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神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
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終末の巨人6

「ちょっとノルン! 廃教会まで行けってどうすんの?」


「神界のキリアに助力を頼みます……」


「なっ!? そんな事したらすぐに創造神のじじいに見つかって……」


 言いかけたレイアがノルンの瞳と巨人を見比べ押し黙る。


「見つかったラ……不都合ガ?」


「神界の役割の話よ……神界の役割は数多の世界のバランス調整と発展……。そして、バランスが崩れ暴走を始めた世界の『廃棄』よ」


 苦々しい表情で絞り出されたレイアの言葉にフレデリックが絶句する、今まで考えもしなかった、漠然と神々は我々を見守って下さっているという期待、幼子が親に寄せる盲信に似た感情、それが根底から覆される。

 自分達にとって唯一無二のこの世界も、神界にとってしては無数にある管理世界の一つに過ぎないのだ……。


「つまりハ……あの巨人ガこの世界のバランスを揺るがしていル……と」


「ユーマ自身の能力の時点で完全にバランスは狂ってたんだけどね、だからこそ慎重に事を進めて、あわよくばユーマを神界に連れて行ければ……って思ってたんだけど……」


「言ってはなんですが……敵方が大罪を集めていたのは私にとっては僥倖でした、約二年という期限の中で何処に居るか分からない大罪の持ち主から合意を得た上で大罪を受け取る……粗方集めてあるのならば横からそれを奪えばいいのですから……」


 フレデリックが何か言いたげに口を開き、そしてノルンの表情を見て口をつぐむ……。誰も彼もがこの世界を守ろうと、この世界に住まう民を守ろうと必死だったのだ、その一点に対し嘘偽り無いことは明白であった。


「……だが……何故他の神々ニ露見するリスクを冒しテまで……?」


「ここまでの事態になればどちらにしろ早晩この状況は露見します。むしろ……今この時にこの世界が消失しない保証なんてどこにもありませんから……」


「ここからはどうあの巨人を操っている奴を倒してユーマ達を正気に戻すか、そしていち早くユーマを神界に連れて行きこの世界を正常に戻すか、そういう戦いよ、その為には多少リスクを冒してでもあの巨人を止めてしまうのが先決、多少荒っぽくしてもあの子達ならびくともしないわ」


 話す間にも巨人は大地を揺らし、町を踏み潰しながら進撃を続けている、フレデリックは少し伏し目がちに何かを考え、そして改めて前を向き力強く走り始める。


(……つまりはこの戦いが終われバ……)


 胸に宿る僅かな痛みを振り払うように、歩を進める速度は速く、より速くなっていった……。


……


「ここです、二人は誰も来ないよう見張りをお願いします!」


「私も一緒じゃなくて大丈夫?」


「……先輩、忘れてるかも知れませんがあっちでは先輩が失踪してまだ数か月です、キリアの怒りが収まっているとでも?」


「……私が居ることは伏せておいて頂戴」


 半ば崩れた教会内の石造りの聖堂にノルンが駆け込みガタガタと女神像を激しく揺らす。


「キリア! キ~リ~ア! まだ定時前だから居るでしょ! 返事して!」


「……人の子よ……聖なる像への無礼な振る舞い、神罰が……ってノルン様!? どうしたんです!?」


 女神像が光を放ち、ノルンに瓜二つの姿の女性が飽くまでもにこやかに、だが深い怒りを笑顔の奥にたたえ天から舞い降りる。が、ノルンの姿を確認したその表情が驚きに変わり、慌てるままに変身が解けいつも通りのキリアの姿が現れた。


「良かったぁ……居たぁ……キリア! 急いでお願いしたいことがあるの!」


「へっ!? いやっ、お願いって……って何でそんなにボロボロなんですか! 例の少年は……!? えっ……? ちょっ……!? はあああああぁぁぁあぁ!?」


 キリアが状況の確認をしたのであろう事が反応からつぶさに見て取れる、ノルンが盛大な説教を覚悟し、目を閉じ身を固めるが、いつまで待っても予想された反応が来ない。


「えっと……き……キリア? って気絶しちゃ駄目! 早く起きてよ! 急がなきゃなんだから!」


 目を開けたまま半分魂の抜けたキリアを揺さぶり、何とか意識を取り戻させる。と、一拍遅れて盛大な怒鳴り声が聖堂内に響く。


「なっ……何やったらこういう事になるんですか! えっ? 何? こんな化け物どうやって……ってかこーゆーの前にも……ああぁ……この世界もう本当になんなのよ……」


 うな垂れるキリアの肩を掴みノルンが力強く顔を上げさせる、何か言いたげなキリアだったが、覚悟を決めた様子のノルンの表情に思わず息を吞み背筋を正す。


「キリア、あれの動きを止めなければいけないの、封緘ふうかん結界と神の雷の準備を」


「えっ!? あれを使ったら非常警報出てしまいますからすぐに警備どころか創造神様まで情報が回りますよ!?」


「いい、仕方ないわ、罰を受ける覚悟はある。最悪、この世界と心中してもいい、だから……お願い!」


 焦り、止めようとするキリアだが、ノルンの強い意志を込めた瞳を見つめ諦めたように溜息をつく。


「いいですよ、分かりました、駄女神がちょっとの間にまあ成長しちゃって……。ですけどね、これ私の査定にも響くんですからね! 貸しですよ!」


「うん! ありがとう!」


「それでは準備をしてからあちらに戻り即座に起動します、結界からの雷撃はそちらできっかり30分後、どれだけ急いでもこれが限界です、あっ……あと、こちらが起動する際に対象の動きをきちんと止めておいて下さいね!」


「はぇっ!? あれを……止め……!? ちょっ……キリア!?」


 言うが早いかキリアの姿が掻き消え、引き止めようとした手を伸ばしたままノルンが床に膝をつく。


「あ~っ!! もう! やるわよ! やってみせるわよ! ご主人さまのためだもん!!」


 ノルンが自らの両の頬を挟み込むように叩き、聖堂内に派手な音が響き渡る、ヒリヒリと熱を帯びる頬をさすりながら立ち上がったノルンが、力強い足取りで聖堂から駆け出していった……。

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