アイの鈴
男性2人、女性1人、計3人用声劇台本です。
規約等はありませんが、使用の際ご連絡を、録画を残せる媒体なら録画残しをして下さると、大変嬉しいです!
(所要時間15分)
<キャスト>
ミヤ(女):
バン(男):
チュン(男):
ミヤ
「貴方は覚えていますか。
土砂降りの雨の中、震えながら泣き叫んでいたあたしの事を。
手を差し伸べ、あたたかく迎え入れてくれた事を。
そして……最後まで、その手を離さないでいてくれると、約束した事を」
間
バン
「でさぁ、やっぱどうしてもあそこのコード進行が上手くいかなくて何度も練習してんだけど、指がつるんだって」
チュン
『何だよ。
それ、指定した俺に文句言ってんのか?』
バン
「いや、そういう訳じゃねぇけど…」
チュン
『じゃあどういう訳だ?
説明してみろよ』
バン
「うん?
チュン、何か機嫌悪ぃな。
何かあったのか?」
チュン
『……別に』
バン
「まぁいいや、あそこは確かに進行ムズいけど、やっぱ決まったら最高にカッコイイと思うんだよ!」
チュン
『…そうだな。
じゃあやっぱ、バンが才能無いだけじゃね?』
バン
「おっまえ、そんなあっさり才能が無いとか言うなよ〜」
チュン
『しょうがないだろ、事実なんだし。
つーかいい加減切っていい?
もう寝たいんだけど』
バン
「はぁ?
夜はまだまだこれからだろっ!」
チュン
『ばーか。
俺、明日の朝早いんだよ。
いつまでもお前に付き合ってる暇無いっての。
じゃあな』
バン
「え、ちょっーー…!
何だよ…あいつマジで切りやがった。
言いたい事だけ言ってさっさと切るとか……くそっ!」
SE:鈴の音
ミヤ
「あ、電話終わった?」
バン
「んーと……今何時だ?」
ミヤ
「ちょっと待ってね。
えっと、今はーー…」
バン
「なぁんだ、まだ日付け変わってねぇじゃん。
こんな時間にもう寝るだなんて、チュンの奴、根性ねぇなあ」
ミヤ
「あはは、ホントだね!
夜はまだまだこれからだもん。
寧ろ、これからがあたし達の時間って言うか!」
バン
「しっかし、人の事才能ねぇとか好き勝手ほざきやがって…
チュンめ…見てろよ、ぜってぇ後で吠え面かかせてやる!!!」
ミヤ
「ふふふ、バンったら、ホントに負けず嫌いなんだから。
でも、練習するのはとっても良い事ね。
フギャッ!?」
バン
「あぁ、ミヤ着いてきてたのか、悪い悪い。
ぶつかってはない筈だけど……どれどれ?」
ミヤ
「あービックリした!
急にギター振り回すから、危うく当たる所だったよ〜」
バン
「んー、大丈夫…そうだな。
おっし!
んじゃー今夜も、ショータイムの始まりだぜっ!!!」
ミヤ
「おおっ、待ってましたっ!」
バン
「っと、その前に飲み物取ってこよ。
あぁ、ミヤはあるか?」
ミヤ
「うん、あたしはさっき入れて貰ったから」
バン
「ん、じゃあちょっとだけ待ってろよな〜」
ミヤ
「はぁい!……ふふ。
バンってホント、賑やかで楽しいなぁ!
でも、またベッドの上で飛んだり跳ねたりしたらお隣りさんに怒られちゃう。
壁をコンコンされるだけじゃちっとも気付かないんだもの…あたしが教えても分かってくれないし。
いつも、頑張ってお返事してるんだけど…伝わってないみたい」
バン
「ミヤ、待たせたなっ!」
ミヤ
「あっ、おかえりなさい!」
バン
「おっしゃー、じゃあ早速アンプに繋いでっと…」
ミヤ
「えぇっ、バン!?
アンプって…それは流石にマズいよぉっ!!!」
バン
「よし、まずは指慣らしに、蛍の光っ!!!」
ミヤ
「えぇっ、何で指慣らしでその選曲!?
っていうか、ダメだってばぁ〜!!!
またお隣りさんにうるさいって怒鳴り込まれちゃうよっ!!!」
バン
「いっくぜぃっ!!」
間
チュン
「…で?
