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神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
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神の雷

「ノルン、どうだった?」


「はい! 封緘結界と神の雷、きっかり三十分後に起動させてくれます!」


 待ちかねたように駆け寄るレイアに、ノルンが親指を立てて笑いかける、が、二人で巨人を見上げ同時に溜息をつく。


「あとは……あれの動きをどう止めるかね……」


「あっ……先輩知ってたんですか?」


「結界も雷も範囲が限定される上にこっちはあっちの365倍速、的がでかいっていっても動き回られたら当てるのは流石に無理だからね……」


「我々デ……どこまで出来るかカ……」


 三人が遙か見上げる先に巨木のような足を踏みならし、闇を纏いし巨人が進撃を続けていた。



……



「さて、ちょっと気が済んだわ、あなたもここまで完膚無きまでにやられたら懲りたでしょ?」


「クレア……お前今まで手ぇ抜いてやがったな……あっ!? いづっ! ああぁぁ……こっちの方が段違いじゃねぇか……」


 瓦礫の山の上に大の字に伸びているグレッグ、その傍らでクレアがいい運動をしたとばかりに爽やかな笑顔で伸びをする。


「いい女ってのは隠し事をするものよ、で、さっきから煩いあの大きいのは何かしら?」


 クレアが指差す先には異形の巨人が町を破壊しながら迫っている。


「ありゃあフラメル爺さんの夢なんだとよ、膨大な魔力の渦の中に全人類の魂を巻き込んで、一緒に神界にご招待って寸法らしいぜ? まあ、あそこまでのもんになるたぁ俺も思わなかったがな」


「……あそこ……多分ユーマが中に居るわね……それに勇者の加護を持ったティリスって子……そういう事ね……フラメルもあの中かしら……?」


「まあ、そういうこった……だが、あんなもん止めれる奴なんか居やしねぇよ、俺はもう満足した、あとはアレに乗って神界に行くのも悪かねぇな」


 大きな溜息をつき眉間を押さえるクレア。……と、突然拳を握りグレッグの顔面目掛け渾身の力で振り下ろす。


「……!! こっ……殺す気かこの野郎!」


「あなたじゃないわよ、こっち、今更あなたの命を取ってどうなるっていうの?」


 グレッグの頬スレスレを掠めたクレアの一撃が瓦礫を貫通し、遙か地中まで一直線に穴を穿つ……クレアが指差すその穴の底から僅かな、か細い声が響いた……。


「……~ぃ……レア……クレア! おぉ、助かった! どこもかしこも瓦礫塗れで何処に出れば良いかわからんでの、ようやく地上に出られたわ」


「あなたに渡された種を蒔きながらここまで来たけど、どうやら道は通じたようね?」


 穴の奥底から植物の根らしき物が伸び来たり、より合わさってユグドラシルの姿を形作る。


「やれやれ、それにしてもここは寒いのぅ……途中で何度も駄目かと……」


「世話話はいいでしょう? わざわざ私の所に出て来たんです、何か伝えたい事があるんじゃなくて?」


「おお! そうじゃ! あの駄女神共の元に行こうとしたんじゃが岩盤が邪魔で出れんでの。じゃが声だけは聞こえた、何でも今から半刻ほど後にあの新米女神が何かをするらしい、その為にあの巨人の動きを止めねばならんのじゃと!」


 クレアが見上げる巨人の頭部は雲の中に包まれ様子が知れない、あの巨体を、止める? どうやって??

 クレアが眉間を押さえもう一度盛大な溜息をつく、そしてユグドラシルとグレッグを見、覚悟を決めたように拳を握る。


「さて、それじゃ私達三人で頑張ってあれを止めましょうか」


「……!? ちょっと待て、俺もか!? 全身何ヵ所骨折してると思ってんだ? 年寄りに無茶させるんじゃねぇよ!」


「減らず口叩けている内は大丈夫よ、それにいつもの勝負時の約束『負けたら相手の言うことを何でも一つ聞く』。忘れてないわよね?」


「お前そんなカビが生えたような昔の約束……」


 口を開いたグレッグの眉間に再びクレアの拳が振り下ろされ、紙一枚の所で静止する。


「……いいからガタガタ抜かさず手伝え、いいな?」


 あくまでもにこやかに、そして有無を言わさぬ口調にグレッグが息を吞み黙り込む。


「私達はいいとして……女王様はどうかしら? 根の先では力の半分も使えないでしょう?」


「ふふん、妾を見くびってもらっては困るのぅ、心配せずともドライアドにはドライアドの戦い方がある、とくと御覧ごろうじよ、じゃな。それに、力強い味方も到着したようじゃ、妾は準備に戻る、健闘を祈るぞ」


 言うが早いかユグドラシルの姿が元の根へとほぐれ、そのままだらりと沈黙する。


「今のが木の国の女王か……またとんでもない知り合いが居たもんだな」


「長く生きてると色んな知り合いが出来るものよ、あなたみたいに引きこもってなければね」


「か~っ! 厳しいねぇ……ってかよぉ? さっき聞き間違いじゃなければ妙なこと言ってなかったか?」


「妙なこと?」


 クレアが小首をかしげ考え込む。


「だから、女神がどうこうって話だよ! どういう冗談だよ?」


 グレッグの言葉にキョトンとした表情をしたクレアが、肩を震わせ盛大に笑い出す。


「なっ、なんだぁ? 何がおかしいってんだ」


「あ~……いやいや、確かに普通は信じないわよね、感覚が麻痺してたみたい……本物の女神様よ、それは確か、そして……」


「そして?」


「私の大切な息子の、大切な大切なお嫁さんよ♪」

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