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神域の従魔術師  作者: 泰明
女神降臨
21/98

少年と少女

「はあ……ここが火の国の王都……土の国の王都とはまた違った賑わいですね……」


「火の国は多民族共生を謳っていますし、事実、様々な国の民がここに暮らしています、ですから今回も違和感なく難民の受け入れを了承して頂けました」


「まあ、困った時はお互い様ですよ♪それに魔族同士いがみ合っていたらそれこそ王国の思うつぼですからね~」


 緊張した様子のティリスにミーリアとラスティが付き添い、王城への道を歩いている、火の国の王都は先日の戦争の混乱も収まりまた以前の平和と賑わいを取り戻していた。


「さて、それでは午後からティリス様には大魔王陛下へ謁見して頂きます、その後、ティリス様の土の国魔王襲名発表、終わりまして後日同盟締結の調印となります」


「大魔王陛下ですか……一体どんな方なんでしょうか……」


 暗い顔で不安がるティリスを見てミーリアとラスティが悪戯な笑みを浮かべる。


「大魔王陛下は寛大なお方です、ですが、姿を見て驚かれるかも知れませんね、私も最初は恐ろしい目に遭いました……」


「私も初めてお会いしたときには目を疑った、まさかあんな……なあ?」


 混乱して目を回すティリスに二人のニヤつきが止まらない。


「あら、あんた達ここに居たのね」


 後ろから声をかけられ三人が振り返る。


「レイア様! 先だっての報告通りティリス姫を無事お連れしました!!」


「お疲れ様、ラスティ、ミーリアも良かったわね、姫様が無事で」


「いえ、本来なら捕虜として拘束されて然るべき所、捜索の許可を頂き感謝の極みにございます」


「堅苦しい喋りはいいわよ、背筋が痒くなるから、そちらがティリス姫ね。私はレイア、火の国の参謀役として働かせてもらってるわ、何か聞きたい事とかあったら何でも聞いてね」


 微笑むレイアに挨拶を返しつつティリスはマリアの言葉を思い出す。


「あっ……あの! レイア様に質問が!」


「何かしら? 機密情報以外なら何でも聞いて♪」


「この国にユーマっていう人族の子はいますか? 歳は……私と同じくらいで……」


「? ……居るけど……焦らなくても昼には……」


 『昼には謁見できる』と言いかけたレイアをミーリアとラスティが遮る。


「そういえばユーマ殿は何処におられるのかな?」


「まだ時間もありますし先にお会いしては??」


 不自然な割り込みに二人の狙いを悟ったレイアがにっこり笑って続ける。


「そうですね、でしたら城の中の散策許可を出します、先ほど一階に降りてくるのを見ましたから多分すぐに見つかると思いますよ? ですが……なんでまたユーマを?」


「旅の中お世話になった恩人に火の国へ行く事があれば無事を確認してほしいと……」


 ティリスの言葉にレイアが考え込む。


(確か姫様は囚われの身で王国に護送されてそちらで救出された……って話だったはず……? 王国でユーマの事を知っていて……そんなお節介わざわざする人間が……!?)


 レイアの顔から血の気が引き冷や汗が流れ出す。


「え……えっと……姫様? その人の名前は……?」


「あ、すいません、信の置ける人間じゃないと軽々しく教えられませんものね、マリアさんっていう魔法使いの方で……」


 名前を聞いた瞬間レイアが凄まじい勢いで壁際まで後退る。


「え? ……レイア様??」


「そ……そのマリアさんは……い……今何処に??」


「一緒に来れたら良かったのですが……用事が出来たらしく帝国の方へ……」


 続くティリスの言葉を聞いてレイアが肩の力を抜き大きな溜息を吐く。


(あ……焦ったあああぁぁ……まさかマリアが関わってたとは……散々からかった後だから遭遇だけは避けないと……それにしても帝国……? 確かマリアの学友にこないだ即位した皇帝が居たはず……?)


