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神域の従魔術師  作者: 泰明
帝国
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幕間:女子会

「お帰りなさい! フレデリック!!」


 照れるフレデリックをレイアが抱き締める……およそ半年ぶりのフレデリックの帰還に火の国の首都は祝賀ムードに包まれていた……。

 祭りの時の様に町には屋台が立ち並び、国民達は皆笑顔で帰還の行列を眺める、王位を退いて尚衰えぬ人気に、前統治者としてのフレデリックの人望が窺える。


「お帰り! 魔王!」


 城のテラスに笑顔で出迎えるユーマを確認したクロがフレデリックを連れて転移し、こっそり腕を組もうとしていたレイアがその場でたたらを踏んでクロを睨む。


「ご主人サマ、只今戻りましタ」


「あっちのゴタゴタは片付いたの?」


「はい、あトはメリア達ガどうにかするでショウ、これかラ私もクロも、又ゴ主人様の為ニ仕えさせて頂きまス、ところで……こちらハ?」


 フレデリックの視線はユーマの脇、ぴったりとくっついて離れないノルンに向いている。


「初めまして、ノルンといいます、ご主人さまの従魔です!」


「私はフレデリック、ゴ主人様の『最初の』従魔デス」


 にっこり笑って挨拶するノルンだが、なぜかユーマの腕を抱き寄せ離さない。不穏な空気を感じ取ったユーマが冷や汗を流す中ノルンとフレデリックの間に火花が散る……。


「はいはい、ノルンは再会に水差さない! 私達は宴の時間まで女子会と洒落込むわよ~」


 追いついたレイアがノルンを引き剥がし、首根っこを掴んで引き摺ってゆく……。


「ちょっ……先輩! 何するんですか! いやああぁぁぁ人攫い! 助けてご主人さま!」


 暴れながら連行されていくノルンを苦笑いで見送り、ユーマがフレデリックに向き直る。


「さて、それじゃどんなことがあったか教えてよ、こっちも色々あってさ、話したいことが山ほどあるんだ♪」


 にっこり笑うユーマの肩の上でクロが楽しそうに「にゃおん」と鳴いた。



……



「う゛~……先輩! なんで邪魔するんですか! ご主人さまが取られちゃう~……」


「取られるも取られないもないでしょ……久しぶりに会えたんだから男同士水入らずで話させてあげなさい」


 机に突っ伏しジタバタするノルンを見てレイアが大きな溜息をつく、その様子をティリス、ミーリア、ラスティが暖かい眼差しで観察している。


「ノルンさんはユーマさんの事ほんとに好きなんですねぇ」


「だが、好きといえども程々にしないと、余りしつこいと嫌われるぞ?」


 ミーリアの苦言にノルンが世界の終わりが訪れた様な表情になる。


「まあ、よく言うじゃない? 女は一歩後ろを歩く奥ゆかしさがいい、って」


「む~……でもご主人さま鈍感だから……一歩後ろを歩いてたら置いてかれそうですもん……ってか先輩! 自分はとっくに落としたとか言ってた癖に、実はぜんっぜん進展してないでしょ?」


 ノルンの言葉にレイアの肩が跳ね上がる、ばつが悪そうに小さくなるレイアを見てか見ずか、ラスティがケラケラと笑いながら続ける。


「母親みたいな扱いでどうやっても進展しない~……って前からちょくちょく愚痴ってましたもんね~」


「ラ~ス~ティ~……それは今言っていいことかしら~?」


 レイアに睨まれ、ラスティが不自然なほどに汗をかき黙り込む。


「ま、まあ……それだけ信頼されてるって事だろう、こういう事は焦っても仕方ないし……な?」


「……ま、じっくり行くからいいんだけどさ! そういうあんた達はどうなのよ?」


 目線を向けられたティリスとミーリアがびくりと肩を震わせる。


「特にミーリアは意中の相手が居るみたいねぇ……?」


「あ~、そういえばお弁当持って兵舎の方に……」


「わ~!! わっ私の事はいいだろうが! あれは世話になった御礼を持って行っただけで……というか! ラスティこそさっきから揚げ足ばかり取ってるがどうなんだ!」


「えっと……私はそういうのは……いいかなぁ……って……」


 真っ赤になって否定しつつ慌ててミーリアがラスティに話を振る。が、どことなく歯切れ悪く寂しそうに笑うラスティにミーリアが首をかしげる。


「ラスティはねぇ……今傷心中だから……凄かったのよ? フリードの事伝えたとき取り乱しちゃって」


「……っ! そ……それは不躾な質問だった、すっ……すまん!」


「いっ……いやっ! そっ! そーゆーのじゃないですから! 確かに亡くなったって聞いた時はびっくりでしたけど! べ……別にそういう特別な感情は!!」


「あっ、そういえば気になってる事があるんですけど!」


 会話が混乱し始めた所でティリスが話題を変えようと質問し、皆がこれ幸いとそちらの方を注視する。


「フレデリックさんって喋るときちょっと片言じゃないですか? あれって何でなんですか?」


「あ~……あれはね、フレデリックはユーマにテイムされちゃってるって前に話したわよね?」


「はい、偶然が重なってこうなったと……」


「テイムされた時に言語をユーマに合わせて人界語に固定されちゃったみたいでね、魔界内の言語は完全に習得してたけど人界語はまだまだ練習中で……」


「なるほど……そういう事情なんですね……」


「う゛~……ご主人さま専用カスタマイズとかずるい! 私も何かカスタマイズされたい~!!」


「あんたは脳みそ丸ごとカスタマイズされてんじゃないの? 元が元だからあんま変わってないけど……」


「……どういう意味ですか?」


ノルンがレイアに詰め寄ろうとする中、時間を告げる教会の鐘が鳴り響く……。


「あっ、そろそろ準備しなきゃいけない時間ね、ラスティ、広間の手伝いをして頂戴、それじゃ又後で、皆広間で会いましょう」


 レイアが無理矢理に閉会の宣言をし、各人が部屋への帰途につく。


「?? ノルン? どうしたの?」


 ふと見ると、ノルンがあたまを抱えて悩んでいる。


「あなたが考え事なんて珍しいわね?」


「……人を何だと思ってるんですか? いや、フレデリックさんの年齢がですね…」


「? 何かおかしい事があった?」


「えっと、先輩が地上に降りた年とどうも計算が合わないような……」


「ああ、降りてきた時フレデリックまだ卵だったし、龍神族は孵化までに20~30年かかるからね、そりゃ卵の頃から献身的に世話したものよ♪」


(た……卵から……? え? 先輩……そういう趣味……?? え……ってことは……??)


 卵の状態からという見切り発車ぶりに若干引きながら、ノルンがあることに気付く。


「えっと、先輩? 卵の頃から一緒だったんですね?」


「そうよ?」


「孵化の瞬間には立ち会いました?」


「ええ、生まれた時のフレデリックも可愛かったわ~♪」


「……刷り込みって……知ってます?」


「……なにそれ?」


 その晩、フレデリック帰還の宴が盛大に催され城内も城下も祝いの宴に大いに盛り上がった、その宴の場の隅に膝を抱え蹲るレイアが居たとか居なかったとか……。



※刷り込み:雛鳥等が孵化して最初に見た動く物を親と認識するという習性。

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