子供達
「君はエロゲを購入しようとしたことがあったよね」
「ぐわあああああァァァァァァ――――ッッ!!」
「えっと、寝相と言うか寝てる間に髪が動いて、外を歩く人にセクハラまがいのことをしたことがあるよね」
「あれは寝相なのおおぉぉぉぉぉ――――ッッ!!」
「間違えて女風呂に入ったことがある」
「やめてくれええええぇぇぇぇぇ―――ッッ!! ッ?」
「ここに来たばかりの時、一人じゃ眠れなかった」
「うぐっ、くぅぅ……」
「興味本位でプールに入ってみたら、即ぶっ倒れて保健室に搬送された」
「な、何でそんなこと知ってるのよぉ~……うぅ」
とまあ、そういう具合である。食堂、カードゲームをやっていたテーブルで、まともに座っているのは照だけであった。ああ、誰がどの秘密かというのは、消去法とかで考えてくれたまえ。例えば、吸血鬼は水をくぐれない、とか。ゲーム関係だから鼬、とか。
まあつまるところ、一人づつ秘密を暴かれて、その場に崩れ落ちていたということだ。前回、上等だったと気合を入れていた割には、誰も照からカードゲームで勝ちをもぎ取ることが出来なかったのである。五人が一致団結しても、だ。
そんなとてつもないことをやってのけても、照は別に誇ることも奢ることもなく、ただ……
「ま、そういうことさ。逃げることも大事、ということ!」
一つの教訓として、子供達にまとめて言って見せた。だが、五人はそれを聞き入れることも出来ないくらいに意気消沈していた。テーブルに突っ伏して、しばらくは起き上がりもしないだろう。
照はそんな勇気達を、フッと優しい笑みを浮かべながら見つめるのだった。
(やっぱり、遊ぶというのはいいなぁ。本気を出しちゃったのは……まあ、大人げなかったけどね)
満足そうに、彼は背もたれに体を預けた。と、彼が遊びの終わった余韻に浸っていると……
「よう照、久しぶりだな」
「ん……天翔。いつの間に?」
彼が椅子に座っている後ろから、天翔がヌッと現れる。照の言う通り、いつの間に、とそう言ってしまうほど急に現れた。
天翔は照が不思議に思ったことに答えながら、二人で他愛のない話をする。
「結構前だ。お前達がゲームに熱中しているから、私は少し別のことをしていたのさ」
「へぇ。君も参加すればよかったのに。そうしたら、僕が君のことを赤裸々に語ってあげたよ?」
「やめろ気持ち悪い。……本当に、お前は遊びになると容赦がないな」
「いやぁ、最初は加減してたさ。お互いがお互いの秘密を暴いてキャッキャするのが見たかったから」
「悪趣味な奴」
「けど、僕が勝ち逃げしようとしたら、皆が僕のことを標的にするからさ。手加減出来なくなっちゃった」
「はぁ……なっちゃった、じゃない。今日の夕飯、どうするか……」
他愛のない話の終着点は、今日の夕飯の事であった。天翔が、その事に関して心配し始めたのだ。そんな彼の様子を見て、椅子に座ったままで照が問う。
「何? 別に困ることもないでしょ」
「いや、私と太三郎は未だに料理が出来ないからな……」
「はぁ……何で君達は、千年近くも生きてきて料理の一つも覚えないの? 仕方ないなぁ……」
料理をする人間がいないと嘆く天翔の様子を見て、致し方ない、そう言って照が立ち上がる。
「僕が人数分、九人分作るから」
「く……なんか、良いにおいがするな」
勇気は机に突っ伏していたのをやめて、顔を上げる。周りを見渡してみれば、円テーブルに仲間達が突っ伏して不貞腐れているのと、厨房から食堂の中に料理を持ってきている照の姿があった。彼の運んでくる料理は随分な量だ。人数分だろう。九人分。
そうして、料理を運んできながら照は子供達に目を向ける。そうして、呆れたようにため息を吐いた。
「あ、勇気。……他の子は、まだ不貞腐れてるみたいだね」
「照さんがそんな人だなんて知らなかったもん! もうしらない!」
照の言葉に、テーブルに突っ伏したままのララが大声を上げる。どうやら、彼女はさっきのことをとてつもなく気にしているようだった。それを聞いて、照は深くため息をつきながら脇のテーブルに料理を置く。
「ま、さっきから三十分近く突っ伏してたのはすごいと思うけどさ。おなか減ってきたでしょ? 料理、作っておいたから」
「あ、それ……俺が」
「大丈夫だよ、勇気」
照が料理を作ってきたのだと知ると、勇気は一瞬だけ不安そうな表情をする。それは、いつも自分が料理を作っていたのに、他の人に作らせてしまったという事からだろう。
だが、それを察してか照はすぐに口を開いた。そうして、大丈夫だと。
「別に一日くらい休んだって問題ないでしょ? さ、食べなよ」
「あ、ああ。ありがとう、本当に……」
「あ、他の子も好きな時に食べ……」
「施しは受けない!」
照の優しい言葉に対して、ララと同じように突っ伏したままの涼が声を上げた。随分と攻撃的な言葉である。それを受けた照は……
「……分かったよ。じゃね。……うん、いいよ別に……」
ちょっとしゅんとした様子で、とぼとぼと食堂を抜け出していくのだった。勇気以外の子供達は、未だ俯いたままであった……。
照を見送った勇気は、未だ不貞腐れたままの仲間達を尻目に照の作ってくれた料理に向かう。そんなに強がっていても仕方がないと思ったのだろう。
そうして勇気はスプーンを手に持ち、照の作ってくれたスープをすくい、口に運ぶ。
「……うめえ」
勇気は一人、呟いて満足そうな表情をするのだった。