「あの……レイア様? 大丈夫ですか?」


 ブツブツ独り言をしながら考え込むレイアを心配し、ティリスが声を掛ける。


「あ……ああ、大丈夫ですよ、ちょっと吃驚して……マリアは私も長い付き合いでね、元気そうで安心したわ、うん」


「そうだったんですね、また機会があれば昔の話とか聞かせて頂けたら嬉しいです」


「はい、是非に、それでは私は用事がありますので……ラスティ、あいつは何処にいるの? ちょっと確認したい事があるから案内して」


 退散してゆくレイアを見送り、ミーリアの案内でティリスが城内の探索を始める。


「立派なお城ですね……所変われば建築の様式もガラリと変わるんですね」


「火の国は岩山に囲まれて石材が豊富ですから、逆に木材や粘土がとれづらい土地ですから煉瓦の使用は少ないみたいですね」


「あら、あっちは日が差してる、中庭かしら」


 駆け出したティリスが中庭に駆け込むと同時に悲鳴を上げて尻餅をつく、その様子を見たミーリアが何事かと慌てて中庭に駆け込んだ。


「どうなさいましたか!?」


 慌てたミーリアが中庭に入ると、昼寝から目覚めたニールの前でティリスが腰を抜かしていた。


「なっ……え!? ドラ……ドラゴン??」


「姫様、大丈夫です、彼は大魔王陛下の騎龍です」


「き……騎龍?? こんな……大きい……?」


 ティリスに害意が無いのを感じ取ったのかニールが大きく息をつき又眠り始める。


「騎龍……こんな大きい龍に乗るなんて……一体大魔王陛下はどんな人なの……??」


「それは、会ってからのお楽しみですね」


 不安そうに呟くティリスに満足そうにミーリアが答えた。


……



「おや? ミーリアさんどうなさいましたか?」


 探索を続ける二人にドラスが声を掛ける。


「ああ、ドラス殿、ユーマ殿を見なかったか? 姫様がお会いしたいとのことで捜しているのだ」


「ではこちらの方がティリス姫ですか、遠路はるばるお疲れ様です、私は竜騎士隊隊長を拝命しておりますドラスです、お見知りおき頂ければ幸いです」


「ティリスと申します、こちらこそよろしくお願い致します」


「ユーマ殿でしたら先程花壇の方に歩いて行かれましたが……」


「そうですか、ありがとうございます」


「お気を付けていらっしゃって下さい」


 ドラスに礼を言い花壇に向かう、春も間近な城内の花壇にはちらほらと花が咲いている、その中に花を摘む竜人の少女とユーマの姿があった。


「ユーマ殿、何をなされてるのですか?」


 ミーリアに声を掛けられユーマが顔を上げる。


「ミーリアさんお帰りなさい、無事に帰って来られて安心しました、えっと……そちらの方が……もしかして……?」


「はじめまして、ティリスと申します、あなたが……ユーマさんですか?」


「はじめまして、僕がユーマです、ティリス姫も遠路はるばるお疲れ様でした、お風呂の準備とかもしていますから旅の疲れを癒して下さいね」


 にっこり笑うユーマにティリスが尋ねる。


