運命の赤い糸
――キモイキモイキモイ
何度連呼されても、俺様のハートは強化ガラスだ! びくともしねぇ。
「さぁ来い! 幼女! そんな剛毛なクマなんぞより萌え萌えの君に用があるんだ! 恥ずかしがる事などない。俺様が全て受け止めてやるから」
『は?』
「だから飛び込んでおいで、プールにダイブするように、俺の心の波にも……ダイブすればいい!!」
幼女の白い髪が怒りの象徴のように静電気を帯びながら、ブワッと空中に広がる。
これは『怒りのスタイル』なのかもしれない。てか怒りそのものだな!
そういう所もそそられるんだよな!! 心にキューピットの矢が刺さりまくった俺はこの呪縛から逃れられない。
「たまらねぇ」
『……』
俺はホストの吾豪……しかし今はただの幼女コレクターになってしまった。
この幼女の為なら人生を棒に振ってもいい位だ。例え職を失い、ホームレスになってもいい。
俺は後悔などせん!
『ああああああああ! もうあんたの心の声なんか聞きたくないのに……何で聞こえるのよぉ……』
「うむ……それこそが運命と言うものだな! 俺達は運命の赤い糸で……」
『いやあああああああ! 聞きたくない! うわああん』
「泣いているのか? そそるなあ……素直に運命を受け入れるんだ。ふふ」
『ロルゥ。この変態にお仕置きしなさい! ロルゥ? なんで飼い主のあたしの言う事聞かないのぉ?』
「ふふ。俺に恐れをなしたか? それともロルさんよ、お前が身代わりになり俺の奴隷になるのか?」
クウウウウンクウウウウン
俺の変態な発言と行動に、強気な『森のくまさん』のロルも震えている。
動物というものは身の危険を感じると、無意識に察知しながら自らを守る。
賢明な判断だと言えよう!
しかし凄い変わりようだな、先ほどまで『俺様』を敵と見なし餌にしようとしていたロルが、今では見た事もない程震えている。まるでそれはクマの赤ちゃんだ。
「形勢逆転だな、幼女。お前達は俺様の妄想という名の扉から逃げる事など出来ない。観念しろ」
『きもぃいいいい! うわああん。あたしは幼女じゃないから!』
「ん? だって俺様は君の名前も何も知らないから幼女の一択しかなかろう。それとも俺様に名を語るのかい?」
『……それは嫌だ』
「ほー、じゃあ幼女で決まりだな。俺様の妄想の中でおかずにさせていただきまーす」
『え?』
「だって名前教えてくれないからさ、それくらい良くね? 減るもんじゃないし。それとも名前教えてくれんの?」
『ううう』
ああ……何て快楽なんだろう。
先ほどまで攻撃態勢に入っていた幼女がドンドン崩れていく。なんという愉悦。
幼女は涙をいっぱい浮かべながら、俺様の言葉に翻弄されている。
それもそれで可愛いし、そそられる。
――おかずに決定だな!――
「いやあああ」
『じゃあ名前教えろよ? そしたらおかずにするのやめてやる』
「……本当?」
『本当も何も俺様の心を覗けるなら、嘘か本当か分かるだろう?』
「……うん」
よわよわしく呟く幼女は攻撃態勢を解きながら、目を瞑り集中させる。
純粋な俺様の心の奥の奥まで隅々確認しているのだろう。こいつは何て疑い深いんだ……。
なんて失礼な幼女だ。
そんな事を考えていると、幼女は目を開き、俺様を見つめ呟く。
『大丈夫みたいだね……』
「当たり前だ。俺様に嘘は似合わない」
『幼女と言われ続けるのキモイし……仕方ないよね。あたしの名前はリリア』
「リリアか……よろしくな。俺様は吾豪というがゴウでいいぞ」
『ゴウ……』
「ああ。その方が呼びやすいだろ?」
ニッコリと微笑む俺様は紳士そのもの。これで幼女リリアのハートは掴んだとみた。
ああ……よだれが出そう。
『ゴウ……心の声聞こえてる。やっぱ変態。ロルゥ、今日の晩御飯はゴウにしましょう。ステーキにするわよ』
ギャウギャウ
二人の瞳が輝く、俺様を調理する為に……
「おおう」