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神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
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終末の巨人4

「魔法が……奪われたのか?」


「そうみたいね……でも一体どうして……?」


 予想外の事態にマリアが頭を巡らせるが、混乱した頭では答えが出よう筈も無く頭を抱える、その様子を見てフラメルが愉快そうに掌の上で炎を弄ぶ。


「理解が及ばぬのは当然です、私に託された崇高な使命の前にはあなた達の行う全てが児戯に等しい」


「……さっきから使命使命って、一体何をするつもりよ! 信者連れて神の国に行きたいなら勝手にさっさと行けばいいでしょ!」


「先程も言ったはずです、私は『全ての人族』を救いたいのです、我が教国以外にも迷える子羊は沢山居ます、それに……」


 フラメルの笑みに言い知れぬ不快感を感じマリアが思わず息を詰まらせる、それを意に介さずフラメルが朗々と言葉を続けてゆく。


「神々から託されたこの地、我々が離れるならばきちんと浄化せねばなりません」


「浄化……?」


「神に祝福されし我々が居なくなり、誰が悪魔の化身たる魔族を駆逐するのです? 立つ鳥跡を濁さずの諺もあります、女神様の御意志に従い地上を浄化せねば!」


「貴様……! 破壊や殺戮が女神の意思だと!? そんな訳が……」


「ダリス、言っても無駄よ、こういう狂信者には何を言っても時間の無駄、さっさと引導渡さなきゃ被害が拡大するわ!」


 強い眼差しで睨むマリアに余裕の笑みを見せるフラメル、掌の上の炎を上空に投げ上げ、改めてその手に杖を持ち直した。


「さてさて……少々お喋りが過ぎましたか、そろそろこちらからもいきますかねぇ」


 フラメルがパチンと指を鳴らすと周囲を周回していた火球が音も無く消え失せる、と、同時にその頭上にその数倍はあろうかという大きさの大火球が現れた。


「なっ……!? あんな大魔法を陣や詠唱無しでどうやって……!」


「ぼさっとしてる場合じゃない! 来るぞ!」


 フラメルが振った杖に合わせ巨大な火球が二人に迫る、マリアを担ぎ一つ目の火球を躱したダリスの目の前に、先回りするように第二の火球が現れる。


「くっ……! こいつは……マリア! 舌噛むんじゃないぞ!」


 高笑いをしながら炎を操るフラメル、襲い掛かる大火球をダリスが速度を上げて躱していく……だが、マリアを気遣ってだろうか? 反応の遅れから徐々に追い詰められ、やがて逃げ場を失っていく……。


「ふむ、存外に粘りますね……ならばこれはどうでしょう?」


 フラメルの瞳が妖しく光ると地面が脈動し、ダリスの周りに壁のようにせり上がる、バランスを崩したダリス目掛け迫る火球を、辛うじてマリアの展開した結界が弾いた。


「逃げてばかりでは問題は解決しませんよ? ……そろそろ悔い改める気になりましたか?」


「……生憎お前の信じてる女神と俺らの知ってる女神様は別人みたいなんでな、宗派替えする気はこちらには無い!」


「そうですか……残念です。嗚呼! 女神よ! 今より貴方の御許に罪深き二つの魂が参ります! どうか貴女の慈悲で! 慈愛で! 彼等をお救い下さい!」


 フラメルが天を仰ぎ祈りを捧げると、飛び回っていた二つの火球が混ざり合い、闇色のいかずちを放つ不気味な小さな火球へと変化する。


「ダリス……あれはヤバいわ……」


「あぁ……流石の俺でもアレを喰らったらヤバいのは分かる……一体どれだけの密度で魔力を込めてるんだ……」


 バチバチと空気を弾く音を立てる火球がフラメルの手を離れた瞬間、信じられないような速度で一直線に二人を貫かんと迫り来る。

 ほぼ勘と言っても良い反応で躱したダリスだが、プラズマ化した熱線の余波が空気を焦がし、ダリスの右足を巻き込み黒煙と共に焦げ臭い匂いを放った。


「ぐぅっ!? こりゃあ予想以上だな……ゲホッ、それにこの熱気、迂闊に吸い込んだら喉が焼けちまう」


「……そういう事か……なによ、そんなの……打つ手なんかないじゃない……」


 何かに気付いたのか? ダリスの肩を掴むマリアの手が震えている……ダリスは何かを言おうと口を開きかけ、もう一度真一文字に口を結ぶと、しっかとフラメルを睨み槍斧を突き付ける。


「おや……? 今ので彼我ひがの実力差は分かったと思いますが……それにその足ではもうまともに逃げ回る事も出来ないでしょう? まだ抵抗をなさる気ですか?」


 先程の火球を掌の上でもてあそびながら怪訝な顔をしたフラメルにダリスが口を開く。


「なに、こいつが不安がってるのに俺が縮こまってちゃいかんだろ、それに……惚れた女の前でくらい、格好つけないとな!」


「んなっ!? こんなとこで何を!? っ! ってか不安がってなんかないし!!」


「ハハハ! いつもの調子に戻ったな、んじゃあ……あいつを倒そうか」


 顔を真っ赤にしてしどろもどろになるマリアを見てダリスがにいっと笑う、マリアは吹っ切れたような表情でしっかりとダリスに掴まり鋭い視線でフラメルを睨み付けた。

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