ま〜た隣りの姉ちゃんに説教されたのか」
バン
「はい………ふへへ」
チュン
「お前さぁ、それわざとやってんだろ?」
バン
「いや、そんな事は………うん、まぁ、無きにしも非ずっつーか…」
チュン
「でもそれ、絶対に悪印象しか与えてないぜ。
毎度毎度、あの美人な姉ちゃんにうるさいってクレームつけられてんだろ?」
バン
「そうだけど…いいんだよ。
どうせ彼女は、俺にとっちゃ高嶺の花だもんな」
チュン
「だからって、毎晩の様にご近所迷惑してたら、悪印象しか与えてないんじゃね?
ま、今更もう取り返し付かないんだろうけど」
バン
「うっせぇな〜…」
SE:鈴の音
ミヤ
「ただいま〜!
あ、チュン君来てたんだぁ、いらっしゃい!」
チュン
「あれ、ミャーちゃんじゃないか…そう言えば見掛けないと思った。
よしよし、今日も元気そうだなぁ」
バン
「おいチュン!
何度言ったら分かるんだ!?
ミャーちゃんじゃねぇ、ミヤ、だ!」
チュン
「そんなのどっちでもいいじゃん、大した違いは無いんだし」
バン
「違うっつーの!
…ミヤ、こんな時間まで散歩してたのか?
もう暗いんだから気を付けろよな、女の子なんだから」
ミヤ
「うん、ありがと!
心配かけてごめんなさい」
チュン
「女の子…ねぇ?」
バン
「何だよチュン、何か言いたい事でもあんのか?」
チュン
「いや…なぁバン、女の子って言うんなら…この際、ミャーちゃんでいいんじゃないか?」
バン
「なっ!?」
ミヤ
「やだ、チュン君ったら!」
チュン
「ははっ、ミャーちゃん、俺の後ろに隠れるなんて…照れてんの?」
バン
「ミヤだっつーの…
つうか、そういう冗談はいいよ。
それよりもーー…」
チュン
「あぁ、そうだった。
来週のライブなんだけどな…」
バン
「大事な話って言ってたよな。
何だ?
あ、もしかして、あまりに俺らのファンが多くてワンマンになったとか!?」
ミヤ
「あっ、チュン君、大事なお話があって来てたんだ…
じゃあ、大人しくしておかなくちゃ」
チュン
「それならよっぽど良かったんだけどな……」
バン
「おいおい、勿体ぶるなぁ」
チュン
「…ライブ……」
バン
「うん?」
チュン
「中止、だってさ」
バン
「…え?」
ミヤ
「…中止……?
そんな、だってバン、ずっと張り切って練習してーー…!」
チュン
「…ごめん、昨日……ホントは、それを伝えようとして電話したんだけど…言えなかった」
バン
「な、何でだよ!
だって、開催予告だって1ヶ月前からしてたし、チケットだって」
チュン
「ライブハウスの規定基準違反、だってさ」
バン
「…どういう事だ?」
チュン
「……」
バン
「チュン!!」
ミヤ
「ちょっとバン、落ち着いて…
ちゃんと、チュン君の話聞こう。
ね、チュン君、詳しく…話してくれない?」
チュン
「…今回は、今までの実績をちゃんと鑑みての対バンライブの予定だった。
チケットもそれなりに捌けるだろうって踏んでたんだ。
でも……基準値以下、だったらしい」
バン
「…な、何だよ、それ……」
ミヤ
「チュン君、それってどういう事?」
チュン
「…俺達には、まだ早かったって事だよ……」
バン
「待てよ!
それでも、チケットを買ってくれた客はいるだろ!?
例え基準値以下だろうがなんだろうが、そんな事知った事か!
たった1人でも客がいたら開催するのが筋ってもんだろ!
赤字だろうが何だろうがよ!」
チュン
「俺だってそう思うさ!
でも…ライブハウスはタダじゃない。
それに…赤字でも決行したいって、向こうが思わなかったんだよ」
ミヤ
「そんな…」
バン
「対バン相手が…って事かよ…」
チュン
「実際、捌けたチケットの利益はかかる費用の半分にも満たなかった。
実質、残りは俺らが折半して出すしかない。
それを…向こうが拒否したんだ」
バン
「そんなのってあるかよ!
大体、今回は向こうから打診して来た話じゃねぇのか!?
