顔合わせ2
「よし、では行くぞ」
「う、うん……」
太三郎は緊張した面持ちのララを連れ、食堂前に来ていた。そう、ララは未だに緊張を消せなかったのだ。前に安心したと言いはしたが、流石にもしかしたらとか、あるいはとか、そういう可能性が眼前に迫った時は怖がるのを抑えられるわけではない。
そんな風なララを見て、太三郎は彼女の肩を叩く。
「だーいじょうぶじゃよ。安心せい」
「は、はは、はい……」
「むぅ……ま、もう進んでしまうのが良いかの」
太三郎は未だに緊張を解くことの出来ていないララを見て、これはもう先に進み、様子を見るしかないと判断する。そうして、彼は食堂への扉を開いた。
「しかし、勇気は今何してるんだ?」
「ああ、そうね鼬。んで、そこのところどうなの、涼? ってか、アンタどんな話をしてたのよ?」
「別に何も? あと、今あいつは安らかに眠ってるわ」
食堂では、大きめの丸テーブルに円になるよう、涼、鼬、マーレ、そして天翔が座っていた。そんな中で、鼬とマーレが涼に問いを投げたのだ。ここにいない勇気は何をしているのか、と。涼はそれに対して、そっけなく、目線を背けながら答えた。鼬達はそれを受けて、ああ何かあったんだろうな、と目を伏せてため息をつくのだった。
それを脇から見ていた天翔は、子供達の間にそれとなく入る。
「最近、あいつはどうだ? うまくやっていけてるか?」
「…………ん?」
そう問うたのだ。真面目な問いである。涼達が首を傾げるのを見て、続けて彼は口を開いた。
「少し不安でな、あまりここに残れてやれていないから。お前達もそうだが、ずっと見ていられるというわけじゃない。……健康的か? 精神的に」
天翔は、自分が妖館に残ってやれていないから、確認できていない勇気の様子を伝えてほしいと言った。孤児院のようなことをしている院長的立場の人間からしてみれば、当然の心配だ。自分が世話をしている子供が、ちゃんと歩けているか。
そんな天翔の問いに、まず鼬が答える。ニカッという笑顔を添えて。
「ああ、全く大丈夫だ! 健康すぎるってくらいだぜ、勇気は」
続けてマーレ。
「天翔さんが心配するまでもないわね。あいつ、多分全然大丈夫よ」
そうして最後、涼。彼女は不機嫌そうにしながら答えた。恐らく、さっき勇気にされたことを思い出したのだろう。
「まあ、そうね。この間、自分の身を投げ捨てようとしてた奴とは思えないくらいに。あと本当、健康すぎるわ。青少年として」
そう言って、フンとそっぽを向いた。どう見ても、何かを気にしているという具合である。そんな彼女を見て、鼬とマーレはまた何かあったんだろうな、と顔を見合わせるのだった。
そうして三人の答えを聞いた天翔は、安心したように背もたれに体重を預ける。
「そうか、安心したよ……ありがとうな」
そう伝えて、腕を組んだ。そんな彼の様子を三人は一瞥した後、ひょこんと首を傾げるのであった。
その後、三人はまた談笑を始める。太三郎とララが来るまでの時間潰しだが……天翔は一人、腕を組みながら思考していた。子供達のことについて、である。
(勇気は……とりあえず、放っておいていいか。差し当たって解決すべきというほどではない。それよりもやはり、涼と鼬……)
天翔はチラと目を空けて二人のことを目に入れる。涼と鼬、それにマーレは、何にも問題ないという風に笑顔で話し合っていた。
だが、その笑顔の奥にあるものは輝いてはいない。表面は幸せそうに見えても、未だ三人は芯から幸福になれてはいないのだ。
(二人のはどうしても、いつか向き合わなければならない問題。……これまでずっと、解決できていない。そろそろ、いや……)
そうやって、天翔が考えている時だった。
ガチャ
天翔、そして涼達三人が談笑している食堂の入り口の扉が開いた音がした。食堂の中の四人は、話を中断して音のした方へと顔と目を向ける。そちらに目を向けて見れば……
「すまぬ、遅れたの。さ、こ奴がララじゃ。一応、自己紹介を頼む」
太三郎が、四人の前に立って顔を赤くしているララを、前に出すのがあった。




