俺のパラダイスを返してくれ……
疲れた、本当疲れた……
売れっ子のホストで月収1億以上の俺様の名は吾豪って言うんだよな。
馬鹿な奴らは漢字見るとさ……読めねぇ訳よ!! はぁ? って感じな訳。
店の奴らにもさ……
『あ……なんでしたっけ?』
だとおお?? 俺№1だぞ! おい……その態度はねぇだろうが……
はたきまわすぞ!! てめぇ!!
――そんな事を思いながら営業スマイルする俺――
表で客がいんのにさ、暴言なんか吐ける訳ねぇだろうが……
めんどくせえよ、実にめんど。
あ、これ俺の口癖だからな、夜露死苦!!
――げっ、やべぇ……元ヤンなのがばれちまうじゃねぇか――
あああああ、実にめんど……ま、いいか。
ケラケラ内心で小ばかにする俺様。
「君達、馬鹿なの?」
にっこり呟くと、固まる訳よ……
初めから固まるんなら、覚えとけよ。
――俺様の名前をおおおお――
今日の女は蜂蜜だ……
甘い甘い金の匂いがする。
――ちょろい、ちょろすぎる――
口説くなんてめんどな事はしねぇよ。所詮は金づるだからな。
そんな心の呟きなど、誰にも届かずに仕事に入る俺。
「いらっしゃい!! みおりちゃん♪久しぶりだねぇ。元気してた?」
いつもの俺とは違う俺様が出来上がる瞬間、これこそが快楽。
『あっ……吾豪ぅううう!! お金持ってきたよん♪』
――何て俺カッコいいんだろう。やはり№1は一味違うよなぁ!――
「みおりちゃん大丈夫? 無理してない?」
甘い声は蜜の味……どこかで聞いたようなセリフだが気にしても無駄。
そんな心の下衆さなんて気付けない女だけど、可愛い声してるから興奮してしまう俺氏。
『いいんだよぉ。吾豪の為だもん』
こいつは上客な訳よ、19の癖に金1000万月で稼いでる風俗嬢な訳。
俺様にめろめろでさぁ。喜ぶしかねぇだろ。
演技で鍛え上げた声劇の味、とくとみるがよい! ははは。
「俺さ、みおりちゃんの事大切にしたいんだ……どうこの後アフター行こっか?」
この一言で女はイチコロ。甘い瞳で見つめてきて、抱きつく訳よ。
本音なんて言える訳がねぇ。お前は金づるなんてな。
そんな事を考えながら、心から漏れる本音に逆らう事なんてできねぇ……
口に出さなきゃオールオッケーな訳! だからいいんだよ。
――女になんて興味ねーよ……金だろ金――
最低なんて読者から聞こえてくる言葉はフル無視に決まってんだろー。
ひがんでんじゃねぇぞ。俺は女なんかに困ってねぇもん。
一週間でコロコロ女を手玉にとってるからなぁ……
月曜はみおり、火曜は文月、水曜はかほる、木曜はまい、金曜は社長の愛羅。
土日は俺の稼ぎを確認し、部屋に札束バラまく自由の日てな訳。
そうやって切り替えねぇとこの仕事なんてやっていけーよ。
これが俺、吾豪の毎日。幸せ、日常。
金づるが俺様を引きたたせ裕福にさせてくれるつーもんだ。
そんな俺が、なんでなんだよぉおおおおお……
どーなってんだ、これ……
――発狂しか出てこねぇ――
見えるものは変な生き物に支配された店の中……
俺はヒステリックになりながら、発狂するしかなかったんだ。
「あああああああああああああ!! なんでだよぉおおおおお!!」