今更ーー…」
チュン
「それは俺も言ったさ。
でも…覆らなかった」
バン
「そんな……馬鹿な話があるかよ!!」
ミヤ
「バン…」
チュン
「金銭面は、俺達だって正直余裕がある訳じゃない。
この業界、本腰入れてやってる奴らの方が稀だし、大抵は諦めて趣味の一環だ。
お前だってそうだろ」
バン
「それは…そう、だけど……」
チュン
「向こうの大半は学生だ、無理も言えないさ。
とにかく、もう、決まった事だから」
バン
「……そんなのって、あるかよ…」
ミヤ
「…ねぇ、チュン君。
もうどうにならないの?
だって、バンね、いっぱいいっぱい、今度のライブの為に練習してきたの!
あたし、ずーっと聞いてたから分かるよ!
バン、難しいって言ってたとこだって、弾ける様になったんだよ!」
チュン
「…ごめん」
バン
「……何で、お前が謝るんだよ…」
チュン
「相手の話を聞いて、了承したのは俺だ。
お前や他のメンバーに相談もしなかった」
バン
「…言っても、しょうがねぇと思ったからだろ」
チュン
「…あぁ。
元々、主催は向こうだった。
主催が降りると言ってるのに、俺らだけ残る事は出来なかった。
バンドメンバーに、それを強要する権利だって無いんだ」
バン
「…分かってるよ、そこまで俺だって馬鹿じゃねぇ。
チュンは、どうにかならないか、奔走してくれたんだろ…
それでも、どうにもならなかったんだって事位…分かってるけどよ!」
チュン
「……ごめん」
バン
「だから、何でお前が謝るんだよ!」
チュン
「俺には、それしか出来ないからだ」
ミヤ
「チュン君…
どうしても、もう、ダメなの…?」
チュン
「ごめん」
バン
「……くそっ!」
チュン
「おい、バン?」
ミヤ
「え、バン、どこに行くの!?
待ってっ!」
SE:鈴の音
チュン
「あっ、ミャーちゃんはここにーー…
……行っちまった、か…」
間
バン
「…くそっ……
分かってんだ、俺だって……
意欲の差があって当たり前だって事も…
求めても返って来る事を期待するだけ、無駄に終わるって事も……ちくしょう!」
SE:鈴の音
ミヤ
「あ、バン!」
バン
「でもそれで、はいそーですかって言えるかよ!!!」
ミヤ
「もー、バンったらまた…
気持ちは分かるけど、こんな夜遅くに外で叫んじゃダメでしょ?
あ、どこまで行くの!?」
バン
「あ、やべ、信号点滅…
走れば間に合うか」
ミヤ
「待ってよ、バンったら!」
SE:鈴の音、自動車のブレーキ音
バン
「…ん?
何だ、今の音……」
ミヤ
「…バ……ン…」
バン
「……ミヤ…?
ミヤ!!!!!」
間
SE:鈴の音
ミヤ
「貴方は覚えていますか。
土砂降りの雨の中、震えながら泣き叫んでいたあたしの事を。
手を差し伸べ、あたたかく迎え入れてくれた事を。
そして……最後まで、その手を離さないでいてくれると、約束した事を」
バン
「足首に着けてっと…これで良し!」
SE:鈴の音
チュン
「ふうん、なるほどな…
しっかし、急に鈴がどこで売ってるか聞いてきた時には、何の事か全然分かんなかったよ」
バン
「人間より耳がイイっていうけどさ、これならもっと分かりやすいだろ?」
チュン
「そうだな」
ミヤ
「バン、有難う!
その鈴の音のお陰で、バンが今どこにいるかすぐに分かるよ」
チュン
「それにしても、命は助かって良かった…
ミャーちゃん、これからも宜しくな」
ミヤ
「うん!
チュン君も夜中でもやってる病院探してくれたりしたんだってね。
バンに聞いたよ、有難う!」
チュン
「ほんっと、ミャーちゃんはタイミング良く返事するなぁ。
見えなくなって色々と大変だろうけど、バンに何でも言いつけるんだぞ?
元はと言えばバンのせいなんだから」
ミヤ
「ううん、あれはあたしが信号をちゃんと見てなかったのが悪いの。
それに、あたしには立派な耳があるから大丈夫。
バンのギターも、歌も聞けるもの!
だからこれからも、ずーっと、バンを応援出来るもの!」
バン
「勿論何でも言う事聞くさ!
ミヤは、俺の大事なファンで、大事な女の子なんだからな!」
ミヤ
「えっ…バン?」
チュン
「ははっ!
確かにミャーちゃんはバンの大ファンだ。
だからこその、目の代わりにその鈴、なんだろ?」
SE:鈴の音
バン
「あぁ!
大事なミヤに贈る、俺からのアイの鈴、だよ!」
-end-
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