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神域の従魔術師  作者: 泰明
帝国と教国
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聖十字教国10

「……? ……!! ダリス!! あだっ!?」


 何かにうなされるように苦しげな表情のマリアが目を覚ますと同時に勢いよく起き上がり、何者かの顎に盛大な音を立て衝突した、固いおでこに弾き飛ばされた何者かが、顎をさすりながら抗議する。


「ったぁ……何すんのよ! 痛いじゃない! 全く……固いのは胸板だけにしてよね!」


 思わず口をついて出た失言にはっと口をふさいだ相手を、マリアが狐につままれたような表情で見つめている。


「えっと……レイア? よね?」


「あは……あはは~、久しぶり~……えっと……元気してた?」


 曖昧に笑うレイアを見てマリアが何か言いたげに口を開くが、周囲の景色が目に入り弾かれるように立ち上がる。


「そっ……そうだ! ダリスは!?」


「ククク……ダリスが心配なのは分かるけどさ、少しは僕の事も心配して欲しいな~、ほら、ダリスならそこに寝てるよ」


 笑いが堪えきれない様子のアレックスに促され、ダリスが寝息を立てているのを確認しマリアがふらふらとその場に座り込む。


「アレックスも大丈夫みたいね……ねぇ、あれからどうなったの? ビスクって人形が襲ってきて……それから……一体何が起きたのか教えて貰えるかしら?」


「まあ、なんていうかね、どうも事態はあまり芳しくないみたい?」


「ったく、てめーがダリス庇うのに結界解いちまうからだろが……まあ、あの人形を仕留めきれなかった俺も同罪だがな……」


「そうは言ってもダリス居なかったらあの津波は全部は処理しきれなかったんでしょ? ねぇ?」


「確かニあれを全テとなルト私一人でハ厳しかっタ」


「ああ、フリードも無事で……って! え!? 何で半分しかないの!? って……魔王まで居るし! ちょっとまって……あ、駄目、ユーマそっくりの姿でそれはきつい、ちょ、吐く……」


 よろよろと覚束無い足取りで彷徨うマリアに、桶を渡そうと各人が右往左往と混乱する、ようやく晴れやかな表情を取り戻したマリアが、改めて皆の前で席に着いた。


「まあ、話をするとだね、マリアが魔力切れを起こして倒れちゃった後、僕がうっかり結界を解いちゃってビスクに襲われた、それを庇おうとしたフリードが真っ二つにされちゃってそのまま僕は大罪を奪われた、ここまでが僕が覚えてる部分」


「うっかり、ねぇ……ま、それでその様子を見たダリスが駆けつけたがあの人形は逃走、それと同時に教国側の超大規模魔術が発動、半分はダリスが消し飛ばしたが、食い残しがあったのをフレデリックがカバーした、ってとこだな」


 二人の話を神妙な面持ちで聞いていたマリアが、眉間を押さえて深い溜息を吐く。


「……そんな非常事態に私は暢気にグースカ寝てたって訳ね……」


「まあ、初めての魔力枯渇でしょ? なったことない事象に気付けってのも無茶な話よ、戦闘中なら特に」


「この歳になるまで枯渇を経験してないっつーのもありえねー話だがな……っつか魔力っつやぁダリスのあれ、どうなってんだ? あいつ魔力なんざ持ってねーだろ?」


 フリードが解せぬといった様子で顔をしかめる。


「ああ、あれは槍斧に秘密があってね、それ見てみて」


 アレックスが不死鳥の杖と斧槍を指し示し、フリードがフレデリックに抱えて貰いそれらを観察する。


「こりゃ……杖から魔石抜いて斧槍につけてんのか? だが精霊術師用の魔石付けた所で使えねーだろ?」


「僕もそう思ったんだけどね、マリアが『ダリスは精霊に好かれてるから必ず扱える』って、まさかあそこまでの芸当出来るとは思わなかったけどね~」


「精霊に愛されシ者……話には聞いていタガ魔力を持たずとモああまで出来るとハな……」


「愛と信頼の為せるわざってとこかしらね」


「あっ!? そんなんじゃないわよ! ただ戦う上で出来ることがあるなら全てやっておくのは基本よ! その証拠に今回ちゃんと役に立ったでしょ? ……と、とりあえずちょっと私は町の様子見てくるわ!」


 弁解に対する生暖かい視線に耐えきれず、顔を真っ赤にしたままマリアがその場から逃げるように去る、その様子をニヤニヤと見送り、小声でアレックスが話し始める。


「実はね、この槍斧に付けた魔石、もう一つ秘密があるんだよね」


「なになに? どういうこと??」


 食いつきのいいレイアの反応にアレックスが内緒だとばかりに自らの口元に指を立てる。


「この魔石は先代の炎の精霊術師、つまりはマリアのお母さんの魔石でね、ほんとにいいの? って聞いたんだけど、マリアが『母さんならきっとダリスに力を貸してくれるはずだ』ってね♪」


 話を聞いていた誰もがニヤニヤ笑いを崩さず、同じ事を考えていた。


(つまりは親公認って事ね……)


(親公認の付き合いってことか……)


(親公認カ……)


「うぅ……いたた……ん? どこだ……ここは……?」


 皆がニヤニヤと顔を見合わせる中、ダリスが半身を起こし辺りを見回す、焦点が曖昧だった視線が像を結び、アレックスと目が合ったと同時に転びそうな勢いで駆け寄って来る。


「アレックス! 大丈夫か!? どこも異常は無いか? あ……大罪を奪われたんだったな……何か体におかしいところは!?」


 肩を揺らしながらの矢継ぎ早の質問に、アレックスが目を白黒させる、されるがままのアレックスを観察するダリスの目がアレックスの足に向いた瞬間、ダリスの顔が青くなる。


「うん、まあ、そういう事だね、足が動かなくなっちゃった、でも、フリードが庇ってくれたお陰で命までは取られなかったし、女神様の治療のお陰で意識も取り戻せた、結果的に全員無事だったんだからよかったよ」


 そう言って笑うアレックスに一瞬戸惑い、ダリスも困ったような顔で笑う、そしてレイアの方を向き直ると深々と頭を下げた。


「女神様! 魔王殿! 今回の救援、及び我が友アレックスを救って頂き、真にありがとうございました! このご恩は決して忘れません!」


「あ~、『元』女神ね、御礼なら呼びに来たユグドラシルと、私と親交のあったマリアに言ってちょうだい、それに私はそんな大層な存在じゃないから、畏まるのも必要ないわ」


「そっ! そうだ! マリアは!? あいつはどこに!? 怪我とかは無いのか??」


 周囲を見回し、マリアが居ないことに気付いたダリスの狼狽ぶりに皆が肩を震わせ、アレックスが大きく伸びをしてから口を開く。


「マリアはちょっと散歩してくるってさ、まあ、とりあえずここに僕らが居たら片付けの邪魔だし、マリアも呼び戻して場所を移そうか」


 アレックスの言葉を受けてマリアを捜し駆け出したダリスを見て、皆が顔に張り付いたニヤニヤ笑いを外すのに苦心していた。

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