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神域の従魔術師  作者: 泰明
帝国
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皇帝と学友2

 帝都の地下通路は二人の予想より広く作られており、体の大きいダリスでも余裕で歩ける広さがあった、ダリスが先導しつつ薄暗がりの中慎重に歩を進めてゆく……。


「あ~あ、どうせなら帝都観光しながらゆっくり食べ歩きしたかったわ……」


「まあ、なにかしら事情があるんだろうしな、その分はあいつに貸しにしておこう」


「学生時代の貸しも取り立ててないのに……いっそ国ごと頂こうかしら……」


「お前が言うと洒落にならんからやめてくれ……」


 雑談をしながらひたすら歩き、一刻ほど経った頃突き当たりに行き着く。


「さ~てダリス……飛び出したら一気に拘束してカタをつけるわよ……」


「だから不穏当な発言はやめろと……」


「そうそう、捕まえた所で喜ぶ奴がいるだけだよ~♪」


 突然横から話し掛けられ、不意を突かれた二人が思わず声の主を拘束する、床に組み伏せられ、杖を突き付けられた声の主が肩を震わせ笑い出す。


「ぷっ……くくく……あ~、二人とも変わってないなぁ♪」


 ダリスが拘束を解き、立ち上がった相手が服に付いた砂を払う、マリアがため息をつきながら杖の先端をその鼻先に改めて突き付ける。


「あんたも変わってないわね……そうやっていたずらばかりやって、その度にどうなってたか忘れたのかしら?」


 マリアの言葉に白金色の髪をかき上げ、細い目を更に細くしてにっと笑う。


「二人も変わってないみたいでよかった~、でもさ、これ危ないからおろしてくんない?」


「全く……即位して何か変わったかと思ったが、変わってなくてほっとしたよ、久しぶりだな、アレックス」


 アレックスとダリスがしっかりと握手をし、マリアが突き付けていた杖の先端を下げる、それを確認し、アレックスが改めて優雅に礼をした。


「で? わざわざ迎えに来てどうしたの?」


「部屋で待ってようかと思ったんだけどね~、どうにも不穏当な輩が侵入してきたみたいでさ、話ついでにちょちょいと捕縛してほしいんだけど」


 あたかも軽いお使いの如くにアレックスがにこやかに手を合わせる、悪びれる様子も無くにこにこ笑うアレックスを見、マリアとダリスが顔を見合わせ溜息をついた。


「大体どういう頼み事か分かったわ……」


「お家騒動に他国の騎士を巻き込むか? 普通……」


「そこはまあ友情特典って事でひとつ♪」


 呆れた顔をしながらもダリスが梯子に手をかけ、マリアに尋ねた。


「マリア、上には今何人居る?」


「帯剣しているのが二人、魔導師一人ね……あ~……廊下にスティ-ブが待機してるわね……取り逃してもサポートは問題無さそう」


「……スティ-ブに全部任せるじゃ駄目か?」


「そんなこと言わないでよ~、老体に鞭打つ趣味は無いでしょ? 頼むよ」


 ダリスがアレックスの顔を見つめ、溜息を一つついてから梯子を登ってゆく、ダリスの「痛っ!」という声に続きドタバタと騒がしくなり、やがて静寂が訪れる……。


「お~い、終わったぞ?」


 ダリスの声を受け、マリアとアレックスが梯子を登り部屋に入るのを、頭を痛そうにさするダリスと気を失い縛られた三人組を監視しているスティ-ブが出迎えた。


「お前出口が暖炉なら言ってくれよ……あたた……こぶができちまった……」


「いやはや見事なお手並み、私が手出しする隙などありませんでしたな」


 心なしか肩を震わせて見えるスティーブを見やり、アレックスが後ろを振り返る、上部が壊れた暖炉を確認し、同じく肩を震わせる……。


「ごほん! っとまあ、こんな感じで日々狙われちゃってさ、まだ手引きしてる奴も見つかんないし、暇潰しにしてもいい加減飽きてきてるんだよね……」


「だが……この程度の相手ならアレックスなら問題なく対処できるだろ?」


「対処できちゃうのも問題っていうかね、最初はそうしてたんだけど、撃退する度に相手のランクが上がってきてて……流石にそろそろヤバいかな……ってね? 誰が仕組んだ事かさっぱりだし、自ら動くのは今の立場上なかなか難しいからね……」


