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独白

 これまで。こんな感情があるなんて知りもしなかった。間違っても恋などではない。しかし恨とも言いかねる。

 私は、ずっとこの世の全てを憎みながら生きてきたはずなのだ。誰も、何も、私に報いてはくれなかった。だから、私にはこの世を破壊する権利があるのだ。

 実際、私はあの少年をもにくまなきゃいけないはずだった。魔王のかたわらで勇者を名乗る、あの小ざかしい少年を。突然近づいてきて、同情をかけてきたのだ。忌まわしい以上のものじゃない。

 だが、解せないのだ。なぜあの時の少年に、私がいてきてしまったのか。私は、彼とも、そして世の中の誰とも分かりあえない。分かり合えるはずがないのに。



 私は、紙くずやペットボトルのちらかった部屋で、車椅子の上、孤独に横たわっていた。電気さえつかず、窓が小さいせいで昼でも薄暗い。

 不精ずぼらな生活をしているからではない。する必要がないのだ。

 なぜなら、もうすぐ私はこの世界からおさらばできるのだ。更にはこの世界そのものを消去ることができる。

 不意に笑い声が、灰色の壁にこだました――自分でも恐ろしいくらいの幸福感だ。私の幸福が真実になるのも、すでに時間の問題であるというのに。

 魔王を捕えることには失敗したが、その手先の始末は誰にも知られずに済んだ。

 魔王が必要なのだ。マギア・ユスティシアにあれほど警戒せずに近づけたのは自分でも驚きだった。無論、何かの策があってのことなのだろうが、絶大な魔力を与えられた私に魔王ごときが勝てるわけないのだ。


 魔王はあの学校では変人としか見られていないらしい。当然だ、世界が破滅するかしないかの瀬戸際に立たされているのに、本性を明白あきらかにするわけがない。

 しかも、翔吾たちと仲良くやっているそうな。どこまで、人を洗脳する術にたけているのか!


 一抹の不安。それは全く別の方向から襲いかかった。私の幸福が手に入れられないとか、そんなことじゃない。

 一瞬、自分が目指す目的に疑問を抱いたのだ。みずから禁じていたのに。


 あの少年のことがふと脳裏をよぎった。よぎっただけではない。

 彼がこの世界にいるという、ただそれだけの理由で、自分がなぜここにいるのか、理解できなくなってくる。私は、誰にも期待しないはずではなかったのか。全ての人間を平等に憎んでいるはずではなかったのか。それなのに、私はあの子のことを考えている――これは、信条に背いた罪だ。

 自分の胸倉を両腕でつかみ、静かにあえぐ。感情が蛇のように体の中にあって、勝手にうごめいている。

 苦しい。


「一体私に何をしたの、中村翔吾……!?」

 まるで鎖みたいに離れないそいつを殺そうとして、叫んでいた。

「私は、これ以上、この世界のことで思い悩まない……!!」

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