「あの、マリアさんから伝言があるのですが……」


「えっ? マリア姉さんから? って……なぜティリス姫がマリア姉さんの事を?」


「実は……」


 驚くユーマにティリスが経緯の説明をする。


「てことは僕を心配して金の国まで来てくれてたのか……」


「帝国の皇帝陛下から呼ばれたとかで金の国で別れてしまいましたが……でも、ユーマさんが元気だって分かれば喜ぶと思います!!」


「うん、後で僕も手紙を書くことにするよ、でも、マリア姉さんが誰かと一緒に旅をするって……何だか意外だな……」


「ダリスさんと仲良さそうでしたけどね……」


「学生時代の事は怖くて聞けなかったから……でも、元気だって分かって嬉しいな、ティリスさん、ありがとう」


 笑顔で礼を言うユーマの袖を花を摘んでいた少女が引っ張る。


「ユーマさま、花摘み終わったよ?」


「あっ、ごめんね、そろそろ行こうか」


「あの……これからどちらへ……?」


「この子とお墓参りに行く予定で……」


 ティリスとミーリアがハッとした表情になる、ティリスが自らの二の腕を握りしめおそるおそる口を開く。


「私も……ご一緒していいでしょうか?」


「ええ、よろしければ……」


 どことなく気まずい沈黙の中四人が墓地に向かい歩く、城の裏手の墓地、手入れの行き届いた墓石が並ぶその先に、墓地には異質な大剣を突き立てた一角があった。

 花束を持った竜人の少女が小走りで大剣の前に進み花束を供え、熱心に祈りを捧げている、その横からユーマが近付きそっと酒瓶を供えた。


「あのお墓は……?」


「火の国の前騎士隊長、『不死者ノスフェラトゥフリード』様のお墓です」


「あの子は……戦場で捕らえられていたのをフリードさんに救われたらしいです、今日はそのお礼がしたいとお墓参りに」


 ユーマが説明しながら振り返るとティリスの瞳からポロリと涙がこぼれた。


「あ……す、すいません……我が国がしでかした罪……この場を借りて深く謝罪をさせて頂きたく存じます、本当に申し訳ありませんでした」


 ティリスの頭を下げての謝罪を祈りを終えた少女が止める。


「あやまっちゃダメ、フリードおにいちゃんが怒る『戦争も喧嘩もやって終わったら恨みっこ無しだ、どっちが勝っても勝負は勝負恨み言をもちこすな! 酒が不味くなんだよ』ってまえに村にきたときにいってた、だから、わたし、なかないもん……フリードおにいちゃんがおいしくお酒呑めないもん」


「この戦争で双方に大きな犠牲が出たのは事実です、僕も、沢山の人を殺めてしまいました……」


 ユーマが震える掌をぐっと握りこむ。


「そして……その中にはティリスさんのお父さん、テアドロス卿も含まれます、恨まれても当然ですし、償おうとして償えるような罪ではないです……」


「私共には持つ恨みなどありません、そして、先王の暴走を止めて頂いた事に感謝します、もし願えるなら、互いに手を取り合える未来の創造が亡くなった人達への手向けになることを願いたいです」


