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神域の従魔術師  作者: 泰明
王国の闇
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里帰り

 雲一つない晴天の空に、突如として魔法陣が描かれ、陣の中から二人の女性が落下してくる。


「へっ? あれっ? ニールは!? どこ? ふあっ!? ってか海の上!?」


「だから話を聞けって言っただろうが! 高速で移動する物体に転移したらラグの分ずれるのは当たり前だ! ひっ! わっ私はっ! 泳げないんだぞおおぉぉぉぉ!!」


 パニック状態で落下してゆく二人がぎゅっと目を閉じた瞬間ふわりとした感触と共に何かに受け止められる、落下の浮遊感が無くなったことに気付いたミーリアが恐る恐る目を開く。


「ふにゃぇ? あ、地面?? あああぁぁぁ……助かった……」


「ラスティさん? ミーリアさんも……いきなり空から落ちてきて一体どうしたの?」


 足下の固さを確認するかのように這いつくばって頬ずりしていたミーリアが、かけられた声に弾かれたかのように飛び退き姿勢を正して直立する、さっきまでの様子とのギャップと、真っ赤に染まった顔を見て堪らずラスティが笑い出す。


「ぷっ……くくく……み……ミーリアちゃん、そこで取り繕っても……くくく」


「うっ! うるさい! 元はと言えばお前が……! あっ、し、失礼した! ユーマ殿、レイア殿の命により我等二人、ユーマ殿へのサポートの為に馳せ参じました!」


 二人を見てポカンとした顔をしていたユーマが、ようやく事態を把握したようで頭を下げる。


「二人共来てくれてありがとう、でもびっくりしたよ、ノルンが気付いてくれなかったら危ないとこだったね」


「お二人とも無事でなによりでした、でも、なんでいきなり空中に?」


 首をかしげるノルンに二人が気まずそうに形ばかりの笑みを浮かべる、ふと、何かに気付いたミーリアが周囲をキョロキョロと見回し始めた。


「そういえばグローイン殿も同行していると聞いたが……」


「なんじゃい、騒がしい! 儂はここにおるわい! ……うっぷ」


 背後から響いた声に振り向くと、青い顔をしたグローインが毛布を手にヨロヨロと立ち上がる所だった、が、すぐさま膝が震えだし、そのままその場に尻もちをつく。


「グローインさんお久しぶりです~、ってあれ? なんか調子が悪そうですけど??」


「……まさか歴戦のドワーフ王が空が怖いとか言わぬよな?」


 視線を投げかける二人から目をそらし、グローインが頭を掻き毟り大きなため息をつく。


「ふん! 恐ろしい恐ろしくないの問題ではないわ! まず第一にこんな巨体が空を飛ぶっつうのが異常じゃ! それもこの様な雲に近いような場所じゃと!? 落ちたらどうする! こんな環境で悠長に構えておられるか!! それになんじゃ! 人を馬鹿にするように言うて貴様も水に怯えて取り乱しておったではないか!」


「なっ! ……そ、それはそれだ! 第一いきなり海の上に放りだされて取り乱さない方がどうかしてるだろ!」


「二人共喧嘩はよしましょう、ミーリアちゃんも興奮しないで……」


「誰のせいで醜態を晒す羽目にあったと思ってるんだ!」


 顔が触れんばかりの剣幕で詰め寄るミーリアに流石のラスティもジリジリと後退り、ユーマを盾に背に逃げる。


「まあまあ、もうすぐ王国に着くから喧嘩はやめよう? 無事合流できたんだからさ」


「そうですそうです! 終わりよければ全てよしですよ!」


「っ……お前はな……はぁ……確かに敵陣に入るのに争っていてはいけないな、ラスティ、いいか? これは貸しだからな?」


 念を押すミーリアの言葉にラスティが口を尖らせ手遊びを始めるが、再び目が合った際の眼光に押し黙る、その様子を見てミーリアが大きな溜息をつき目線をユーマに合わせなおした。


「さて、とりあえず状況についてのご説明が必要ですね」


「うん、帝国の方はどうなった? マリア姉さん達は無事なの?」


「私も報告を受けただけですが、皆大きな怪我は無く無事、ですが、帝国皇帝の所持する大罪は奪われ、教国側の侵攻に晒された帝国北部の町や集落は全滅の憂き目にあったと思われるとの話です……」


「そうか……犠牲がでないに越したことはなかったけど……それにこれで残る大罪は一つ……か、マリア姉さんがなにか言ってたとかはあった?」


「『教国はこっちで滅ぼすからそっちは頼む』と、ティリス様が教国に連行されたとの情報を受けたので、あちらはこのまま教国の方へ潜入を試みるとの事です、その為レイア様とフレデリック様はこのままあちらに同行、ユーマ様はこのまま王国入りして頂きウルグスの捕縛を頼みたい、と」


「滅ぼすって……無茶しなきゃいいけどなぁ……。こっちも大変だと思うけど二人とも無茶だけはしないでね? ……そういえばラスティさん、体調はいいの? 最近食欲も無かったみたいだけど」


 ユーマが遠い目をし、マリアの安否、いや、マリアの向かう先の安否について思いを馳せ、次に心配そうな顔でラスティの目を見る。

 見透かされたような、射貫かれたような気がしてラスティが思わず目をそらしそうになるが、ぐっと踏み止まり笑顔でユーマに笑いかけた、心に棘が刺さった様な胸の痛みは隠し事をしている後ろめたさだろうか? まだ幼いユーマに気を遣わせたくないと自身の現状を隠すことを選んだが、隠すことも又信頼を裏切るようで心苦しいものである。

 言い訳では無いが何か喋らねばとラスティが口を開こうとしたとき、ノルンの脳天気な声が響く。


「あっ! 町とお城が遠くに見えますよ! それに……あれは? 水のドーム? みたいなのが山に見えますけど……あれは?」


 ノルンの言葉に振り返ったユーマの動きがピタリと止まる、半円状に山を覆う巨大な水のドーム、その近くにはポッカリと抉れたような岩に覆われた窪地、見慣れぬ空からの景色だがよく分かる、街道に至る細い道、緑に覆われた山々、魔王があの日燃やした山跡の窪地、懐かしい故郷を見てユーマは握る拳に力を込めた。

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