表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
82/98

終末の巨人5

「いい? はっきり言って状況は絶望的よ、あいつはユーマとティリスが作ったこの空間を支配して精霊を強制的に隷属させてるの、自らに接している魔法はともかく、放った時点で魔法の支配を奪われるわ、その上隠蔽魔法で本当の姿は見えてない……」


「あ~……それで最初に攻撃が当たらなかったのか……まあ、どうにかなるだろ、結界は頼んだぞ!」


「どうにかって……あんたねぇ……」


「ふむ……今生の別れの挨拶は終わりましたか? それでは改めて……」


 フラメルの手から放たれた火球が縦横無尽に空間を飛び回り二人に向かい襲い掛かる、マリアが展開した結界が紙のように貫かれるが、それによって出来た刹那の隙を縫いダリスが不自由な足を押して火球を躱す。

 フラメルがその様子を感心したような表情で眺めるが、やがて口の端を歪め、右手に握った杖をゆっくりと宙に翳してゆく。


「あ~、増えたな……いくつあるんだ? 四つ……五つ……いや、もっとか?」


「案の定っちゃ案の定ね……で? どうにかしてくれるんでしょうね?」


 ジト目で睨むマリアに笑顔を返し、ダリスが壁を背にし、どっしりと腰を落とし槍斧を構える。


「おや、諦めましたか? いいでしょう、跡形も残さず消滅させてあげましょうか」


 フラメルの振り下ろした手を合図に、辺りを飛び回っていた火球が一斉に二人に向かい襲い掛かる、咄嗟にマリアの展開した結界を存在しないかのように突き破り、着弾した火球が凄まじい爆炎を上げる。


「女神様……罪深き彼等の魂をお救い……? むぅ……?」


 祈りを捧げようとしたフラメルが爆炎の向こうから突き出す槍斧を目に留め、眉根を寄せ注視する。


「なっ? 何とかなっただろ?」


「あんたねぇ、出来るようになったならなったって言いなさいよ! 心臓に悪いでしょうが!」


「……どうやって躱したか分かりませんが、往生際というものは大切ですよ!」


 再びフラメルが杖を翳し、周囲に無数の火球が現れる、翻す杖に合わせ襲い掛かる火球が二人に襲い掛かるが、その全てがダリスの振るう槍斧に防がれ、斬られ、叩き潰される。


「……!? 馬鹿な……! しかし防戦一方では好転はしませんよ! このまま磨り潰して差し上げましょう!」


「そうね……でも、あなたもユーマからの力が大きすぎて持て余しているんでしょう? それに、私達だけでここに来てる訳じゃないのよ!」


 マリアが叫ぶと同時に、空を裂く凄まじい音と共に空間内に雷が降り注ぐ、同時にフラメルの姿が掻き消え、それまでと全く違う場所に突如としてその姿を現わす。


「くっ!? 一体何が……? !! 隠蔽魔法が……!」


「ようやく姿を現したわね、あんたを倒せばユーマもティリスも元に戻るでしょ! 覚悟しなさい!」


 杖を突き付けドヤ顔をするマリア、だが、落ち着きを取り戻したフラメルが不敵な笑みを浮かべる。


「……ふっ……ふふふ……少々驚きましたが協力者がいれば纏めて叩き潰せば良いこと、私の崇高な使命の前には全ては些末な障害です、現にあなた達に出来るのは守ることだけ、私をどうにかしようだなんて無理な話でしょう?」


 フラメルの言うことには間違いは無い、現状、ダリスの負傷により機動力は失われ、マリアの魔法は放つ先から奪われる、守りに徹するとしてもこちらから攻撃する術は……。


「……あるわよ、ダリス、あいつを倒す方法……けど……」


 ダリスの背からマリアが囁く、その肩を握る手に篭もる力の強さを感じ、ダリスは微笑み、穏やかな声で言葉を返した。


「いいよ、やってやれ、このままあいつの思うとおりになんてさせてやっちゃいけない、それに……」


 ダリスがマリアを見、ニカッと笑う。


「お前と一緒なら地獄の果てでも楽しそうだ、どこまででも付き合ってやるよ」


 フラメルの振るう杖から無数の火球が放たれ矢継ぎ早に二人に向かい襲い掛かる、だが、その全てがダリスの鉄壁の守りの前に斬り捨てられ、掻き消されてゆく……。


「くっ……小賢しい……ですが所詮悪足掻き、このまま攻め続ければ……!?」


 一瞬、フラメルの背に寒気が走った、その覚えのある感覚が何なのか、何を感じそれを体感したのか、巡る記憶の中に戦姫と呼ばれたかつての教え子を思い出す、その感覚が『恐怖』であると分かった時には、マリアの全身から迸る魔力がその空間の全てを支配していた。


「なっ!? そ……そのような力をどうやって……! そんな規模の魔法がこんな短時間で……!」


「精霊ってのはねぇ! なにも言葉の詠唱や陣に頼らなくても接し続ける事で詠唱の代替になる事があるのよ!」


 マリアが渾身の力で地面に杖を突き立てる、と、不死鳥の杖にはめ込まれた魔石達が砕け散り、そこから発生した光が空間内を埋め尽くし巨大な魔法陣を描き出す。


「さ~て、いくら魔法の支配が奪えるっていっても私の手から離れなければ無理でしょう? 精霊が見てきた私達の十五年、全部纏めて叩き付けてあげる!」


「……叩き付けるって言うとなんかちょっと……それと、十七年だな、初めて会ってからだと……あだっ!」


 ふくれっ面のマリアがダリスを小突き、それに対してダリスが笑顔で応える、二人とも、不思議と恐怖は無かった、ただ、いつものように、事も無げに、マリアは両手を杖に翳し言葉を放つ。


「我、精霊術師マリアの名において終焉の業火をここに顕現す、全ての悪しき者に等しく滅びを与え、全ての魂に救いを与えよ!! 『滅儀怒メギド!!』」


 フラメルの行った最期の抵抗、火球を放ち、身をよじり逃れんとするが、放った火球は届くこと無く、分厚い結界壁に阻まれ空間から逃れる事も出来ない、恐怖に濁ったその瞳に陣の中心から一際強く放たれた青い光が見えた。


「いっ……嫌だ! こんなっ、こんな所で! 私には使命が! 女神様! 私をお救い下さい!」


「残念ね、いくら天に向けて祈っても女神様は助けてくれないわよ、今はこ~こ! 地上に降りて来てらっしゃるから」


 唖然とした表情を見せるフラメルの顔を、空間の全てを満たした光が掻き消してゆく……地平の彼方まで届く轟音と共に、世界の終末を思わせる火柱が天を焦がさんと遙か上空まで吹き上がった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