里帰り3
「さて、今どういう状況でどうなっているかは大体分かりました、まさか事態がそこまでになっているとはね……」
教会の応接室に通されたユーマ達一行は、シスターの淹れてくれたお茶を飲みながらこれまでの経緯に関しての説明を行っていた。
一通りの説明を受けてからシスターが眉間を押さえながら大きな溜息をつく、国内の異変については感じ取ってはいたがまさかここまで事態が大きくなっていようとは……。高い洞察力と先見の目を持つシスターでも、流石に予測できなかったようである。
「我々はこの国の大臣、ウルグスを捕縛し真意を問いたださねばならない、何か情報があればお教え願えないだろうか?」
ミーリアの問いにシスターが困ったような顔で視線を落とす。
「申し訳ないけど役に立つような情報は無いの、何故ならここ半年は私達は村から出ることが出来ず外部からこの村に人が入る事も無くてね、あなた達の現状もようやく今知ったばかりよ」
「半年も外部と隔絶って……一体どうして……!」
ラスティが言いかけてからハッと気付いてシスターを見やる、皆からの視線を確認してシスターがゆっくりと頷いた。
「あなた達も見たでしょう? 結界の上にあった魔力線、あれが近隣の町や村に襲い掛かったのが半年ほど前、異変に気付いた隣町の方達が避難してこなかったら私達も危なかったわ」
「って事はあの大規模結界を半年も張り続けてたんですか!? あんなの並の術師じゃ制御すら困難ですし、レイア様や私でも維持できてひと月が限度ですよ?」
「あれを維持できる程の術師が何人も山間の村に集まっているとはにわかに信じがたいのぅ……」
ラスティとグローインの言葉を受け、シスターがキョトンとした顔でユーマに視線を移す、が、視線を向けられたユーマはユーマで肩を震わせて目をそらす……。
「あの結界は私のものですが……まぁ、確かに火の国の魔王様の作った池……今は水が無いから窪地ね、あれが無かったら厳しかったかも知れませんね」
「なるほど、あの窪地に貯まった雨水を利用して……となると、クレア殿とどなたかが交代で張っておられるのだな?」
「だとしてもここまでの結界張れる人が田舎に複数居るって王国はどれだけ層が厚いんです? 万一そういう人とやり合うとかなったらそれこそユーマ様が相手しないと厳しいですよ?」
「あらまあ、ユーマったら皆から信頼されてるのねぇ、なんだか私も嬉しくなっちゃうわ、でも皆の口ぶりだと今なら良い勝負になりそうな感じね? 後で手合わせお願いしようかしら?」
にこやかな笑顔で言い放つシスターの言葉に、ユーマが口を付けていた紅茶を盛大に吹き出す、襲い掛かる液体をラスティが慌てて躱し、咽せるユーマの背をノルンが心配そうにさする。
「げほっ……シスター、悪い冗談はやめてよ……」
「なんじゃあ? クレア殿も冗談が上手いのぅ」
「そうだよ、僕が全力でやってもシスターに敵いっこないんだから」
「そうそう、ユーマ様が全力でやったところで……へっ?」
皆の目が点になり、ゆっくりとユーマとシスターを行き来する、まさか? 冗談だよな? といった意識が顔に出ているのを見てノルンがクスクスと笑い始める。
「今はどうかは分かりませんけど、ご主人さまが勝てないって思うのも無理も無いかもしれませんね、毎回派手にふっ飛ばされちゃってましたし」
「ちょっ……! 恥ずかしい話はやめ……ってかノルン見てたの!?」
「私は神界に居たときからご主人さま一筋ですから!」
胸を張って得意顔のノルンを、各人が複雑そうな顔で見つめる、まさか敬愛するべき信仰の象徴たる女神様が、こうも私欲に塗れた俗な存在であったとは……。だが、それを隠しもしない部分も含めてこそのノルンなのだと、妙に納得させられる部分があるのも確かではある。
皆が曖昧に笑う中、ふとミーリアが何かに思い当たった様子でシスターの顔を観察する、幾度となく視線を落とし考え込みシスターの顔を確認するを繰り返し、やがて玉のような汗を額に浮かべ震える手でシスターを指差す。
「あっ! ミーリアちゃん人を指差すのはいけませんよ! クレアさんにしつれ……」
「あああぁぁぁ!! 思い出した! マスタークレア!!」
「あら? 古い名前をご存じなのねぇ、何十年も前の通り名をまさかここで聞くとは思わなかった……というか、懐かしいとか思っちゃう辺り私も年をとった証拠ね」
クスクスと笑うシスターに真っ青な顔をしたミーリア、見ればグローインもあんぐりと口を開けたままでシスターの顔を見つめている、事態を理解できていないユーマとラスティが何事かと顔を見合わせた。
暫く引っ越し等重なるため更新ができません、暇を見て更新したいと思いますが、暫くお待ち頂けたら幸いです(´・ω・`)




