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神域の従魔術師  作者: 泰明
女神降臨
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少年と毛玉2

 機嫌よさげなニールの背に乗り、ユ-マとノルンが何処かへ向かい移動している……凄まじいスピードでの移動にもかかわらず結界のおかげか居心地の良いニールの背では、ピクニックよろしくノルンがお弁当を広げお茶を淹れている。


「確かこの辺りの筈なんだけど……」


「……本当にそんな大きな蛇居るんでしょうか?」


 上空からから地上を探すユ-マに対し、ノルンは首をかしげて不安そうにしている……。


「居るか居ないかはまあ分からないけど、でも居てくれないと剣が完成しないしね……」



……数時間前。



「あの……この穴は何ですか?」


 剣の鍔ににぽっかり空いた穴を指し、ユーマが首を捻りつつブロックに尋ねる。


「問題っちゅうのがこれでのう……」


 ブロックが困った風に頭を掻きつつため息を吐く、頭を掻く度チョンマゲがピコピコと動き、三人がぐっと笑いを堪える。


「本来ならこの穴に魔石を埋め込むんじゃが、刀身の魔力伝導が高くなりすぎてな……普通の魔石では負荷に耐えきれず破損してしまうんじゃ」


「魔石? 剣に魔石を埋め込むんですか??」


 魔石とは様々な生き物の体内にある魔力の結晶で、特に魔素に深く冒されている魔物等の体内によく存在している、灯りを得るための魔石灯や火付け用のライター等、日用品に使われる事が多いが、杖などに高純度の魔石を組み込み魔法発動の補助に使う事もある。


「金の国で開発した新技術でな、剣に魔石を組み込み刀身に魔力を流す事で切れ味を良くして、尚且つ折れにくい剣になる」


「魔石を使わずに直接じゃ駄目なんですか?」


「できるにはできるがのぅ……魔石である程度制御してやらんと

魔力を無尽蔵に流して刀身が融解するんじゃ……」


「制御出来ない不良品なら打ち直せって、何度も言ったんだけどね~」


「そんな事出来るわけ無いじゃろうが!! 儂が手塩にかけて作り上げた最高傑作! こいつを殺すなら儂を殺してやってみるがいい!!」


 ブロックが巨大なハンマーを担ぎ上げレイアに向かい振り上げる。


「わ~っ!! 誰も壊せなんて言ってないでしょ!! ……全く……情を移しちゃって……」


「じゃあこれにはめ込む純度の高い魔石が必要なんだね、どんな魔物のが必要なの?」


 ユ-マの問いかけにブロックがハンマーを降ろして向き直り、レイアが避難していた柱の上で安堵のため息を吐いた。


「う~む……それが市場に流通する魔石は粗方試して城に保管してあった飛竜の魔石も使ってみたが……どうにも耐えうる魔石が無くてな……」


「だからユ-マに魔石取りを頼みたいのよ、他の案件も抱えちゃってるから出来れば今日中に……」


「ちょっと待って下さい、先輩、私は今日ご主人さまとデートなんですが!? そんなのやってたら買い物行けませんよね??」


「っていうかレイアが行けばいいんじゃない?」


 二人に言い返されてレイアがぐっと口ごもる、そしてユ-マを招き寄せ耳打ちする。


「今回の討伐候補が『あれ』なのよ……申し訳ないけど私はあれを見るのも触るのも絶対嫌なの!!でも私以外には倒せそうな人材あんたしかいないのよ……ユ-マも自分専用の魔剣……早くほしいでしょ?」


 レイアの言葉にユ-マの意志がぐらつく……不穏な気配を察知したノルンが慌ててレイアを引き剥がし、部屋の隅に連れて行く。


「先輩! 酷いですよ! ご主人さまとの仲が進展するチャンスなのに!!」


「それについては悪いとは思ってるわ、でも、あなた……吊り橋効果って知ってるでしょ?」


「あのピンチのドキドキを恋心に勘違いってやつですか?」


「そう、それよ! 買い物に行くよりも魔物討伐に二人きり……ドキドキハートを鷲づかみ作戦! どうよ!?」


 レイアの語る謎の説得力にノルンが押されている……たたみかけるようにレイアがノルンの肩を抱き寄せ耳元に囁く。


「それにノルン……? あなた……魅了もう解けてるわよね?」


「むぐっ!? な……なぜそれを!!」


「そんなもん状態鑑定かければ丸見えでしょ? いい? これはその事に対する口止め料も含むわ、それに……魅了されてる振りしてこのまま攻めた方がウブなユ-マは簡単に落とせるはずよ、黙っていてあげるから励みなさいな♪」


 レイアの親身なアドバイス(?)にノルンがついに陥落する。


「せっ……先輩!」


「ここで聞き分けの良さを見せて、妻として内助の功を見せつけるのよ!!」


「はいっ!! 先輩! ありがとうございます! 私……私! 頑張ります!!」


 レイアが意味ありげにほくそ笑む中、それに気付かぬノルンが勢いよくユ-マに向き直り手を取る。


「ご主人さま! それでは魔石を取りに行きましょう!!」


「えっ? でも……服は……?」


「大丈夫です! ご主人さまの為になるならばそちらの方が優先順位最上位です!」


「え? あ……う……うん……?」


 またレイアが何かろくでもないことを言ったのだろう、証拠に視線を送っても目が合わない。


「で、レイアが嫌って言うからには対象は多分『蛇』でしょ? そんなに大きい蛇の魔物なんて居るの?」


「ああ~……名前出すのもやめて! あれだけは本気で駄目なのよ……場所はここ、この辺りに巣があるはずだから、二人で行って倒して来て頂戴……」


 レイアが示す地図の地点は火、水、木の国の国境の重なる一点……深い森が記されているばかりの場所である。



……



「先輩はこの辺りって言ってましたけどそれらしい姿はありませんね……」


「巣っていうからには何か目印になるものがあってくれてもいいんだけどね、ニール、とりあえずあそこに降りてみて」


 ユ-マの指示に従い、ニールが森の切れ間の谷に降り立つ、半円状にスプーンでくりぬかれたような谷には、不思議な事に周辺に森があるにも関わらず木の一本すらも生えていない。


「なんか人工物みたいな谷だね……形が綺麗だし、しっかり固められてる、だけど……街道にしては曲がりくねってるし、他の街道につながってないね……」


 谷の幅はニールもすっぽり収まるほどで、軍隊を通すことも余裕で出来そうだ、だが、森の中をくねくねと縦横無尽に走るこの谷は、外に繋がる道は存在していない。


「でも……ご主人さま……なんだかこの周辺……変ですよね?」


「うん……なんていうか……魔素が薄い? でもなんかあっちだけ魔素が濃いような……」


 ユ-マが谷の奥を振り返り、指を差したまま固まる、それを見てノルンがつられて振り返った……。


「えっ?」


 魔大陸、人界からは魔界と呼ばれ、ミッドガルと名の付くこの大陸には様々なお伽話や諺に語られる大蛇の伝説がある。

 曰く、湖を一夜で飲み干した、曰く、村を丸ごと呑み込んだ、酒場などで傭兵や冒険者がよく口にする『大蛇の顔を覗きに行った』という言葉は死地に向かう者を揶揄する諺である。


『ミドガルズオルム』


 魔大陸の名を冠した伝説の大蛇がその巨体を揺らし、鎌首をもたげてユ-マ達を見つめていた……。

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