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闇に告げる
米倉はあせっていた。すでに、三茅とその一派ははるか闇の向こうに消え去った後。
「失敗したのね」
冷たい声が携帯の向こうから聞こえる。
「待ってくれ、まだ三茅を奪還す機会はある!」
米倉は後悔していた。もし、彼女に遇っていなければ、このようなことをそもそもする必要がなかったのだ。全てはあの時の過失にある。
――この女の要求を聴く必要もなかった……!
「役不立。使えない」
その言葉には一切の容赦がない。
「てめえ……よくも、この俺をだましやがったな!」
しかし、声はすでに死んでいた。この女を敵に回してしまった――そう理解してからは、もう全てが元には復らない。
「いや、あなたの役目はもう終わった。ここで消えてもらうしかないね」
米倉の立つ床に、光の模様が走りだす。何本もの線が重なり合い、一つの図形を造りだし、さびれた牢獄のように覆っていく。
「代替はいくらでもいるからさ……」
その現象をまるでみそなわしているかのように、彼女の言葉が終わったとき、光の粒子が米倉の体から、わきでていた。
「うそだろ、おい……うわ――