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神域の従魔術師  作者: 泰明
帝国と教国
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聖十字教国

 ユグド帝国客員騎士ダリス・ハワードは憤っていた、自らの脆弱さに、自らの浅慮に、自らの無力に……。

 彼の眼前には視界を覆う巨大な大地の津波……ダリスは槍斧ハルバードを構え直し、津波に向かい大地を蹴った。




「さて、国内の反乱分子は壊滅、火の国への親書も出して国民への同盟に関しての発布も終わった、よーやくダラダラ出来るかな~?」


 執務室のソファに寝転がり、アレックスがぐぅっと伸びをした、ここ最近の寝不足が祟ったかその目の下には深い隈が刻まれている。


「まだまだこれからでしょ? これから詳細も詰めなきゃいけないし、それに失脚した貴族領の取り扱いも……ここで下手な分配したら貴族間の不和や新たな反乱の温床になるわよ?」


「うぇ~……面倒くさいな……ね~、ダリス、フリード、あと任せるから頼むよ~」


「……お前事後処理殆どこっちに投げといてまだ働けって言うのか?」


「ふざけんじゃねーぞ……てめーババアよりも人使い荒ぇじゃねーか!」


 マリアの言葉に項垂れたアレックスが視線を向けた執務室の床には、資料に塗れた状態でダリスとフリードが転がっている。反乱鎮圧からの事後処理に駆け回り、城に戻っては資料の整理に報告書の作製、事件以降二人は正に目が回るような生活を送っていた。


「ったく、報告書だなんだのと……自慢じゃねーが俺ぁ始末書以外の書類は書いたことねーんだよ! やってられっか!」


「本当に自慢にならないわね……ってかフリードは騎士隊長だったんでしょ? 報告書とかどうしてたのよ?」


「んあ? そんなもん部下に放り投げりゃ誰かがやんだろが? それで分かんねぇっつーなら直接話しゃいいだけだ」


 面倒そうに答えるフリードにマリアが呆れた表情でため息をつく、その様子を眺めながらダリスがよろめきつつ立ち上がり、資料を束ねてマリアに投げた。


「まあ、でも実際事件以降働き詰めだ、出来れば気分転換でもしたいところだな」


「お!? 気分転換か! なら修練場で手合わせしようぜ! 槍斧持ったお前がどんだけできんのか気になんだよ!」


「いや、気分転換ってそういうのじゃなくてな……」


 詰め寄るフリードからダリスが逃げる、事ある度に手合わせを願うフリードと逃げ回るダリス、ここ最近はお馴染みとなった光景である。


「ダリスは気に入られちゃったみたいだね~、仲良くなれて何より何より♪」


「脳筋同士シンパシーを感じるんじゃないの?」


「とはいってもタイプは違うけどね~、フリードは武を極め魔法も操る達人、ダリスはスピードと鍛え上げた力を駆使する生粋の戦士、でも不思議だよね。ダリスは魔力が全然無いのにああいった達人ともやり合える程の力がある、一体なんでだろ?」


「単純な話魔力の無い相手とはやりづらいのよ、魔力感知に引っ掛かりにくい上にあのスピードよ? 反応できない速度で気が付いたら間合いの中に入られてるとか、初見じゃどうやっても対応のしようがないわ。あと、ああいうタイプの暑苦しい脳筋は精霊に好かれやすいのよ、良くも悪くもあの単純さが受けて精霊が寄ってくる、言うなれば体内に魔力の代わりに大量の精霊が流れてる感じね」


 マリアの言葉にアレックスが感心したように頷く、と、何やら意味ありげにマリアとダリスを見比べる。


「なに? なんかあるの?」


「いや、なんか納得したな~って♪」


 何事かと訝しむマリアを余所にアレックスは何やら機嫌良さそうにニヤニヤと笑っている。


(なるほどね~、二人の相性がいいのはマリアの中の精霊がダリスを好いてるってのもあるのか、これはますます見守りがいが……)


