大なうねり……この地に迫る何かを感じ、巨人を見上げたノルンの視線の先で、巨大な水の槍が、岩の杭が、光の剣が……巨人の体を貫きその場に磔にした。

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