神の世界も実はブラック企業なんです。
「ふぅ。今日も頑張って異世界に転生させなきゃ。」
私はいろいろな異世界に転生や転移をさせているこの世界の全知全能の神…の下っ端の神。
主に扱っているのは異世界への転生、転移業務。
かっこいい男の子にはチートな能力を授け、嫌いな男にはハズレの能力を授ける。
女の子でも私よりもブスには優しくいいスキルをあげ、可愛い女の子にはハズレかエロい能力を授けてやる。
そんな簡単な業務だ。
ただ毎日毎日、ろくでもない理由で転移や転生を希望する人間がやってくる。
自分から迷いこんでくる人もいれば、神様のうっかりで殺される人もいる。
異世界人がクラスごと異世界へ転移なんて時には、もうわざわざ私の前を通さない時もある。
めんどくさいので適当に上から下までスキルやステータスを割り振って終わり。
こいつらは説明がないから楽だけど流れ作業で一人数秒でこなさいといけないのでかなり疲れる。
こういった場合見てて面白いのはだいたい底辺スキルを身につけた奴。
何人かに一人は魔王討伐とは違った、面白いことをやってくれる。
ただ旅をしているだけなのに色々なトラブルに巻き込まれていくのよね。
後はもう人間以外に転生させてやるやつもいる。
魔物とかに転生している奴はかなり面白い奴らが多かった。
もうここまでくると神様たちの娯楽だ。
神様にとっては人間も魔物もみんな平等だ。
正直頭の弱い神様だと時々魔物と人間の区別がついていない残念な神様もいる。
ゴブリンと人間の区別がつかない神とかもう本当に大丈夫かと思う。
私も異世界に転移して
「ここは私に任せて逃げて!」
とか言ってみたい。
一応神様だからチート能力ありすぎて戦うことなんてほとんどないんだけど。
それに私が人間界に行ったらばだいたい力加減がわからなくて国を一つ焼き払うくらいしかできない。
軽く薙ぎ払っただけでも山が吹っ飛ぶ。
だって、個人をどうするかとか考えるのもめんどくさいし。
他の神様みたいにいちいち一人を見て恩恵を与えるとかそんな暇じゃない。
もう仕事が山積みなのにいちいち気にしてはいられない。
それならば何か問題があってもざっくりと滅ぼしてしまったほうが気分的にも楽だ。
あとこっちに連れてこられるので多いのは神様のお気に入りってやつね。
神様のお気に入りはもう、現世で死ななくても成功を約束されていたような奴ばかりだ。
だいたい頑張り屋さんが多いけど。
ほとんどが私と同じブラック企業勤めが多い。
他の神様はいいわよね。
「こいつ、間違って殺しちゃったからチートな能力つけてこいつの世界よりも発展してない世界に送っておいて。設定は、そうだな。だいたい5歳くらいで記憶が戻るようにしといてくれればいいから。」
そういうだけで、終わりなんだから。
毎回毎回、色々なチート能力を考える私の身にもなって欲しい。
最近は、数が多くて分単位で業務をこなさないと私の仕事が終わらない。
本当にブラック企業も顔負け。
どこぞの一流企業の社長かと思ったわ。
この神の世界は残念ながら夜がない。
だから1日24時間いつでも関係なく転生者や転移者を送り込んでくるのだ。
みんな私の仕事楽だろとか思っているせいか、休憩時間もとれないときがある。
24時間365日本当転生者に振り回されっぱなしだ。
神様引退したらばどこかの森の奥でゆっくりお茶でもすすりながらのんびりしたい。
でも現実は…。
「あっこれさっき間違って殺しちゃったから適当に転生させといて。」
「うちの見ている世界の神官がクラス転生はじめたから適当にステータス割り振っておいて。」
「私の可愛いあのこにいいチート能力をよこしなさい。」
もう、ほんとめんどくさい。作り笑いしすぎて最近顔のしわが気になる。
だいたいマジックボックスとか成長2倍とか、最強運とか適当にそのあたりか、チート回復、スキル強奪でも渡しておけば文句を言われない。
ただ、そんな中でも私の気分では固有スキルに淫乱とか男性ホルモン増大とか、ネタスキルを作るのを忘れない。今までで一番ひどかったのは勇者で転移されているのに、固有スキル育毛をネタスキルとして渡したらば、異世界の王様から速攻で街へ解放されていた。
ちなみに、その勇者は若ハゲだったのが治って自信を取り戻した結果魔王討伐はしなかったが、異世界ハーレムを作って楽しく暮らしている。
そう言えば時々魔王などや大賢者なども転生してくる。
あいつら強いが常識がなさすぎる。
だからあえて、あいつらが作った偉業の衰退した世界に送ってやっている。
私はいつも心の中で
「ケケケ…お前の達成した偉業を全部白紙にした未来へ送ってやる。ざまぁ。」
そう思いながら送り出すのだが、だいたいあいつらチートすぎてその後の世界でも活躍しやがる。
本当にダメだよね。チートキャラって。
あいつら生まれもって英雄とかの才能があるんだよ。
正直私なんかよりも才能も夢も行動力もあふれている。
私なんてただちょっと、可愛くて神様に生まれてきただけだもん。
はぁ。そんな余計なことを考えながらも今日の予定を見る。
今日も転生者が300人くらい来ている。
一人5分くらいで片づけていくしかない。
そうしないと私の休憩時間がなくなる。
正直寝る時間がない。
別に神様だから寝る時間は必要ないんだけど。
だけどさ。こんなブラック企業本当にもう辞めたい。
私も異世界転生してゆっくりとかさせてくれないかな。