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神域の従魔術師  作者: 泰明
帝国と教国
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聖十字教国4

「よっ……はっ、ほっと……くそっ、ぐちゃぐちゃだな……」


 北城壁の残骸の上に降り立ち、周囲を見渡してダリスが顔をしかめる、唯一救いがあるとするならば、その場が血の匂いや呻き声で満たされていない事だろうか……。


「犠牲者が居ないってのが幸いだけど、ここまでやるとはね……異端相手には戦時協定も適応されないのかしら?」


「おやぁ? 見たことある顔がいるじゃねーか! 王国からの助っ人ってーのはお前達だったのか?」


 城壁の上から降ってきた声にダリスとマリアが弾かれたように顔を向ける、城壁の上にはローブを着込み杖を肩に担いだ白髪の老人が座っていた。老人は豊かな髭を弄りながらニヤニヤ笑いを絶やさず、値踏みするかのように二人を見下ろしている。


「久し振りだが腕は上がったか? あのヒヨッコ達がどれだけ出来るようになったか見せ……」


 饒舌に喋る老人だが、武器を構え見上げる二人を見て少し考え込む仕草を見せ、何かに気付いたように手を叩く。


「あ~……つまりあれだ、俺は今聞かれちゃならんことを『異教徒』に教えちまったって事でOK?」


「久し振りですね、師父マスターグレッグ、本日の御用向きはなんですかね?」


 グレッグは口角を上げニヤリと笑うとダリスとマリアに向けて杖を向ける。


「おいおい連れねぇ生徒だな、客員教授として戦いのイロハを教えてやった恩は何処にやったよ?」


「生憎あんたに習ったのはあんたの倒し方だけよ、怪我したくないならさっさと帰って痴呆外来に通う事ね」


「くはっ! ククク……いいねぇ、精一杯の虚勢! 先生から花丸あげてやってもいいぞ? それとも頭を撫でて欲しいか?」


 グレッグの挑発にマリアが顔を赤くした瞬間、その姿が残像を残して消え、金属音に振り返るマリアの眼前をグレッグの杖とダリスの槍斧のぶつかり合う火花が覆った。


「おや? 頭を撫でてやろうとしたのに……ダリス……男の嫉妬は見苦しいぞ?」


「相変わらず人を食ったその態度、改めて俺はあんたが苦手ですよ!」


「おいおい、教え子にそんなこと言われたら先生傷付いちゃうなっと!」


 グレッグが足を勢いよく踏み込むと、地面に魔法陣が描かれ無数の瓦礫が二人を目掛け舞い上がる。


「おーおー、昔は素直だったのに、生意気になっちゃって……」


 瓦礫が二人に襲い掛かるより一瞬早くダリスがマリアを抱えて離脱し、追跡してきた礫弾をマリアが結界で受け止めた。


「大丈夫か?」


「ええ、でも流石に化け物ね……先生やってた時よりよっぽど研ぎ澄まされてる、いや、こっちが本性か……」


 話す間もなく追加の礫弾が、岩槍が轟音を上げて襲い掛かってくる、その全てをいなし、かわし、たたき落とし、結界で防ぐ様子を見てグレッグがほぅと呟く。


「ふ~む……やるねぇ、あの頃よりは成長してるって事だな、だが……どうにも成長してない箇所があるのが残念だな」


 マリアを眺めあからさまなため息をつくグレッグを見、ダリスの顔が青くなる。


「……っ殺す!! 焼き尽くしてやる!!」


「ちょっ、待て、マリア余り無茶を……!?」


 宥めようと肩にかけた手が肉の焼ける音を立て、反射的に弾かれるように跳ね上がる、と、同時に膨れ上がった魔力の壁に押されてダリスの巨躯が浮き上がりそのまま瓦礫と一緒に吹き飛ばされた。


「おぉ~……まさかこれ程までになってるとはな、こりゃ長生きはするもんだ」


「生憎だけど今日があんたの命日よ!! 恨むんなら自分の軽口を恨むことね!!」


 マリアが不死鳥の杖を一振りすると、空中に数十もの巨大な火球が現れる、チリチリと空気を焦がす音を立てながら佇む火球が、縦横無尽に暴れ回りながらグレッグに向かい襲い掛かった。


「ほうほう、なかなかにやるじゃないか、でもこんなもんじゃ先生の髪の毛も焼けないぞ~?」


 襲い掛かる火の玉が瓦礫に阻まれ岩槍に貫かれ、グレッグに届く事無く消滅していく、追加の火球を放ち続けるも徐々に徐々に数が減らされていく……。


「う~ん、威力も魔力も申し分ないけど少々責めが単調だね、こんなテクじゃ僕を満足させることは出来ないよ?」


「だ~れがあんたを満足させなきゃなんないのよ! 満足したきゃそこらの野良犬にでも腰振ってなさい!!」


「あらら……いけないね~、女の子がそんなはしたないこと言っちゃ……おじさん萎えちゃうよ? ……っとお!?」


 グレッグが肩を落として大きくため息をついた瞬間、足元から熱気が吹き上げ周囲が炎の壁に包まれる、一瞬気をとられた隙を突き、大地から突き出した炎槍ファイアスピアがローブを縫い付け、一際巨大な火球がグレッグを焼かんと迫り来る。


「まさか三重詠唱まで習得しているとはね、だが、僕を殺るにはまだ経験不足だなぁ……」


 グレッグの杖の一振りで炎の壁が霧散し炎槍が砕け散る、併せて踏み込んだ足から地割れが走り、巨大な岩槍が四方から伸び、大火球を貫く……。と同時に凄まじい爆音と共に火球が破裂し、周囲が濃霧のような蒸気に覆われた。


「うおっ!? なんだこりゃあ??」


「三重詠唱? そんな基礎の基礎出来るのが当たり前よ! 五重でも六重でもいくらでも増やしてみせるわ!」


「当たり前ってマリア君ねぇ……普通多重詠唱を習得出来る方が稀なんだけど……」


 瓦礫を巻き上げ視界を晴らそうとグレッグが杖を構えたその時、一条の光が蒸気と共にその背を切り裂いた。

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