キャラ崩壊
ユラユラ揺れるランプの向こうに映るのは『幼女』の姿。
あんな外見でサイコキネシスみたいなの使えるとかチートかよ!?
……問題は、そこじゃないってか?
ここは何処だ? 日本なのか?
そんな疑問に頭を抱えながら、単細胞な俺様はある一つの結論を出す。
俺様の天才的な存在が崩れてしまう事の方が大問題という事に!
勉強が苦手な俺様に考える事は似合わない。
俺様はただ逃げていただけだ。何もしていない。
店を出て帰ろうとしただけだ。何故こんな目に遭ってるんだよ……。
――俺様の存在が崩れる――
『吾豪』は源氏名だ。その名を語る事により、女を金づるとしモテモテ人物を作り上げ、演出をする。
いいたくねぇぇえぇぇえよ! 『亜門』なんて自分の名前嫌いなんだよぉおおおお! あ……
俺様は……『吾豪』そういう事にしとこう。うん。それが一番いい……はず。
俺様自身の為に。
そんな脳内の自分との会話を邪魔するように、耳元に囁きかけてくる声に驚く。
『お兄さん……ごめんね。ロルが失礼な事して』
これは幻聴か? ビクと反応する体と震えが止まらない。
いくら俺様が『幼女』好きでも……血まみれになるとかは、勘弁だからな……
『大丈夫だよ……安心して』
フウと耳に吹きかける吐息を感じながら、恐怖よりも猛烈な興奮状態に変化していく。
まるで、近くにいるみたいな錯覚を感じてしまう程、リアルなんだ。
この『空間』のまま、留まって欲しいと思いながら、夢に就きたい妄想に駆られる俺氏!
『お兄さん? 聞いてる……?』
おおう……聞いてますよ、勿論! 御馳走様です! はい。
『……キモ』
その一言が俺様の心を崩壊させるのは間違いない事実。
俺様は幼女に何もしてないし、会話もしていない。人気№1のこの『吾豪』様をキモだとぉおおおお?
こんのぉおおおお、糞ガキィイイイイ!! 可愛いからって舐めやがって。
『……糞ガキで悪かったね……人間に言われたくないんだけど』
普通に話しかければいいものを、何故耳元で囁くように呟いてるんだよ。
生意気なのに、そんな声で冷たく言われると、惚れちまうじゃねーか。
『や……だからキモイって』
「え」
さっきから変だ。俺様と会話している訳でもないのに、何故心の声に反応してるんだ。コイツ。
――嫌な、予感がする……
うん……まさかこれって……
『お兄さんの心の声……丸聞こえ』
囁きが騒めきになり、鼓動が、息が……俺、死ぬの? これ。
誰かたすけてええええええええええ……