神器無双
そこはどこかの南の島だった。
とても気持ちがいい。
暖かい風。
島の中を探索すると飲み水はすぐに見つかった。
きれいな湧水がでている。
「さすがにこのまま飲むわけにはいかないわよね。」
そこでマジックボックスの中から神器を取り出す。
「濾過装置!」
これはどんな水であろうと飲めるようにできる水の神が作った神器だ。水の神は酒が大好きで酔っぱらっては色々な神器を作っていた。これは本来泥水を酒に変える神器を作ろうとしたものだった。
ただ、あまりに酒ばかり飲んでいるからと、天界神に怒られ泥水を水に変える神器だと言い訳をして私に頼まれたと押し付けてきたのだ。
この神器は設置型のため水辺に置いておけばいいので力はいらない。
給水用のホースを泉にたらし蛇口をひねる。
勝手に必要な分だけをひっぱりあげ、きれいにろ過された水が流れ出てくる。
水を手ですくって飲んでみる。
「美味しい。」
思わず声が出る。
天界で飲んでいた水よりも全然美味しい。
こんなに美味しい水があるなんて。
いくらでも飲めてしまう。
「ふぇ~。水だけでここまでお腹がいっぱいになるなんて。」
人間界あなどれない。
さて、これで水は確保できた。
次はとりあえず食べ物の確保をするか。
あとはできればふかふかのベットで寝たい。
どうせ地上に落ちてくるならば家の中のものも持ってくれば良かった。
そうすればもっと快適になったのに。
まぁない物をねだっても仕方がない。
おっとその前に。
私はバックからダンジョンの種を1粒取りだす。
このダンジョンの種は本来魔力を持っている人間にしか使えない。
でも、実は神器と組み合わせることでダンジョンを作ることができるのだ。
水の神のろ過装置で作った水には若干の魔力が混ざっている。
その魔力の水に浸してから地面に埋めるとおよそ1日でダンジョンができあがるのだ。
ただ、ダンジョンと言っても魔力がないものが作成しているため1階層で魔物はでない。
つまり、日当たりは悪いけど簡易の宿泊施設ができるのだ。
ダンジョンを地下にして、後はその上に小屋でも建てれば雨風がしのげて安全な寝床が確保できる。
コップをとりだしダンジョンの種を水につけ食料の確保へむかう。
海があるということは、魚がいるはずだ。
そう思って海岸へ行くと1匹のスライムがいた。
まずい…今の私ではスライムにすらてこずる可能性がある。
とりあえず逃げようかな。そう思っていると、
「ぴっ?」
気づかれた!ただ襲ってくる気配はない。
なんだこのスライム異様に可愛い。
もしかして、人を見たことがないのか?
だから警戒心がないのか?
「おいで。」
そう言って手を差し伸べてみる。
そこで初めて少し警戒をしている。
別に攻撃をしてこないならば放置でいいだろう。
そのまま海岸で釣りをすることにする。
☆
釣りを開始して1時間。
残念な報告をしよう。
1匹も釣れない。
そもそも釣り竿の神器は重くて使えず、形を参考にして釣り竿を作ったのはいいが、まったく釣れる気配がない。
海の中を見ると魚は泳いでいるので私の腕が悪いだけのようだ。
「う〜ん。このままだと水しか飲めずに死ぬな。」
さすがに飢え死には嫌だ。
草とか食べれるものを探した方がいいか。
それとも…鞄の中になにかないかと探してみると。
音の神がクラッカーがわりに作った音爆弾を発見した。
音の神がパーティ用にと調子にのって大量に作ったのだが、1個破裂させたらば神界中に響くほどの破裂音が響き渡り使用不可になったものだ。
本当に神様たちはアホが多い。
自分の力がどれだけすごいかわかっていないので加減ができないのだ。
試しに点火して水の中に投げ入れてみる。
確かこの導火線は水の中でも消えないとかっていう神様独自の技を使っていると自慢していたはずだ。
少し離れたところへ避難し、様子をみてみる。
10秒後。
あれ?爆発しない。
私が近づいていったその時!
「BAAAAAAAAAAAAAAAAN」
ものすごい破裂音と共に海がはじけ飛んだ。
そのまわりにいたと思われる魚がいっきに浮いてくる。
うん。使いどころには気をつけよう。
そうして食料も手に入れた。
かなり順調だ。
あまった魚は天日干しにして干物にでもしよう。
あとは…。
寝床に戻って美味しい野菜と小屋をたてる準備をしよう。