 俯く二人の手を少女が手に取り結ばせる。


「おかーさんがいってた、『喧嘩したら握手して仲直り! それで全部解決』って!」


 堂々とした少女のドヤ顔に二人が思わず吹き出す。


「うん、そうだね、皆がそうできたらいいよね」


「それを実現するためにしっかり気合い入れて、今日の大魔王陛下との謁見に臨まなきゃ!」


 気合いを入れるティリスに呆気にとられるユーマ。


「っと……姫様、そろそろ準備をしなければ午後からの謁見に間に合いませんよ!」


 ミーリアのウィンクでユーマが狙いを察する。


「そうですね、ちゃんと準備をしないと……それではユーマさん、またお会いできたら嬉しいです」


 ティリスがお辞儀をしてミーリアに連れられていく……。


「ミーリアさんもラスティさんも……毎回僕を使って遊んで……悪戯するのはいいけど、その後のフォローを僕に丸投げなんだよなぁ……」


 ユーマが深い溜息をつきながら少女と共に墓地をあとにした。



……



 城の会議室で真っ赤な顔をしたティリスをユーマが必死にフォローしている、周りを囲むレイア達がそれをニヤニヤと見つめて楽しんでいた。


「ミーリアも意地悪です! 最初にユーマさんが大魔王陛下だって教えてくれてもいいじゃないですか!」


「いや、姫様、これも通過儀礼のようなもので……」


「謁見した人大体同じリアクションだものね~」


 謁見の間で取り乱したのが余程恥ずかしかったらしい、ティリスは恥ずかしくてユーマと目が合わせられないようだ。


「まあ、僕もこういうのは慣れてますから、そろそろ顔を上げて下さい」


「ユーマさんもあの場で言って下さっても……」


「それは……ま、まあ、とりあえず会議を始めましょう」


 何とか話を逸らして本筋に戻す、ティリスも不満げながらもそれに従った。


「さて、今回の戦争からの王国の不意討ち、見る限り王国の筋書き通りって感じね……ティリス姫はこの戦争の前後で何か見たり聞いたりしたことは無かったかしら?」


 レイアの問いにティリスが答える。


「今回の戦争の原因として、まず、父が大罪の加護を得たこと、そして、どの筋からかは分かりませんが、魔剣ソウルイーターを入手したことにあります」


「戦場でチラッと見たけどやっぱりあれだったのね、多分王国に回収されてるんだろうけど……元々王国で封印、保管されてた物だから、王国が魔剣を渡して戦争を煽り、その隙に漁夫の利を掻っ攫ったって事ね……」


「特徴を聞く限り私や水の国の女王様を襲った犯人の持ってたのもその魔剣っぽいですね……」


 ラスティが口元をなぞりながら考え込む。


「父は元々は慎重に事を進めていたようですが、大罪に憑かれてからは人が変わったようになりました、急な方針転換に異を唱えたミーリア達は魔法で操り人形にされてそのまま前線に……」


「大罪に憑かれたのも王国の差し金なのかな……?」


「確かに、そう考えたら辻褄が合うわね」


 皆が考え込む中ミーリアが口を開く。


「魔法で操られている中で記憶が曖昧なのだが、前線に送られた際に人族の魔術師を多数見た覚えがある、なにがしかの協力関係にあったのは確かだな」


「ドラスが言ってた大規模転移の術者も王国からの貸し出しだった可能性大ね」


「あと思い当たる事は……王国軍の転移とほぼ同じタイミングで

ラスティさんと水の国の女王様が襲われ、大罪の力を失った……」


「そういえば襲ってきた相手が『暴食は口に』とかなんとか言ってたような……」


「大罪の加護を魔剣に取り込んだ……本来儀式を行って徐々に引き剥がすものだけど魔剣の力で無理矢理に引きずり出したのよね……ラスティも一歩間違えば死んでいた可能性もあるわ」


「かなり危なかったんですねぇ……助けてくれたミーリアちゃんに感謝ですね」


「いや、結局傷を負い加護も奪われた、もう少し早く反応できていたら……な……」


 落ち込むミーリアをラスティが励ます。


「……とりあえず王国が大罪の加護と魔剣を使い何かを企んでいるのは明白ね……王国内の大罪は既に狩られていると見ていいわ、だとするとあとは帝国の『怠惰』行方不明の『強欲』この二つね……全て集めてしまったら……。

 とりあえずおあつらえ向きに今マリアが帝国入りしているわ、連絡を取り合ってあちら側の内情を探っていきましょう、その間に我々は魔界の統一を進めます、あとは木の国と金の国、金の国は中立を貫くだろうから木の国との交渉を進めていきましょう」


 会議を終え、皆が自室に戻る中、ミーリアがレイアを呼び止める。


「レイア殿、ちょっといいか?」


「? なにかしら??」


「魔剣に大罪の加護を全て集めたら……一体何が起こるんだ? テアドロス様も魔剣を手にしたときに言われていた、あの剣には武器以外の何かがあるのではないか?」


「……あの剣は……鍵になるのよ……」


「……鍵?」


「ま、今は知る必要の無い事よ、まだ確証も持てれないからやめておくわ……」


「勿体ぶってくれるな……まあいい、話す気になれば話してくれ……」


 ミーリアが一礼して部屋に戻る、レイアが椅子に腰掛け天を仰いだ。


「……神界……か……」


 呟いた言葉が明かりの消えた会議室に吸い込まれた。

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