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嫌な予感

「また、良いことをしてしまったわね」


「そうね、涼」


「いいことしようって言い始めたのは、俺だけどなぁ~」


 鼬、涼、マーレは夕日が落ちてくるころ合いで、閑静な住宅街を歩いていた。マーレは傘を差して歩いている。吸血鬼だからだ。

 まあそんなことはともかく、三人は帰路についていたのだ。学校は終わり、既に琴音とは別れていた。そんな中で、思い出すようにして鼬は言う。


「そういえばさぁ、涼、マーレ。今日、二号の方から誰か、こっちに来るって話だったよな」


 一番後ろを歩いていた鼬の言葉に、二人は振り返って応える。


「ん、そうね。確か、名前はララ」


「髪長と、悟りだっけ? 随分と珍しい組み合わせのハーフよね。しかし……」


 マーレは辺りが暗くなってきたのを見計らって、傘を閉じながら歩く。そうして、フッと呟いた。


「随分と、勇気は悟りの性質に似ているわよね」


 マーレの一言に、涼と鼬の足が止まる。それを見止めてか、マーレも傘の留め具を閉じ切ってから二人を見た。涼、鼬、彼ら二人は同じように、不安そうな表情を浮かべているのだった。まるで、自分の事のように。


「……勇気も、他もよ。本当に辛いだろうな。心が分かっちまうなんてよ……」


「そうね。……でも、きっと太三郎さんが何とかしてくれるはずよ。だって、そのためでしょ?」


 涼は鼬とマーレに向き直ってそう言い、確認する。悟りの妖怪がこちらに来るのは、ある目的のためだと。それに対して、マーレが小さく頷いて応えた。


「それ以外ないでしょ。太三郎さんが、面倒見るわよきっと。さ……」


 マーレが前に手をやって、目の前を示す。三人の眼前には、妖館があった。もう既に辿り着いていたのだ。涼と鼬は話に集中しすぎていて、一瞬気付かなかった。それだけ、勇気や自分達が知らない妖怪のことを心配していたのだ。


「入りましょ? とりあえず、新顔と顔を合わせてみましょうよ」


「……そうね」


「ああ」


 マーレが妖館の扉を開いて示すのに対し、二人は頷いて応え、妖館の中に入って行くのだった。








「よく帰ったの、お主ら」


 妖館に帰ってきた涼、鼬、マーレのことをエントランスで迎えたのは温かい明りと、太三郎だった。彼は勇気のことを迎え入れた時もそうしていたように、階段前に座っていた。

 そして彼がお帰り合図を口にすると、三人は同じようにただいまと言ってみせた。それを見止めてから、太三郎は口を開く。そんな彼の手には、煙管が握られていた。


「帰ってすぐで悪いんじゃがの、昨日に話したことは覚えておるか?」


「昨日に……ああ、さっきまで、そのことについて話してたわよ」


 太三郎が煙を口から吐きながら問うのに、マーレが答える。つまり、ララのことだ。悟りと髪長のハーフの少女が移住してくること。太三郎は三人がうんと頷くと、それでは話が早いとまた話す。


「そう、お主らと同い年の、ララじゃ。今、勇気と話しておるよ。それで、お主らに頼みがあるんじゃよ」


 太三郎は煙管を口から話し、そう口にする。その口元には、一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが、ニヤリといういやらしい笑みが灯った。それは、悪戯の好きな少年が一つ大きなことをしでかしてやった、その結果を大人達が見るその反応を待っているかのような、そんなものだった。

 だが、三人はそれに気付かない。


「そうか。俺達も、そのつもりでいたんだぜ。太三郎さん」


「うん。多分、色々と不安だろうから。勇気も一緒なら、心配ないかもしれないけど」


「勇気をそいつから離して、ご飯を作らせないといけないしね」


 一人だけ、涼だけ、言っていることが変だった。何故に今、飯の心配を? だが、ゆっくり考えていても仕方ない。それに対して他三人は湿った目を向けた後で、空気感を取り戻して話を次に進める。

 太三郎は右手の階段を示し、言った。


「あっちの、奥から二つ目の部屋じゃよ。では、儂は自室で待っておる」


 そう言って、彼はふらりふらりと左手の階段の方へと向かっていった。それに対して軽く手を振った三人は、太三郎の示した右手の階段へと顔を向け、談笑しながら勇気とララがいる部屋の方へと足を向けるのだった。


「どんな奴だろうな~」


「髪長は漏れなく美人らしいわよ。惚れないでねキモいから」


「惚れねえよマーレッ!!」


「ふふっ……そうねぇ鼬。アンタは、他の女には惚れないわよねぇ」


「ど、どういうことだよ涼! ……おい二人共。何でそんなに前を歩いてるんだ。おーいっ!!」









 一方、涼と鼬、マーレの三人が向かっている所。そこでは、ララの胸に勇気が顔をうずめていた。一時間とララは言ったが、そうしている内に二人は眠ってしまっていたのだった。

 そんな中で、三人は二人の部屋へと向かっていた……。

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