勝ち逃げは許さない
ガチャン
勇気、涼、鼬、マーレ、ララ、太三郎、照。その七人は妖館、その中の食堂にて一つのテーブルを囲み、カードゲームをしていた。トランプと、ウノである。そうして、その中には罰ゲームというのがあった。それは、各種ゲームに置いて敗者の秘密を、特定の人物が暴いて辱める、というものであった。
それでそんな遊びをしている中、外から来訪者が来たことが分かった。さっきのガチャンという音は、妖館の玄関の扉が開く音である。そして、それを一同が耳に留めた次の瞬間、
バタン
次は、エントランスから食堂への扉が開かれた。結構乱暴に。そうして、中に入ってきた人物は……
「んあぁ~……頭が痛い……。んにゃ、太三郎?」
金髪の女性であった。彼女は扉を開いたところで、その場でくらくらしながら食堂の中身を見渡す。顔が赤い。それに、その足や体の様子から、結構な量の酒を飲んできたということが分かる。
そんな彼女を見て、名前を呼ばれた太三郎が腰を上げ、彼女の方へ歩み寄った。
「タ、タマ? お主、また酒を昼から……」
どうやら、太三郎の知り合いの、タマという人物であるらしかった。彼女は太三郎が近寄ってくると、その腕の中に倒れこむ。
「うごぉ~……ねむ……すぅ~」
「おわっと……。照お主! こ奴を一人にしたらこうなるのは分かっておったじゃろうが!」
太三郎はタマが自分の腕の中で眠ったのを見止めると、その後で照に目を向け怒号を放った。タマが昼間から酒を飲むと知っていてどうして一人にしたのか、と。その言葉に、照はそっけなく答える。
「まあまあ、いいじゃない。別にそんな怒って言うことじゃあないでしょ? ほら、眠らせてきなよ」
「お、お主……まあ、まあそのつもりではあるが……すまぬのお主ら。儂は抜けるぞ」
照の言葉に、多少の憤りを感じたものの、まあいいかと太三郎はタマのことを背負う。そうして、後ろに振り返り、子供達に目を向けて言った。自分はカードゲームの集まりから一人抜ける、と。それに対して、勇気達は各々、いってらっしゃいだとか、うん、だとか言って応えたのだった。
そうして、太三郎はタマを連れ、食堂から消えた。そのタイミングを見計らって、勇気は囁き声で隣の鼬に問いかける。
(あれが、タマさんか?)
(ん、ああ。そうだぜ)
(へぇ。話には聞いちゃいたが……それにしても……)
勇気は呆れた目をして、タマと太三郎が出て行った方の扉を見ながら言った。
(なんか、ちょっとイメージと違う感じだったな。こう、もっと厳格な人って聞いてたんだが……)
そう言った。まあ、それは仕方のないことである。あんな、昼間っから酒を飲んで、多大ではないとはいえ周りに迷惑をかけてしまうような所を見ては。
だが、それはあくまで彼女の一欠片だ。鼬はそのことを思い返して、勇気の言葉を否定する。
(いやいや、違う。あれはあの人の少ない駄目なとこの一つであって、本当はカッケェ人なんだぜ?)
(……そうなのか?)
(ああ、そうさ。これから会うことも多いだろうし、すぐに分かるさ)
鼬はそう言って、勇気にタマのことを誇らしげに語った後でテーブルの真ん中の方に向き直ったのだった。
と、二人の囁き声での会話とは関係なく、ゲームは続く……
「ん~。タマも来たし、この程度で終わりにしておこっか?」
かと思われたが、急に照がゲームはこれまでにしようという提案を皆にかけた。まあ、確かに彼の言う通りである。それに、結構いい時間だった。時計を見てみれば、短針は四時の辺りを差している。勇気にとっては、そろそろ夕食を準備しなくてはならない時間だ。
が、それを容認しない者がいた。
「いいえ、駄目。まだ続けよ」
涼である。彼女は断固とした姿勢で腕を組み、そう言ったのだ。彼女がそう言ったのを聞くと、照は不思議そうに彼女に向かった。
「ん、でもいいんじゃない? だって今、四時くらいだしさ。そろそろご飯を……」
だが、照がそこまで言った時だ。
「だめ、照さん。涼も分かったらしいけど、私も見過ごさないから」
次に照の提案への反対を言葉にしたのは、マーレである。彼女も、気に入らないという目を照に向け、再び口を開く。
「だって照さんだけ、勝ち逃げじゃない?」
「あっ……」
「そういえば……」
「そうだったね」
マーレが言った言葉を聞いて、勇気、鼬、ララが思い出したようにさっきまでのゲームの結果を思い出す。思い返してみれば、秘密を暴かれて火傷を負ったのは照以外である。きっと彼は、その状況を知っていて、早めに退散しようとしたのだろう。
その点を指摘された照は、ふっふっふと、含み笑いを始める。
「バレたか……んま、いいよ、ゲームを続けよう。ふ……でもさ。僕は天才だよ? 勇気はともかく、分かってるでしょ?」
だが、照は自分が勝ち逃げしようとしたことを指摘されても、全然、怯える様子はなかった。逃げようとしていた者の態度とは思えない、自信満々というような姿勢である。そのままで、彼は言う。
「大丈夫かな? もっと、恥をかくことになるよ?」
ニヤリと、笑って照は言った。
そのいやらしい笑みに相対して、子供達は顔を合わせる。そうして、互いの意志を確認し合うのだ。
そうして、結果、皆の意見は一致した。
「上等!! こっちが暴いてやる!!!」
全員で、挑戦的な表情をして照に向かったのであった。




