表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/222

変わるための物語

「離さない。俺の希望は、傷付けさせない……!」


 勇気は路地の上で、スーツの男の持つ刀を受け止めていた。体の複数の箇所で受け、勢いを弱めるようにして。だが、そうは言っても刀は刀。切れないわけもなく、勇気の右肩や左手からはダラダラと血が流れ出ている。

 しかし、勇気の目には迷いや躊躇ちゅうちょ、そんなものは見えない。それが、彼の手にも表れている。


「ぐぅ……この、人間! 離さないか!」


 勇気はその左手で、刀の刃を握りしめていたのだ。決して動かさぬように、決して、再び涼へとその刃が向けられることがないように。その目的のためだけに、勇気は自分の身でさえかえりみず、刀を受けた。

 勇気は刀を握りしめ、複数の箇所から血を流しながら口を開く。苦悶の表情を浮かべながら、だ。


「離す、か。テメエ、俺を……いいや、俺はいい。後ろの、涼を傷付けようとしただろうが」


 そう言う彼の顔には、苦痛が歪む。当然だが、彼の体は相当な痛みを伴っている。だが、それを受けても彼は全然、刀を握る男がそれを動かしても、不動。その意思を貫く覚悟を持っていた。


 そんな勇気の覚悟を見た男、彼は……


「チッ、構わない。このまま……」


 刀を握る手を持ち直し、刺突の構えに。そして、勇気に掴まれているのを無視し、そこから彼の体へ一直線に刀の切っ先を進ませようとする。が、


退きなさいっ!!」


「……ぐっ」


 それを涼に切り払われる。彼女は勇気の行動についていけず、先ほどまでは口をあんぐりと開けるのみであったが、勇気に危険が迫っていると知って冷静さを取り戻したのだ。


 小刀を持ち直し、男の持つ刀を切り払って上にあげて勇気の体から離す。

 そして、屈みながら続けざまにもう一撃。今度は動揺から隙を作った男の刀、脆いそれを叩き割るよう、横から加えた。


 涼の小刀が男の刀の腹に触れ、嫌な金属音が通りに響く。その後に、男の持つ刀の切っ先と持ち手とが別々になったのが、勇気と涼の目に留まる。


 涼の思惑はどうやら成功したらしい。男は最早、武器を持っていない。戦うすべをなくしたのだ。


 それを攻撃を受けた後のすぐに理解した男は、顔をしかめて後ろに退く。


「クソ……畜生めが。刀を折られては……」


 男は刀の持ち手を投げて、そう吐き捨てる。そうしながら、勇気と涼へ背を向けた。最後に見せた表情は、悔しくて悔しくてたまらないという憎悪と、底のない不機嫌が渦巻くようなものだった。


「……どうせ、俺が逃げても追ってこないのだろう。善人気取り」


 表情が変わらないままかは、背を向けられている二人には分からない。だが、背だけで分かるほどの敵意は伝わってくる。

 彼の言葉に対し、涼は小刀をしまいながら応え、勇気は事情が分からないために痛みに耐えながらただ聞くにてっする。


「そうね、追わないわ。追う意味がないもの」


「……俺を殺して、自分達の危険を取り除こうという気はないのか」


「そうしてあげましょうか?」


「その気はないんだろ? 俺は帰る。また、お前達を殺しに来る。チャンスが来たら、な。一人も残さない」


「あっそ」


「じゃあ、また会おう。次は最後にしてみせる。ではな」


 二人は奇妙な会話を終える。そうして男は路地を歩いて行った。彼は次第に遠くなり、勇気と涼からはその背さえ見ることはできなくなる。


 おかしな状況だ。勇気はまだ、自分のいる状況を全然、把握できていなかった。路地を歩いていたら、自分達を殺そうとしてくる人間に会い、そいつを退しりぞけると彼は素直に一瞬で帰ろうとした……と。文字に上げてみたらそれだけだが、実質としてはそれだけではない。

