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神域の従魔術師  作者: 泰明
女神降臨
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少年と毛玉4

「ただいま~、はい、魔石取ってきたよ!」


 地下研究所に帰還したユーマがゴトリと音を立て人の頭ほどある巨大な魔石をテーブルの上に置いた。


「はっ!? これ……魔石!? ユ-マあんた一体何狩ってきたのよ!」


 レイアとブロックが目を丸くし、魔石をしげしげと覗き込む、無理も無い、通常採取される魔石は爪程の大きさで、過去記録にある最大の魔石でも子供の拳程度、この魔石はそのゆうに10倍以上の大きさだ。


「こりゃまた随分と純度が高いのぅ……これなら何に組み込んでも問題なかろう! じゃが……儂も長く技術者をしとるがここまででかい魔石は初めて見るぞい?」


「何を狩ったって……レイアの言うミドガルズオルムだっけ? それらしい蛇を倒してきたけど……あ、肝臓と心臓は血抜きして中庭に置いてあるよ、他の素材は大きすぎて運べなかったからまた明日にでも部隊を組んで剥ぎ取りに行ってよ」


 ユ-マが欠伸をしながら大きく伸びをした。


「それにしたって大きすぎでしょ……とにかくでっかいって噂だけは聞いたけど……どんだけでかかったのよ……」


 巨大な蛇の姿を想像してしまったのであろう、レイアが鳥肌を立てて身震いする。


「先輩、禄に調査もせずに行けって言ったんです? お陰でこっちは大変な目にあったんですから! おっきいってもんじゃありませんよ!! 幅は30m以上! 長さも1kmはありましたよ! それに―――」


「もういい! もういいから想像させないで!」


 顔を真っ青にしたレイアが慌ててノルンの口を塞ぐ、しばらくモゴモゴと抵抗をしていたノルンが恨みがましい視線を送りながら掌を舐め回して脱出を果たす。


「まあ、でもあんなのが居るなら、もうちょっと詳細に教えてくれても良かったんじゃない?」


「あれに関してはほぼほぼ伝説に近い扱いで資料がろくに残ってないのよ……確実だったのは『居る』『見て無事帰った者は居ない』の二点だけだったんだもん、調査隊を出した資料は各国にあるけど、調査結果は『全滅』『行方不明』のみよ」


