土の国の攻防2
「さ~て素敵な玩具が沢山でワクワクしちゃうね~♪誰から遊ぶ?? ユーマ君? レイアさん? それともフレデリック君かな? アハハハハハハ!」
銀髪銀目の少年がふわりと着地し楽しそうに笑う、その様子を見て皆が一斉に口を開く。
「「「「誰??」」」」
「へ? あ、あ~! そういやこの面々とは初めましてだったね! え~、ゴホン! ……改めまして! 僕はクラウン! よろしくね♪」
礼儀正しくお辞儀をするクラウンに一同が拍子抜けする中、グローインがワナワナと手を震わせクラウンの元に歩み寄る。
「なぜ……何故お前がここに……? 何だ? 何の魂を入れられた?? お前は……お前は……」
「?? おっちゃん誰? 知らない人だね? ……ま、いいか? おっちゃんも僕と遊んでよ!」
クラウンが右手を上げると同時に、先程まで虚ろな目をしていた王国兵の眼に灯が灯り、剣を抜くが早いかユーマ達に襲いかかる。
「っ! レイア! あの右手!」
「……さっきの魔力線に繋がってるわね! って、この反応は……!!」
砦の上下左右、あらゆる方向から金属のぶつかりあう音が近付いてくる、各自武器を構え直す中、クラウンの笑い声が響いた。
「アハハハハハハ! 心配しないでも駒は沢山あるからいっぱい遊べるよ!」
襲いかかる兵の一撃を受け止め、ユーマがやりづらそうにレイアに視線を送る。
「っ……レイア! この人達操られてるだけなんでしょ? どうにかならないの!?」
「……残念だけど無理よ、さっきも言ったけど魔力線がここまで脳に絡んでたら断ち切った瞬間に脳が灼けてお陀仏よ、せめて苦しまないように逝かせてあげるしか……」
レイアが言い切らぬ内にユーマの頬を戦斧が掠め、相対していた兵士が両断される、思わず怯んだユーマを見て、グローインの怒号が飛んだ。
「戦場に来たなら躊躇すんじゃねえ! 相手がどんな姿だろうとどんな事情があろうと! 向かい合ったら殺り合うしかねぇんだ! それに……儂はそこのそいつにじっくり聞きたい事がある!」
斧を向けられたクラウンが両手を挙げてひらひらとさせ、おどけた様子でグローインを挑発する。
「聞きたいっても何も話す気無いよ~? 丁度良い暇つぶしだから付き合って欲しいだけだよ♪」
「ならば意地でも口を割らせて見せよう! どこのどいつだかは知らんが、その体を使用しておること、万死に値する!!」
グローインの猛攻をクラウンがヒラリヒラリと躱す内に部屋に兵達がなだれ込み、ノルンの張った結界に阻まれ重なり合う。
「うわっ、なんか木の国の戦闘思い出して気持ち悪く……」
「あ~! そういうのつまんないから禁止! ちゃんとやりあってよ!」
トラウマが蘇ったのか? 青い顔で結界を張るノルンが声に反応した瞬間、見えない糸に結界が切り裂かれ、兵が折り重なるように迫ってくる。
「止められないナラ!」
フレデリックが爪を振るい兵達の頭上を薙ぎ、兵達に繋がった魔力線を断ち切る、だが、断ち切った筈の魔力線が兵が崩れ落ちる前に再度繋がり、再び今度は操り人形の様に動き始める。
「くっ……一体何人居るんだ……それに数が減らないんじゃ……」
「大技は止めてよ!? こんな狭い中で大きいの放ったら砦ごと崩れちゃう! 何とかあの術者を倒すしかないわ!」
「分かってる! けどこのままじゃ……」
兵達の個々の能力は問題にならない、だが、傷を負おうと仲間が倒れようと怯まず攻撃してくる兵達に、皆にも疲労の色が濃く見え始めている、ケラケラと笑いながら兵達の背後に逃れたクラウンに、ティリスが立ち上がり細剣を突き付ける。
「あなたは……あなた達は一体何なんですか! どうしてこんな酷い事を!?」
「へ? 何で? あ~……考えた事無かったな……まあ……暇つぶし?」
「っ!!」
ヘラヘラと相変わらず緊張感の無い笑顔でおどけるクラウンを見据え、ティリスが地を蹴り、兵達の頭を踏み台に斬り掛かる。
「おっとぉ!? ただの女の子かと思ったらなかなかやるじゃん♪そーいや君ここのお姫様だったっけ? ならこーゆーのはどう?」
クラウンが左腕を振り上げ勢いよく振り下ろすと、部屋に積み重なっていた獣人達の骨がカタカタと音を立てて動き出す、糸に弾かれ部屋の中に戻されたティリスの前に、かつての臣民のなれの果てが立ち塞がっていた。
「そんな……皆……」
「ハハハハハハ! そっちだけじゃないよ! 動かなくなった子も幾らでも動かせるからね! さ~て何時までもつかな??」
倒せども倒せども、斬った体を、折った骨を、魔力線で繋ぎながら死者の群れが迫ってくる、ある者は這い、ある者は他者にぶら下がりながらもユーマ達を徐々に徐々に囲んでいく。
「あ~、なんか呆気なくてつまんないね、一か八か大技放って一発逆転狙うとかあったら楽しいんじゃない?」
欠伸をしながらクラウンが退屈そうに腕を振るう。
「一か八かってのは勝算が無いときにやるもんだって、師匠が言ってたんだよ!」
「この状態から勝算? ハハハハ! 君面白い事言うねぇ♪こんな状態から起死回生の一手があるなら見せて欲しいもんだね♪」
クラウンがにいっと笑うのに合わせユーマが口角を上げ力強く地面を踏み付ける、クラウンが怪訝な表情を見せた瞬間、ユーマの舌打ちが部屋に響いた。
「何? 舌打ちして失敗でもしたぬおわっ!?」
ユーマの舌打ちに合わせて組み上がった陣がクラウンの背後の壁から巨大な岩の杭を撃ち出させる、杭の一撃をまともに受けたクラウンがユーマ達の待つ部屋中央へ弾き飛ばされた。
(っとぉ!? これはちょっとヤバいかも!! でも玩具達に糸を絡ませれば……!)
「「――無垢なる白、光の下に今こそ奇跡を顕現せよ! 『浄化乃天輪』!!」」
クラウンが兵達に糸をかけようとしたその時、レイアとノルンの放った魔法が室内を光で満たし、兵が、骨が、その場にばらばらと崩れ落ちる。
「なっ!?」
「これで終わりです!」
ティリスの剣がクラウンの喉元を切り裂かんと迫る、が、硝子が割れるような音と共に金属のぶつかり合う激しい音が室内に響き、ティリスの剣はひび割れた空間から突き出した異形の剣に止められていた。
「っとぉ! あっぶない! ビスクナイスタイミング!」
「遅い……から……迎えに来た……何事?」
「詳しい話は後後! さっさと行っちゃおう! ……っ離せ! って……まあいいや、こいつも連れて行っちゃお!」
「えっ? あ、うわっ!?」
クラウンを逃すまいと足を掴んでいたティリスだが、逆に腕を掴まれクラウンと共に空間の裂け目に引きずり込まれる、瞬きをする間もなく空間の裂け目が閉じ、静まり返った部屋にユーマ達と物言わぬ骸の山だけが残されていた……。




