王都3
「ノルン! 大丈夫!?」
「はっ……はいっ! すっすみません! 思わずびっくりしてしまって……あれが聖剣のなれの果て……ですか、あそこまで禍々しいとは……」
矢雨の如くに襲い来る影蛇の群れをユーマが食い止め弾き、斬り、跳ね返す、その隙をつきノルンが構築した結界が光の壁となり影蛇の猛攻を受け止める、構築されたその結界を見たウルグスの表情が変化し、ノルンをじっと観察する。
「ほう……聖属性の結界使いとは珍しい……厄介なのは少年だけではないということか……」
「あなたが一体何を考えているのかは分かりません! ですがこのような凶行、女神の名において看過することは出来ません!」
「女神の……?」
ノルンの言葉にピタリと動きを止めたウルグスの暗い瞳に更なる闇が灯る、先程まで落ち着いていた周囲の魔力がウルグスの変化に呼応するようにズシリと重みを増し、周囲を覆う闇を更に濃くしてゆく……。
「女神? 女神だと……? 姉上にあのような加護を押し付け見殺しにした女神が何だと言うのだ……我々は神々の玩具ではない……! 貴様らのような目の曇りきった女神の狂信者に何が分かる!!」
ウルグスの変貌に思わず目を奪われた二人の隙を逃さず、ビスクが魔剣を振るい襲い掛かる。反射的に受け止めたはずの一撃が姿を消し、つんのめったユーマのその背中に歪な刃が振り下ろされる。
「っと……危っぶない! 話に聞いてなかったらヤバかった……!」
空間の裂け目から現れた魔剣の一撃を身を捻って躱したユーマに次から次へと影蛇が、斬撃が襲い掛かる。
「……っ、なんかこっちもウルグスの怒りに呼応してるっぽいね、っとぉ!?」
「女神って言葉が出た途端の変貌ぶりが……私は何もした覚え無いんですけど……?」
「多分レイアの事だろうね、うわっと! 連れて来て引き渡したらもしかして諸々から手を引いてくれるんじゃない?」
冗談めいて言ってはいるが二人とも目は本気の目をしている、ただ、その頼みのレイアはここにおらず、例え引き渡しても問題解決に至るかは定かでは無いのだが……。
と、ユーマの気配察知に夥しい数の反応が現れ、思わずチラリと視線をテラスの方に向ける、どうやら王城の異変を察知したのか市民や兵らが城内外から移動を開始したようだ。
「さて、貴様らだけで来たわけではないようだが、城下の様子を見るに住民を気遣って行動が制限されていると見える、そのような事で私が止めれると思ってここまで来たわけではあるまい? 駒に気遣っていては将は取れぬぞ?」
「……くっ……そうだね、そう簡単にいかないだろうってのは分かってるよ……でも、もう一度聞くよ? 王国から手を引いてティリスを返す気は無い?」
「……手を引くもなにも無い、駒がいくら壊れようと我が道を塞ぐ障害にはなり得ぬ、世の全ては我が悲願を達成するための要素に過ぎぬ!」
「……わかったよ」
ユーマの言葉に被せるように上空からテラスを揺らすようなニールの吠え声が響く、同時に踏み込んだユーマの足元から光が迸り、描き出された美しい魔法陣が天を衝く光の柱を立ち上げた。
王都の四方に立ち上った光の柱を確認し、柱の交差する中心にニールが急降下しその足に握った杭を深々と打ち込む。
「ぬぅ……一体何を……!」
突然の閃光にウルグスとビスクが視界を奪われた隙に、ユーマが魔法陣の中心に剣を突き立て叫んだ。
「テイム!!」
……
「よし、ユーマ殿もラスティも無事結界を張れたようだな……」
「おぉ、坊主やりおったのぅ……さて、あとは奴さんがどう出るか……じゃなぁ」
「ニールもちゃんと打ち合わせ通りに出来たみたいですね、あ~、走ったら疲れちゃった……ちょっと魔石でもつまもっかなぁ……」
城下に散ったラスティ達の眼前では、正気を取り戻した市民達が状況を理解できず困惑した表情で顔を見合わせていた。