 男の目的、涼や勇気に攻撃してきた理由。辺りに人の気配が全く存在していない理由。涼がわざわざ、危険を取り除かない理由。男は何故、ここまでさりげなく退いて行ったのか。そして、あの映像。


 だが、勇気はそれらを無視した。というより、その余裕がなかった。


「いて……ぇ」


 彼の視界は、すでに何重にも重なってボヤけていた。出血によるものだ。足はふらつき、おぼつかない泥の中に柱を立てているようなもの。彼の意識は薄れ、体は崩れ落ちる。


「……くぅ」


「あ……勇気! 大丈夫……?」


 男に対する警戒心故に、会話をしている最中は目に入っていなかったのだろうが、声を聞いて涼は勇気が危険な状態にあることを思い出す。すぐに彼の倒れるのを肩で受け止め、声をかける。


「大丈夫? しっかりして……どうしてあんなことしたの!?」


 それでも、彼女は疑問を隠しきれなかった。勇気のことを心配しながらも、彼が男に対してとった行動、刀を素手で受け止めるなどという行動への疑念。


「あんな、やっぱり狂ってるとしか思えないわよ! 確かに助かったけど、他人のために、あんなのに斬られに行くなんて……」


「他人じゃない。お前が……希望だから」


「え?」


 勇気は薄れゆく意識の中、自分に背を貸し、汗を浮かべて歩く涼に語る。


「俺は……死のうとしてたんだ。よく考えてもみろよ。お前が、死なない理由なんだ。お前のためになら、俺は何だって捨てるってことだ」


「気持ち悪いこと言わないでよ……。アンタってのは、本当に訳の分からないキチガイね。……まあいいわ。アンタを治療してひと段落ついたら、ゆっくりとアンタのことを聞かせてもらうわよ」


「ああ、分かったよ。あとこっちも、聞きたいことが山ほどある。お前のことも、妖怪のことも、さっきの男のことも」


 涼は勇気のことを背負いながら、勇気は彼女に体を預けながら、話し合う。これからのことを。


「まあ、答えられる範囲で答えてあげるわ」


「そうか、ありがたい……。まあ、今はつらいから聞かないが」


「そうね……。そういえば、アンタに全然話してなかったわ。今から向かう所の話」


「ん」


 急に、涼が話題をすりかえて自分がこれから勇気を連れようとしている場所、そのことを話そうとした。そういえば、一度も話していない。いざ言われてみると気になってしまった勇気は、肩を背負わせながら問いかける。


「そういえば、聞いてなかったな。というか、どうして話してくれなかったんだ」


「自殺する奴に、話す必要なんかないと思ってたの。少なくとも前までは、毎回そうしてた。けど、アンタはどこか、違うみたいだから」


「なるほどね……。それで、今から向かう所は……どんなところなんだ。怪我してるからって、病院は行きたくない。ともかく、痛いから手当てを受けたいし、休みたい」


「今から向かう所は、妖怪の住む館よ。ほら、すぐそこに」


「え?」


 涼の言葉に、不意を突かれた勇気は頓狂とんきょうな声を上げて彼女の指が示した方向へと素直に首を向けた。すると、そちらには……






 神崎勇気は人が嫌いだ。憎んでいる。

 だからこそ、彼は妖怪という存在へ希望を持った。それ以前に、涼が善意を持って彼を救おうとしたのもあるが……もし彼女が人間であれば、違ったかもしれない。

 だがそれだけではない。神崎勇気の問題は、人間が嫌いなだけではない。ともかく、この物語がどう言うものかは軽く話しておこう。


 これは、神崎勇気が変わるための……皆が変わるための物語。

プロローグ終了。


まあ、まあまあ、まあまあまあくらいの出来でしょうか。よくわからない。感想も何のレスポンスもないから自分がどんな物語書いてるのかさえ分からないんですよねぇ。うまく言いたいことは伝わってるのかなぁ、表現は足りてるかなぁ……不安だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