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鈴木誠二の今後 2

「あ奴のこと、自殺したと……鼬達に知らせるかの」


「……いや、いいだろう。あいつらも少しだけ、それを話してしまうと付き合いづらくなる」


 太三郎と天翔が館長室でしゃべっている。話題は先ほどまで一緒にいた少年、鈴木誠二のことである。彼のこと、彼の過去を鼬達に伝えるかどうかという所から会話は始まっていた。


「ふむ……それで、重要なのは記憶そのものをどうするかの話じゃが」


 話を続けていて、太三郎は誠二の記憶そのものについてどうするかと口にした。つまり、触れるべきか触れないべきか。


 誠二は自殺したのだ。それは重要な事だ。その記憶を戻すか戻さないか……戻せば、もう一度気を起こす可能性がある。戻さなければ、少し気弱な少年のまま生きることが出来る。……学者が話し合いそうな議題でもある。


 ただ、天翔はすぐに答えを出した。


「選択は与えてやるべきだろう。あとは、あいつがどうするかだ。……照なら何とかできるだろ」


「そうじゃな。あ奴は万能じゃからの。脳のことに関しても、何とかなるかもしれん」


「頼り過ぎるのもよくはないが、あいつを呼ぼう。直接的に記憶を戻すことは出来ないだろうが、きっかけをどう作るかくらいは分かりそうだ」


 天翔と太三郎は、誠二に記憶を取り戻すか取り戻さないかのことで話し合い、結局、選択は彼に委ねることとした。それにあたって、照を呼ぶとのことだった。どうやら彼は医学に明るいらしい。記憶喪失が戻せる、あるいは糸口をつかむと太三郎達が確信を持つほどだ。


 脳のことについて、現代の医学はよく解明が出来ていない。記憶喪失など、治す方法はほとんどないとされる。ただ、照はそれが出来ると他人に信じられるほどの優秀さという事だった。


 ともかく二人は結論を出した。すると、太三郎が懐に手を突っ込み、スマホを取り出すのだった。











「誠二……って、呼んでいいよね」


「う、うん。とりあえず。君はララちゃん、でいい?」


「うん、いいよ」


 太三郎と天翔が去った後の部屋には、ララと誠二が残されていた。二人共、少し気まずそうな表情をしている。初対面……ほとんどそれだ。それに、色々ある。触れづらい問題が。


 ただ、ララはそれをあまり感じさせないように振舞った。


「そうだね。じゃあ、ここが君の部屋ってことになるのかな」


「う、うん? そう、なのかな」


「そう。ああそうだ。君……服って持ってる? いや、聞くまでもないか。全然、予兆とかなかったんだし準備できるわけもないもんね」


「そうだね。……今着ている服しかないよ」


 フレンドリーに接しながら、ララはきっかけを作る。それは服。服がないという事に突っ込み、次の話題へのきっかけとしたのだ。


「ん……そうだね。だったら、服を借りるって話をしがてら、さっきも天翔さんが言ってたけど、下の皆に会いに行こうよ」


「え……でも、怖い。記憶喪失だなんて、おかしいと思われるよ」


「だーいじょうぶ。全員私の友達だけど、皆優しいから」


「……そう?」


 ララの言葉を受けると、誠二は不安そうにしながらも他人に会う覚悟を決める。

 彼にとっては、記憶喪失をしてから会う他人はほとんど初めて。太三郎と天翔は起きた時、既に彼のそばにいたから無自覚であったが今回はそうではない。自分が記憶喪失であると自覚しながら、その不安に打ち勝たなくてはならない。


 ただ、それを覆い温めるように、ララがベッドに座る誠二の手を掴む。


「大丈夫だよ。女子に二人キレやすいのがいるけど、もし何かあったら私が守るから」


 そうして、安心させる言葉を口にした。


 誠二にとって、ララは唯一の心のよりどころ。自分が救われ、自分が救った相手だと記憶が残っている相手なのだ。

 彼はララの手を握り返してしばらくじっとする。そうしてしばらく黙った後で、


「分かった。行くよ」


 決心した表情で言うのだった。

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