「陛下! 火急の用にて失礼します! 至急謁見の間にお越し下さい!」


「うぇっ? どうしたの? スティーブ、今度は王国でも攻めてきた?」


 バタバタと乱暴に扉を開き部屋に入ってきたスティーブに、のんびりした様子でアレックスが答える、荒い息を整える間もなくスティーブが慌てた様子で言葉を続けた。


「王国どころではありません! どうか謁見の間へ! 詳細はあちらで説明致します! 皆様方も出来ればご同席を願います!」


 ただ事ではない剣幕にアレックスが呆気にとられ、ソファからずり落ちる、何事かと見守っていた三人も唯々頷く他なかった。



……



「えっ? トーヤじゃない! 何でこんな所に居るの?」


 謁見の間に入ったマリアが驚きの声を上げる、トーヤと呼ばれた司祭姿の人物が声を聞いて肩を跳ね上げ、おそるおそる顔を上げた。


「えっ? えぇっ!? 何でマリアがここに居るのさ!!」


「ちょっと野暮用で滞在してるだけよ、ってかスティーブの慌てようといい、一体何があったのよ?」


「あ~……二人とも? 一応僕がここの皇帝だからさ? 僕を無視して話するのはやめよ? ね?」


 ため息をつきながら入室したアレックスに続き、ダリス、フリードも入室する、その様子をポカンとした顔で見ていたトーヤが更に混乱した様子でまくし立てる。


「えっ!? 何でダリスが居るの?? ってかそっちにいる子供は誰? えっ?? 状況が見えないんだけど?」


「あ~、まあ、事情は後で話すとしてだ、中等部で神学校に行ったきりだったか? 久し振りだな……ってかお前も何で帝国に? 出身は王国のはずだろ?」


「聖十字教国で神官になった者は中立を維持する為に生まれ育った国じゃなく他国に赴任するのが決まりなのよ、ってか学校で習ったでしょ? 忘れたの?」


「あ~……確かに聞いたことがあるようなないような……」


 謁見の間がさながら同窓会の会場の様になる中、痺れを切らしたフリードの怒号が飛んだ。


「あ~!! てめぇらくっちゃべる為にここに来たのか!? さっさと急ぎの話とやらを言えよ!!」


 フリードの言葉にハッとしたトーヤが慌ててアレックスに向き直る。


「そっ! そうだアレックス! 大変なんだ!」


「いや、僕一応皇帝だからさ、もうちょい礼儀とか遠慮とか……」


「教皇猊下が魔族と手を組んだ異端国家として帝国を破門し征伐するって宣言と触れを出したんだよ!!」


 トーヤの言葉にその場にいる全員が息を飲み身構える、少しの間重苦しい沈黙がながれ、ようやくアレックスが口を開く。


「う~ん……まさかそう来たか……」


「なんの事かは分かんねーが魔族と仲良くすんのは人界じゃそんなに罪な事なのか?」


「いや……個人間ではそういう訳ではないけど……確かに教義の中には魔族は不倶戴天の敵って内容はあるわね……」


「何分海を隔てた上で金の国を通してしか国交が無い状態だったからな……和平の使者としての来訪は今回のフリードが人界では大戦以来初に近いな」


 皆が頭を抱え考え込む中、アレックスが両手を挙げ玉座にもたれかかる。


「あ~、流石にここまでトラブルが続くと気持ちが萎えるね~、何か分かるかも知れないし、ここは情報収集の専門家を頼りますか!」


 皆が怪訝な顔でアレックスを見る中、謁見の間にある鉢植えに向かいアレックスが語りかける。


「女王様~、見てるんでしょ? なんか楽しい情報無いか教えてくれないかな?」


 皆があまりの事にアレックスが狂ったかと訝しむ中、カタカタと音を立て鉢植えの樹木が姿を変えていく……。


「ふむ、妾の事に気付いておったとは……存外抜け目のない王じゃの、おぬしは」


「結界術が僕の専門だからね~、何かが植物の中を行き来しているのも、何処か遠くに繋がってるのもしっていたよ。さて、改めて初めまして、木の国の女王陛下♪」


 うやうやしく礼をするアレックスにコロコロと笑う女王、取り残された皆は口を開けて唖然とするほかなかった。

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