表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/222

悟りの性質

「じゃあな勇気、それにララ。帰ったら、暇潰しになんかやろうぜ」


「あーねむい。枕持ってこうかしら」


「ララ、勇気を見張っておいてね? 何かしたら、髪で首を絞めてもいいから。それじゃ」


 勇気とララは、制服を着こんでスクールバッグを持った涼、鼬、マーレの三人を見送った。彼ら三人は、学校へと向かうのだ。ただ今の時間は八時を回るか回らないかというくらい。中学生なのだから、このくらいに家を出る。

 鼬は元気に、マーレは眠いといって目をシパシパとさせて傘を差しながら、涼は未だに黒い目で勇気を睨んでいた。そんな凸凹とした様子で、三人は外の陽光へ身を晒した。


 そんな三人を見送っていた勇気とララは、彼らがいなくなるとふうと同時に息を吐く。


「はぁ……」


「どうするかなぁ」


 そう、二人は今からすることに困っていた。当然、中学生の年なのだから学校に行かなくてはならないが、二人はそういう普通には当てはまらない。学校へ行っている時は休みの日が尊いものだが、二人にとってはそれが苦痛だ。休日であれば、三人も妖館にいるからいいが、今は二人……と、


「そうだ!」


「ふぇっ?」


 突如、勇気は声を上げる。何かを思いついた表情だ。そんな突然の大音量に、ララは飛び上がって驚く。が、そんなことは関係ないと言うように勇気は彼女にがっつく。


「ゲームだ。ゲームをしよう」


 勇気が言ったのは、ビデオゲームの方である。この間、彼が鼬に誘われてやったら異常なほどにまでハマり、数日でクリアしてしまったあっちの方。そのことを思い出したのだ。

 だがまあ、当然ララは疑問を顔に浮かべる。急にゲームと言われても、という様子だ。


「え……ゲーム?」


「そうさ。二人だけでも長く暇を潰せるし、何より楽しいぞ。昼飯とかは俺が作るし……」


 ララの怪訝な表情に、勇気は熱心に説明を加える。どうやら、布教をしたくなるほどにゲームが好きになってしまったらしい。

 だが、彼の熱弁は途切れる。


「残念じゃが、ゲームをする時間はないんじゃよ」


 太三郎の声だ。思わず、勇気とララはその声のした方向へと目を向けた。するとやはり彼が、階段を下りてきながら二人に向かってきていたのだった。手には煙管を持って、口に咥えている。


「娯楽にいそしむのもある種、勇気、お主の役目かもしれぬが……。ララが来た。お主ら二人に、やってもらわねばならぬことがある」


「……俺達に」


「やってもらうこと?」


 二人は太三郎の言葉に、同時に首を傾げる。勇気の方は掃除等、やることはいっぱいあるが……ともかくそれよりも、勇気はある疑問を頭に浮かべて口にした。


「ってかそれよりもさ、太三郎さん。まだ八時だぜ? 何で起きてんだ?」


「んあ? 一般的に、このくらいに起きるのが普通じゃろうが」


「いやアンタ、いつも十二時以降に起きるじゃないか」


「…………だらしない、不摂生ふせっせい


 ララはボソッと、太三郎の生活ルーティンを聞いて呟く。それをしっかりと耳に捉えた太三郎は眉をひそめ、オホンと咳払いをしてから言う。


「別にいいじゃろが。その分、夜起きておる」


「いやもっと駄目だろ」


「いいんじゃよんなことは! ……っと、そうじゃなくての、今回、こんな時間に起きたのはお主らのためじゃ。さっきお主らにしてもらうことがあると言ったが、それと同じことじゃ」


 太三郎は、これが本題、そう言わんばかりに先ほどまでと目の色を変えて、勇気とララに向かった。そうして煙管を口から離し、二人と同じ目線に立って告げるのだった。


「お主らの目と、耳のこと。つまり、悟りの性質のことじゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