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伝言

 勇気は一人で夕焼けの道を歩いていた。龍也、そして鉄矢の二人と別れた後のことである。彼は何を考えるでもなく、歩いていた。


 彼のいく先と、歩いてきた道を黄昏が染める。少し暗いそれは、勇気の人生を表しているようだった。未だ日が最高点で照りつけるわけではない。少し暗さのある、そういう……


「……ん?」


 そんな道を歩いている中、勇気は一つの人影を目に止める。妖館が目に入ってくる通りに差し掛かるくらいの時だ。妖館のすぐ前の通りに、人が立っているのだ。


 そして、その人影は妖館を見上げるようにして立っていたのだ。側から見れば、妖館に用があるように見える。長い黒髪の女性のようで、勇気には見覚えがない人物だ。


 それを見た勇気は思わず、その人物がどのような意図で妖館に訪れたのかを思考する。


(あの人……妖館にどんな用なんだ?)


 と、彼が思案していると……


「少年。お前、妖館の住人か?」


 勇気の目に止めた女性が声を上げた。どうやら、勇気に声をかけているようである。


 勇気は自分が何かまずいことをしてしまったと思い、ドキッとする。他人のことを訝しげに眺めていて、その他人が急に自分へ話しかけてきたらビビるだろう。


 だが、女性は妖館と口にした。それを耳にした勇気は彼女が妖館の関係者だろうと冷静になり、その女性へ向かった。


「は、はい。そう、ですが」


「ふむ、そうか……」


(……あれ、この人……)


 勇気は自分の方へ悩ましげな表情を見せる女性の顔を見て、首を傾げる。それは、あることを疑問に思ったからである。いや、というより……記憶にあるものと、女性の顔がかみ合った様な気がしたからだ。


 女性が悩んでいるのをいいことに、勇気はまじまじと彼女の顔を見つめた。そうして、記憶の中の何に引っかかったのかを探るのである。

 答えはすぐに出た。


(この人、涼に似ている)


 目の前の女性は涼に似ていた。そのモノと言っていいほどの具合だ。涼のことをそのまま大きくしたら、勇気の目の前の女性となるだろうというレベル。


 ただ、勇気はそれ以上踏み込んだ思考は出来なかった。


「太三郎さんと、天翔さんに伝えてほしいことがある」


「え、ああ……知り合い、ですか。はい、いいですよ」


 女性が口を開き、頼みごとをしてきたからである。勇気の思考はそこで途切れ、彼女の言葉に応対しようとした。すると、女性は悩ましいという表情をしながら勇気へ話す。


「お二人にこう伝えてほしいのだ。フツヌシのことについて、どうするのかという会議を開きたいと」


「え、ああ……はい。とりあえず……フツヌシに対しての会議がしたい、と?」


「ああ、そうだ。出来ればすぐ、直接その足でいつもの場所に来てほしいと」


 女性は勇気に伝言の内容を伝えた。フツヌシのことについて話し合いたいから、すぐにいつもの場所とやらに来てほしいと。勇気はそれを、その場で復唱して彼女に確認を取った。彼女はそれに対し、頷きで返す。


 ……そこまで来て、勇気は疑問に思った。そうして、それをすぐに口にする。


「……あの、ここまで来ているのなら中に入っていけばいいんじゃないですか?」


 そうだ。伝言というが、女性は妖館の目の前にまで来ているのだ。直接話せばいいだろう。


 だが、女性はその勇気の疑問を受けるとすぐに答えを返した。


「いやぁ、すまないがあまり顔を合わせたくないんだよ、お二人とは。……子供達には見せていないかもしれないが、あの方達は結構からかい性なのでね。会うと大体、何かしらでちょっかいを出される」


 呆れたと、顔で言っているかのような表情を取って女性はそう言った。それを聞くと、勇気は納得の声を上げる。


「ああ、そうですか……。確かに、そういう所が少しづつ見られますよ」


「そうか? ……実は、今も外に出てこないか不安でならないのだ。嫌ってるわけではない、のだがな」


「そんなに、ですか……。はい、わかりましたよ。伝言ですね。フツヌシのことについて、すぐに話し合いたいと……」


 女性が、少し早く帰りたいと言外に言ってきたのに対し勇気は最後の確認という風にして別れを言いやすい状況を整える。

 それを女性は素直に受け取った。


「ああ、そうだ。すまないな、頼む。では……」


「ええ、また機会があれば」


 別れを言うと、女性はサッと黒い髪を揺らしながら勇気のいる方とは真反対の方へと歩いて行く。勇気はそれを、静かに見送るのだった……。












 勇気の視線を背に受けながら、女性は顔をしかめ、苛立たし気に呟くのだった。


「まったく腹立たしい……」

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