「そこで相談なのですが……」


 アレックスの話の流れからのスティ-ブの言葉に言いようのない嫌な予感を感じ、マリアとダリスが顔を見合わせる……。


「暗殺の手引きをしている者の調査と捕縛をお二人に依頼したいと……」


 続くスティ-ブの言葉にマリアが勢いよく立ち上がる。


「ダリス、帰るわよ! こんな厄介な案件に巻き込まれたら今後もずっとこいつの厄介ごとに付き合わされるわ!」


「連れない事言わないでよ~、旧友のピンチだよ~? それにさ、タダ働きさせようって訳じゃないしさ……」


「餌で釣ろうったって無駄よ、なんなら国庫が干上がる位要求して……」


「『不死鳥の杖』」


 アレックスの放った言葉にマリアの動きがピタリと止まる。


「今回の件、受けてくれるならマリアにあげるよ~?」


「は? 王国の国宝をなんであんたが……!」


「先日の即位の際のプレゼント交換だよ、炎の精霊魔術師エレメンタルマスターにしか使えない、代々の精霊魔術師の魔石の埋め込まれた杖、先代は君の母上、そして今代は君だ、こっちからも国宝いくつもあげちゃったから、今はこれしかあげれる物は無いねぇ」


「……っとにいい性格してるわ……!」


 マリアが乱暴に椅子を引き腰を下ろす、その様子を見てダリスも改めて深く椅子に腰掛ける。


淑女レディに褒められ恐悦至極、あと……ダリスには……なんもないや、い~い?」


「はぁ……構わんよ、マリアが受けた時点で俺が巻き込まれるのは確定事項だ、だが……事態は想像より厄介だろうな……」


 へらへらと手を振るアレックスに、諦め気味にダリスが溜息をつく。


「まず、その刺客達に見覚えがある、王国内で手配されていた賞金首だ、単にこちらに逃れてきたってのには流石に粒がそろいすぎている」


「流石元団長さん、よく見てるね~、こいつらだけじゃなくてさ、他にも名うてのがゴロゴロね……後でリスト渡すよ」


 ダリスがやはりそうかとばかりにアレックスを睨み、頭を掻きながら話を続ける。


「あとは……魔物だ、帝都に着くまで約半月、本来ならもう一週間は早く着くはずだ、その遅れの原因は魔物の襲撃、それも殆どが西の方角から現れた……」


「西には国境砦もあるし駐屯兵も多い、本来なら魔物は少なくて然るべきですな……」


 ダリスの言葉にスティ-ブも頷く。


「帝国内に王国につながっている者が居る、王国が主犯かどうかは分からんが……まあ、こうも分かり易いやり方だ、王国そのものよりは金に困った地方貴族だろう」


「根拠は?」


「王国が本気で暗殺を狙うなら雑魚を送ってわざわざ警戒させるような真似はしない、あえて言うなら……最初から俺を使うだろう」


 眼光鋭いダリスの視線に三人の背筋に冷気が走る。


「ま、飽くまで予想だ、真相はわからん、俺らで調査してけばその内分かるだろ」


「それじゃ細かい計画詰めなきゃね、その前に、何か食事を取らせて頂戴、流石にお腹が空いたわ……」


 マリアが肩を落として腹をさする。


「侍女に言って何か届けさせましょう、私はこの不届き者共を運んで参ります」


「あ、ならついでに城内案内してよ! 隠蔽魔法で姿消すから問題ないでしょ? ダリスはどうする?」


「俺はいいよ、とりあえず疲れたから今は少し休ませてくれ……」


 スティ-ブとマリアを見送り、大きく伸びをしてダリスが口を開いた。


「杖、依頼受けなくても渡す気だったんだろ? わざわざ回りくどい事して不興を買わんでも……」


「好きな子には意地悪したくなる男の性さ♪それに何か理由を見つけないとマリアは受け取ってくれないだろうしね」


「確かにそうだな……ってか、え? お前! マリアの事?? え? そうだったの!?」


 目を白黒させるダリスを見てアレックスが笑う。


「学生時代から何度か口説いてるんだがな、この性分が災いしてか決まった相手が居るのか、全く相手にして貰えてないよ、それより……ダリスお前はどうなんだよ??」


「?? 俺? 相変わらず浮いた話なんぞ無いし恋だの愛だのよく分からんよ……今はマリアに振り回されっぱなしだしな」


 ダリスの返答にアレックスがポカンと口を開けたまま動かなくなる。


「? アレックス??」


「はっ! あ、そうか! 無自覚なのか! ハハハ! 距離が近すぎると気付かないとはよく言うが、そうか……ここまで鈍いのは貴重だな!! ククク……」


 愉しそうに笑うアレックスをダリスは訳が分からないという表情で見つめていた。

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