「そんな危険な所に行かせるってどうなの!?」


「結局倒せれたならいいじゃない! 終わりよければ全てよし! 問題なし!」


 逆ギレするレイアにユ-マが大きなため息をつく。


「何とかなったはいいけど、シスターに貰った短剣が無かったら危なかったんだからね?」


「短剣? あんたそんな物貰ってたの? ちょっと見せてよ」


 ユ-マが懐に入れていた短剣を取り出しレイアに手渡す、くるくると回しながらレイアが短剣の細部をよく観察する。


「へ~……結構な年代物だけどいい物ね、かなり上等な魔道具だわ……って……ノルン!」


「? どうかしました??」


 抜けた返事をするノルンをレイアが部屋の隅に連れて行く。


「あんた何地上の物に神の祝福かけてんのよ!! 基本不可侵の誓約を忘れたの!? 軽々しく神器なんて作っちゃ駄目でしょーが!!」


「そうは言ったってあの状況じゃ仕方なかったんです! それより、大蛇をこっちまで引き連れて戻った方が良かったって言うんです??」


 ノルンの言葉にレイアがのけ反り手先を震わす。


「いっ!? い……いや……そうは言わないけど……でも! こういう技術は地上には過ぎた技術で! 下手したら文明を壊しかねない………」


「ぬおっ! なんじゃこの短剣は!!」


 こそこそ話をしている二人の背中にブロックの驚愕した声が降ってきた、レイアとノルンの肩がビクリと跳ね、ゆっくりとぎこちなく声の方を振り向く。


「これは……これまでに無い新しい技術じゃな……ほほう……こう……魔法陣を組み込んで……なるほど! こりゃ面白い!!」


 はしゃぐブロックと対照的にレイアが頭を抱える、その姿を見てノルンがユーマの後ろにこっそりと移動した。


「ドクター、僕の剣にもこの祝福エンチャントを付けることってできますかね??」


「おうさ! 付けられるとも!! むしろ付けさせてくれ! 忙しくなるぞぉ! 儂の最高傑作が更なる進化を遂げる! 神器に劣らぬ武器を作ってみせようぞ!!」


 興奮気味に語り合う男二人を見てレイアが肩を落とし項垂れる。


「もういいわ……手遅れね、せめて量産化だけは阻止するわ……」


「えっと……まあ……ご主人さまが喜んでるからとりあえず全部オッケーですよね!」


 レイアがノルンの顔を見つめ全身を使い盛大にため息を吐いた。


「まあいいわ、ユ-マもノルンも、ラスティが夕飯用意して待ってくれてるから早く行ってあげて頂戴」


「そういやお腹ペコペコだ……っとその前に、お風呂に入らなきゃだな……」


「清潔化の魔法は使いましたけどそれだけじゃなんか気持ち悪いですもんね」


「それじゃドクター、また明日見に来るよ!」


「おう! 明日までに粗方仕上げとくから楽しみにしとけよ!!」


 駆け出すユ-マを追おうとするノルンをレイアが捕まえる。


「んで、どーだったのよ? 何か進展はあった?」


 ニヤニヤしながら尋ねるレイアにノルンが顔を赤くした。


「いや……進展……とかは無いんですけど……」


「けど?」


「大蛇に立ち向かうご主人さまが格好良くて……こっちがずっとドキドキしっぱなしで……はぁ……」


 うっとりと宙を見つめるノルンをレイアが呆れた顔で見つめる。


(何かユ-マをからかうネタでも……って思ったけど、完全にノルンの方が吊り橋効果にやられてるわね……いや……この子はこの状態が素か……)


「進展無しなら強行突破ね、それじゃユ-マを追い掛けてらっしゃい!」


「追い掛ける?」


「ユ-マは風呂場に向かった、王族用の風呂場に邪魔は入らない……ならば……」


 ノルンがハッとした表情をし、ワナワナと手を震わせる……。


「ま……まさか伝説の……『お背中お流しします』を使う時ですか!?」


「健闘を祈るわ!」


「先輩! 私、頑張ります!!」


 走り去るノルンを見送り、作業台に向き直るとブロックが呆れた顔でレイアを見ていた。


「全く……あまりからかい過ぎるとその内にゃ後ろから刺されるぞ……じゃが……ええのぉ……儂もノルンちゃんみたいな子に背中を流して欲しいのぉ……」


「ドクターじゃやって貰ってても介護にしか見えないんじゃない?」


「何を言うか、儂より年上のお主にどうこう言われとうな……!?」


 言い終わらぬ内にブロックの周囲に雷撃が落ち、氷の笑みを浮かべたレイアがブロックの顔を覗き込む。


「何か言ったかしら?」


「何も言うとらん! 何も言うとらんぞ! ひぃ~……くわばらくわばら……それはそうと……この魔石はどう使うかの?」


「このままのサイズじゃ剣には組み込めないしね……核だけ剣に使って……外側は例の素体に使えるかしら?」


「ふむ……外殻だけでも十分過ぎる位魔力があるのぅ、恐らくこいつを使えばあっちも完成するぞい」


「なら、そっちも合わせて進めて頂戴、私は中庭の素材を片付けてくるわ」


「今日は調整含めて徹夜になるぞい? ちゃんと戻って来るんじゃぞ?」


 レイアが疲れ切った顔で肩を落とす。


「うぇ~……また肌が荒れちゃうじゃない……全く……何が悲しくて人の武器作ったり後輩の恋愛相談やったりしてんのよ! あ~……フレデリック早く帰ってきて!!」


「なんじゃい、儂と一緒じゃ不満かい」


「毛むくじゃらのじーさんがフレデリックのかわりになるわけないでしょ!!」


「なんじゃ……年寄り扱いしおってからに……そういう自分は……」


「何か言った!?」


「なんも言って無い! な~んも言って無いぞ! さ~て仕事仕事! 頑張るぞい!」


 慌てるブロックが金床に向かい走る、地下工房に規則正しい槌の音が響き始めた…。



………



 自室に戻ったユ-マが布団の中に潜り込み大きな欠伸をして目を閉じる。


(今日も色々な事があったな……ふぁ……はふ……でも……何か大事な用事を忘れてるような……? そういや……ノルンの服……デート……? あれ……? なんで服……買わなきゃ……いけないんだっ……け……)


 昼間の疲れからか、考えが纏まらぬ内に意識が闇に吸い込まれていく……。


 ユ-マが寝静まった夜中に自室の扉がそっと開く、ユ-マがその『用事』の必要性と緊急性を思い出すのは、翌日の朝になっての事だった……。

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