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年長者会議(途中まで)

「勇気……あの子はやっぱり、僕の想像通りだ」


「どんな想像をしておったんじゃ? 奴は奴じゃろうて」


 照と太三郎は、夜に談話室で話していた。ちゃんと灯りを付けて向き合いながら、何かを相談しているらしい。最初のセリフ通り、どうやら勇気のことについてのようだ。照は半分真剣に、半分笑いながら口を動かす。


「その身に背負いきれないほどの不幸を背負っても、人を助けようとする強さを持った子だ……。と、そう思ってたのさ」


「ほう……。お主、儂の話だけでそこまで読んでおったのか?」


「……僕ぁ天才だからね。それに、期待半分という所もある。僕は君達のことを心の底から愛しているけど、同類は一人もいなかったから」


 照は満面の笑みを浮かべて太三郎のことを親友だと思っていると告げる。その後で、フッと顔に影を差して同類がいなかったことを嘆いた。

 そうだ。照と、太三郎と、天翔と、タマ。読者皆様は未だタマのことをよく知らないとは思うが、ともかく、照の言った通りに彼と同じような者は誰一人としていないのだ。命を一つでも多く助けようという精神は同じなものの、その色は違っていたのだ。


 だが、照の言葉に太三郎は小さく首を振る。


「いや、勇気とお主は全く別だと、儂は思うがの」


「ん……そう、かな?」


「うむ。もう果てまで昔のことで朧気じゃが、思い返してみよ」


 太三郎は口に煙管を加えて、息を吸う。そうして天井を見上げて何かを思い返す。彼がその頭に思い出したものは、照との出会い。


「……もしかして、あの時のことを言ってる?」


 太三郎の言葉に、照は顔をほのかに赤くし、人差し指を突き合わせるようにして問いかける。恥ずかしくて仕方がないという顔だ。その顔に、太三郎はもちろんと答えた。


「あの時、お主は儂らに“あの薬”を盛ったじゃろうが。不老不死の薬」


「……悪かったって。相談も無しに、あんなことして。だって……」


 照は何かを思い返して、暗い顔をする。


「君達に会うまでも何百年間、苦しい思いをしてたんだ。僕は元から不死性を持ってたから。それで、苦労の果てに不老不死の薬を作った。だから……」


 と、弁明を半分含む言葉を照が続けようとした時だ。


「そこじゃ」


 太三郎が口に咥えた煙管を手に持ち、その先を照に向けて言う。その点が、最重要なのだと。


「そこなのじゃよ。お主は、不幸の果てに辿り着いた時、他を貶めようとした。他を落として自分が幸福になろうとするクズの考え方じゃな?」


「そんな言い方しなくてもよくないかな?」


「冗談じゃ。まあ話を変えて……勇気じゃが、奴は自分を犠牲にした」


 太三郎はまた、煙管から煙を吸う。


「分かるかの? お主のことは極端に言うが、許せよ? ……お主は他を犠牲に、勇気は自分を犠牲にしたのじゃ。ここじゃ、ここに尽きる」


 太三郎は灰皿に煙管の皿に入っていた煙草を落とし、その脇に煙管を置く。


 つまり、彼が言ったのはこういうことだ。不幸の果て、極限状態においての照と勇気の行動の違い。照の行動、それについては深く語ってはいないが、ともかく、彼は他を踏み台にしたのだ。その言い方は何ともであるが、しかし他に影響を及ぼし、自分の身を大事にしたのは違いない。だが反して、勇気は自分を犠牲にした。この違いは、不幸の果てにあるという共通点を鑑みても大きすぎる違いである。


(じゃが、これだけではないんじゃ。まだ、何かある。勇気には、何か……自分を犠牲にしてまで人の身から離れたい? 本当なのかの……確かに、あの日に儂が、お主は妖怪の血を引いているかもしれんと言ったときのあの顔は……本当に、嬉しそうなものじゃった。が、それはあくまでも根っこの部分ではないはず……)


「ふ~ん、そうかぁ……」


「む?」


 太三郎が思考を走らせて勇気のことについて考えていると、つまらなそうに照が声を上げる。見上げて見てみれば、何かが不服だという様子だ。この話の流れ的に、一つしかないだろう。太三郎は意外という様子で、照に問う。


「お主、相当に勇気に入れ込んでおったらしいの。話だけで、そんな期待してしまったのか?」


「うん、そりゃあもう。だって、初めて同じような子かなって……」


「ま、期待するだけ無駄だったということじゃの。お主の予想は外れやすいんじゃ。ドンマイ」


「そ、そこまで気にしちゃあないけど」


 照は太三郎に半ばからかわれるように言われて、不機嫌そうに顔を膨らませる。その照の横顔を見て、太三郎は小さく笑うのだった……。


 と、そこで。


 ガチャ


 扉が開く音がした。談話室の入り口からである。その音を耳に入れた太三郎と照が、そちらに目を向けて見れば……


「うぐぅ……頭が痛い」


「すまないな、二人共。遅れたよ」


 頭を抱えるタマと、それを目の端に入れて呆れた様子の天翔が入って来た。

 天翔の様子からどうやら、四人は元より談話室に集まる予定だったらしい。


 ともあれ、太三郎と照は二人のことを迎え入れる。


「久しぶり、天翔。タマはまた……お酒、控えた方がいいよ」


 照はこう言って迎えた。

 が……太三郎は、自分の座っているソファの陰から酒を何本も取り出して示す。そうして、大声を張った。


「おうタマ! 迎え酒状態ならお主に負けん! 儂は飲み比べをお主に申し込むぞ!! 天翔も、照もじゃ!」


 太三郎は、照とは真反対な感じで二人を迎え入れたのだ。酒をやめろとは言わず、酒を飲んで泥酔した後の人間にもっと酒を飲ませようとしたのである。

 そして、タマは全然、それを拒むことはなかった。寧ろ、ノリノリである。腕を組んで、太三郎に言い放つ。


「んん……太三郎。そうか、飲み比べ……飲み比べか。クク、私に勝てるとでも? だが、どーせお前、すぐにバテるだろ? それに、今日の昼のは酔おうと思って酔ったからな。大丈夫か?」


「おうさ! 今度こそ勝ってみせるわ!」


 飲み比べにノリノリである二人は、一瞬にして対面に座り、酒を目の前に置いた。そんな二人を、ノーマルな二人は呆れた目で見ているのだった。


「はぁ……迎え酒はすごい健康に悪いんだけどね」


「タマはそういうの、気にしないからなぁ。ま、健康に害があったとしても、こいつなら大丈夫だろ」


「そうだろうけど……」


「そうだな、そうであろうが……」


 照と天翔は顔を合わせ、深くため息を吐いた。そうする彼ら二人の顔には、濃い呆れそのものがあった。


「処理をする方のことも考えてほしい、よな(よね)」


 そうして肩を落とす二人に構わず、酒の大好きな太三郎とタマは、騒ぎ始めるのだった。


「よし、飲み比べ、開始!!」

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