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神域の従魔術師  作者: 泰明
帝国
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幕間:神剣

「お~、ようやく来たの! 待ちくたびれる所だったぞい!」


 ブロックが満面の笑みでユーマを出迎える。


「お待たせしました! 出来たんですね!!」


 ユーマが瞳を輝かせ、待ちきれない様子でブロックに駆け寄った、この日自室で寛いでいたユーマは、ラスティから剣完成の報を受け地下の研究所を訪れていた、待ちに待った剣の完成に否が応でも期待が高まる。


「まあ、焦るでないぞ、こういうのは簡単に見せるのもつまらん、じゃが……うむ! ……うむ! まあ、早く見てくれ! 儂の生涯一番の最高傑作じゃ!!」


 ブロックがユーマを手で制すも、すぐにわきわきと落ちつきなく手先が動き、自身が待ちきれぬと言った様子でちょんまげを揺らしながら背後の作業台へ向かう。


「っと、そういや今日はノルンちゃんはおらんのか?」


「この間買った服を並べて女子皆で品評会してるみたいですね、邪魔したら悪いので一人で来ちゃいました」


「なんじゃ……残念じゃのう……じゃが、儂らにあやつらの話がわからんようにあやつらにも漢の浪漫は分かるまい!」


 ブロックがニヤリと笑って胸を張り、うやうやしく箱を掲げると作業台へ置く。


「とくと見るが良い! これが神剣をも超えた儂の生涯最高傑作じゃ!!」


 箱の隙間から光が漏れ、開け放たれた瞬間、地下室に濃密な魔力が満ちる……油を流しているかのように揺らめく刀身からは止めどなく光を纏った魔力が溢れており、一見無骨ながら繊細な細工が成された柄と柄頭には蛇を模した意匠が刻まれている、そして鍔の中央にはめ込まれた流れ出す血のように赤い魔石……。


「これが……でも……あれだけ大きかった魔石が随分小さくなっちゃいましたね……」


「魔石の外殻を砕いて核だけにしたからの、核だけで通常の魔石サイズっつーのも企画外過ぎて笑えてくるわのう、ガハハハハ!」


 ひとしきり笑うとユーマの背をバンと叩き、剣の正面に立たせる、促されるままに手に取り、ユーマが吸いこまれそうな様子で刃を見つめる……。


「はぁ……鍛冶に関して素人ですけど……この剣が凄いって言うのは分かります! 流しても無いのに表面にうっすら魔力が流れて……これならミドガルズオルムも輪切りにできますね」


 ユーマがそう呟いた瞬間、魔石の中で揺らめいていた模様の様な物が凄まじい勢いで回転し、ユーマを睨み付ける。


「うわっ!? え? なに!? ……この魔石……もしかして生きてる……??」


「ガハハ! 儂も初めて見たがな、確かにその魔石は生きておる、恐らくミドガルズオルムの魂を宿したのじゃろう、輪切りじゃなんじゃと言われて怒っておるようじゃの」


 言われて改めてしげしげと見つめると、魔石の中の目のような模様が彼方あちら此方こちらへと忙しなく動いている。と、魔石から魔力でかたどられた鞭の様な物が伸び、突然ユーマの手を打ち据える。


「痛っ! ……っ……一体何を……?」


「どうやらお主に倒されたのを覚えておるのかの? 儂も生きている剣を作ったのは初めてじゃ、じゃが……こうも生前の意識が残っておるとなると……参ったのう……」


 そうこうする間にも剣は魔力の鞭でユーマの体を打ち据え続ける、最初こそ対話を試み、話し掛けたり宥めたりしていたユーマだが、ついに堪忍袋の緒が切れた。


「……っ……っのお……!! ……テイム!!」


 ユーマが魔石に魔力を流し込むと魔石が一際強い輝きを放ち、模様が暴れる様に激しく蠢いた後に沈黙する……。


「……よっし! これで大丈夫!」


 一連のやり取りをポカンとした顔で見ていたブロックが膝を叩いて笑い出す。


「ガハハハハ! そうか! その手があったか! 魔石といえども生物は生物! いやまったく!」


 ひとしきり笑った後でユーマの背をバンバン叩く。


「これでこの剣は名実共にお主専用の剣じゃ! ちょっとやそっとじゃ傷もつかんし魔力コーティングのお陰で切れ味も鈍らん、そして……お主魔力線のコントロールが得意じゃったの? ちょいと剣を媒介にしてやってみるがよい」


 言われたユーマが剣を通して魔力を練り、魔力線を伸ばすイメージをする……。


「!? 凄い! 思った通りにコントロールできる! それに、飛ばす速度が全然違う!!」


「そうじゃろう、そうじゃろう、前に見せて貰った短剣の応用でな、魔力を整流して動きがダイレクトに伝わるようにした、ちゃんと魔力で刀身が伸びる機能もついておる、さあ、試してみるが良いぞ! いや! やって見せてくれ! 頼む!」


 目を輝かせて懇願するブロックを見、ユーマは一つ頷いて掲げた剣に魔力を込めた……。



……



「う~ん、これ、可愛いけどこっちのスカートには合わないわね……」


「ご主人さまはどれも可愛いって言って下さいましたけどね~」


「男の言う可愛いほど当てにならない事は無いわよ?」


「あっ! このワンピース素敵! これからの季節こういうの一着欲しいですね」


 城内のノルンの私室にレイアとティリスが集まり、服を並べて品定めをしている、皆がそれぞれに服を手に取り、見た目にはさながらファッションショーの様相である、そんな中、扉をノックする音が響きノルンがノックした主を部屋に招き入れた。


「うわっ、凄い数の服ですね~、これみんなノルンさんのですか?」


「皆で私服を持ちよってみたんです、ラスティさんもよかったらいかがです?」


「う~ん……私はメイド服が肌に合うというか……これ以外着ると落ち着かないんですよね……」


「あっ、そういえばラスティ、ユーマ見なかった? どうせなら着飾ったノルン見せてからかってやろうかと思ったんだけど……」


 レイアの言葉にラスティが思い出した様にポンと手を打つ。


「ああ、その事でレイア様を探してたんです、何でもブロックさんが『ついに剣が完成したぞい! 早く見に来い!』って言ってらしたんですけど……」


 ラスティの言葉にレイアの動きがピタリと止まる。


「……へっ……? ……もしかしてそれはユーマに……?」


「ええ、伝えたら目を輝かせて走って行っちゃいました、やっぱりああいう所はまだまだ子供らしいですよね~」


 固まったままのレイアの顔から滝のように汗が流れ、手先がブルブルと震え出す……。


「えっと……レイア様??」


 ラスティが声をかけたのが先か後か……凄まじい轟音と共に商業区画の一部を吹き飛ばし天を衝かんとする大きさの輝く刃が屹立していた……。


「……あ~……これ……レイア様に先に伝えた方が良かった……案件でしたか……ね……?」



 区画の一部を吹き飛ばす大事故にも関わらずこの事故による死傷者は奇跡的に居なかった、現場の修復には竜騎士団が出動。尚、この事故に関しての全てに対し国内全域に箝口令が敷かれる事となった……。

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